シロップ薬に有害物質混入か

インドネシア保健省は10月19日、解熱や咳止めやビタミン剤などとして使用されている、全てのシロップ薬の処方と販売を一時的に禁止した。

保健省の発表によると、今年8月下旬から子供の急性腎臓疾患数が急増している。通常なら月1、2件のところ、月約70件にも上る。10月18日までに全国20州から206件の報告があり、そのうち約半数に当たる99人が死亡。患者の多くは5歳未満の幼児だった。

服用していた薬を調べたところ、急性腎臓疾患を引き起こした恐れのある有害物質が見つかった。さらに調査を進めており、調査が完了するまで、シロップ薬の服用はしないように求めている。子供の尿の量や回数が減ったり、熱、下痢、鼻水、嘔吐といった症状のある場合は、医療機関を受診するよう呼びかけている。薬の製品名などは明らかにしていない。(追記:10月20日、5製品の回収を指示)

ブディ・サディキン保健相の20日の発表によると、見つかった有害物質は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールブチルエーテルの3種類。

エチレングリコールとジエチレングリコールは甘味料として加えられることがあり、過去にもアメリカやパナマで死亡事件が起きている。

今年7月にはアフリカのガンビアで、やはり急性腎臓疾患で子供66人が死亡した。世界保健機関(WHO)は、インドの製薬会社「メイデン・ファーマシューティカルズ」(Maiden Pharmaceuticals Limited)のシロップ薬4製品からエチレングリコールとジエチレングリコールが検出されたとして、これら4製品を使用しないよう警告を出した。

4製品は下記の通り。
・Promethazine Oral Solution
・Kofexmalin Baby Cough Syrup
・Makoff Baby Cough Syrup
・Magrip N Cold Syrup

インドネシア保健省によると、これら4製品を含めて、メイデン・ファーマシューティカルズ社の製品は、同省の医薬食品監督庁(BPOM)に認可されておらず、インドネシア国内での正規の販売、流通はないという。

追記(2022年10月20日)

BPOMは安全基準値を超えるエチレングリコールが混入しているとして、下記5製品の回収を命じた。

1. Termorex Sirup(解熱剤) 製造会社:PT Konimex 60ml入り 画像 2. Flurin DMP Sirup (咳止め、風邪) 製造会社:PT Yarindo Farmatama 60ml入り 画像 3. Unibebi Cough Sirup (咳止め、風邪) 製造会社:Universal Pharmaceutical Industries 60ml 入り 画像 4. Unibebi Demam Sirup (解熱剤) 製造会社:Universal Pharmaceutical Industries 60ml入り 画像 5. Unibebi Demam Drops (解熱剤) 製造会社:Universal Pharmaceutical Industries 15ml入り 画像

追記(2022年10月25日)

子供の急性腎臓疾患、「熱、下痢、吐き気」に注意

ジャカルタのカロルス病院のリア・ヨアニタ小児科専門医師に聞いた。

リア・ヨアニタ医師(カロルス病院のウェブサイトより)

*エチレングリコールとは何でしょうか?*

無色、無臭、室温では濃いシロップのような液体です。ボールペンのインク、塗料、化粧品、化学繊維などに使われます。味は甘く、誤って摂取してしまった場合には、呼吸と排泄により体外へと出されます。摂取により心臓や腎臓に影響を与え、死に至る場合もあります。

*錠剤には使われていないのでしょうか?*

液体ですので、錠剤には使われていません。

*急性腎臓疾患の症状とは、どのようなものでしょうか? どう対処すればいいでしょうか?*

最初は、熱、下痢、吐き気などから始まります。その後、呼吸器系と消化器系に影響が出ます。体内の循環が悪くなって、体がむくみ、意識レベルが低下したり、呼吸困難に陥ります。

子供は、朝から夕方までの活動時間の4〜8時間、ずっと排尿をしない、といった症状が出ていないかに注意してください。そうなった場合、12時間以内に最寄りの医療機関を受診してください。急性腎臓疾患は早期の方が治療しやすいですので、すぐに病院へ。

また、日ごろから、バランスの取れた食生活といった健康的な生活を送るように気を付けてください。さらに、医師の処方箋なしに勝手に薬を買って与えないことです。

*今回、なぜ子供の患者ばかりが多いのでしょうか?*

急性腎臓疾患は、幼児から大人まで、だれもがかかります。ただし、最初に熱や吐き気といった症状が出ますので、大人はその時に対処するのでしょう。子供の場合は、症状が出てから、食欲が落ちて、水分も摂取しなくなって脱水症状を起こし、リスクが高まる、ということはあると思います。

*危険な薬を避ける方法は?*

自分で薬を買って与えることはせず、薬が必要な時には医療機関へ行って、医師に相談してください。

BPOMによって安全が確認されたシロップ薬

写真は全てカロルス病院(IG@rscarolusjakarta)提供

参照

WHO、印シロップ薬の回収要請 ガンビアの子ども腎障害死亡で

WHO、印製せき止めシロップを調査 ガンビアで子ども66人死亡

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