ドリカムの魅力は二面性「晴れたらいいね」の c/w は悲しい恋の「SAYONARA」  リリース30周年! 老若男女を問わず指示される決定打となったナンバー

発売30周年! DREAMS COME TRUE「晴れたらいいね」

『NHK連続テレビ小説』に「歌詞がある楽曲」が使用され、定番化されたのは、30年前の『ひらり』から。主題歌は、DREAMS COME TRUE(以下ドリカム)12枚目のシングル「晴れたらいいね」でした。

「ドリカムが朝ドラの主題歌を担当する!」

コレは世間的にも、ドリカムファンにとっても、ちょっとした事件でした。

「晴れたらいいね」はドリカムの楽曲では、初めて「家族愛」をテーマにした曲だからです。

初めて楽曲を聴いた瞬間の印象は「童謡なのか?」と思わせる意外性がありました。そこで感じられたのは、爽やかさと、明るさと、親しみやすさでした。歌詞の内容は、

「明日は、私が運転する車で、昔連れてってくれた「思い出の場所」へ行こう」

―― といったもの。

楽曲に登場する風景は吉田美和の実際の思い出の場所ですね。成長した主人公が、楽しげに明日を待つイメージは朝ドラにピッタリとハマりました。メロディーやアレンジは、まるでバート・バカラックのような温かさを感じさせました。

普遍的ポップスは、毎朝のお茶の間に溶け込み、朝ドラがトレンディドラマ化してしまうのではないかという、世間の声を一掃してしまいました。

結果、最高位1位、登場回数26週、68.5万枚というロングセールスを記録。『第34回NHK紅白歌合戦』では『ひらり』の主演、石田ひかりが赤組司会を務める中、「決戦は金曜日」とメドレー形式で「晴れたらいいね〜紅白バージョン〜」を披露。62.0%という、その年の瞬間最高視聴率を記録。

性別を超え、特に幅広い年齢層に「ドリカム」が支持される決定打になりました。

カップリングは「晴れたらいいね」とは真逆の失恋ソング

ところで、当時17歳の乙女だった私のドリカムのフェイバリットソングは、「悲しいKiss」「忘れないで」でした。

当時のドリカムは、「うれしい!たのしい!大好き!」に代表される、はちゃめちゃに明るいラブソングが支持されながらも、“失恋ソング” の人気も非常に高かったグループです。

ドリカムの “失恋ソング” の熱狂的ファンだった私には「晴れたらいいね」は、あまりにもキラキラしていて眩しすぎました。しかしカップリングには、そんな私やファンを納得させる「SAYONARA」が収録されていました。

「SAYONARA」はマイナーディスコ的な楽曲を作りたかった中村正人と、サビが頭に浮かんでから “スリー・ディグリーズ” みたいに歌ってみようと思いついた吉田美和の2人のアイデアが詰まっています。大胆なディスコサウンドのアプローチは、前作のアルバムまでには無かったタイプの楽曲でした。

歌詞に出てくる登場人物は「私」「あなた」と「彼女」の3人。

「あなた」に告白した「彼女」。 「あなた」に告白出来なかった「私」。

微妙なバランスで成り立った3人の関係が終わりを迎える内容です。自分の一方的な思いに終止符を打ち、前へ向く「私」に共感を覚えた人も多いのではないでしょうか?

5枚目のアルバム「The Swinging Star」で感じるドリカムの魅力

8cmCDに収められた2曲で、幸せな家族への愛情から、告白出来なかった胸の内の怒りを詰め込んだドリカムは同年11月14日に、5枚目のオリジナルアルバム『The Swinging Star』をリリースします。

「晴れたらいいね」というスタンダードポップスや、「決戦は金曜日」のR&B、「SAYONARA」のソウルディスコ、さらにスイングやジャズ、フュージョンなどを盛り込んだバラエティー溢れるサウンドで彩られた作品です。

アルバムの中で吉田美和が書いた歌詞も、さまざまな主人公を描いています。底抜けにハッピーだったり、過去の淡い恋を振り返ったり…… 方や、悲しい恋の歌は、胸が抉られるほどの生々しさで描かれています。

この2面性が “ドリカムの魅力” だと私は感じています。単純に歌詞の内容だけではなく、歌声も楽曲によって「楽しい」のか「不安」なのか伝わってくる。表現力の豊かなヴォーカリストでなければ、歌いこなせないアルバムをドリカムは完成させました。

この秋の、車でのお出かけに「晴れたらいいね」をサブスクで聴いてみてはいかがでしょうか? きっと車内は笑顔に包まれるはず。

あるいは、絶賛片想い中の方には「SAYONARA」を聴いて、告白する勇気か、終わらせる力をもらって欲しいのです。そして、リアルタイムでドリカムを聴いていた人は、久々に押し入れや、ダンボールに閉まったドリカムのCDを取り出して聴いてみるのはいかがでしょうか?

きっと、懐かしい記憶と共に、気づかなかったメロディーや歌詞に心を奪われるかもしれませんよ!

カタリベ: 林ともひと@muzikrecord

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