バッバ・ウォレスがラスベガスでの“報復行為”を正式に謝罪。NASCARは1戦出場停止の厳罰処分に

 10月15~16日にラスベガス・モータースピードウェイで開催された2022年NASCARカップシリーズ第33戦『サウスポイント400』にて、序盤の95周目にディフェンディングチャンピオンのカイル・ラーソン(ヘンドリック・モータースポーツ/シボレー・カマロ)と絡んだダレル“バッバ”ウォレスJr.(23XIレーシング/トヨタ・カムリ)が、壁に押しやられた報復とばかりにHMSのシボレーを“撃墜”し、マシンを降りた両者が直接対峙する『場外バトル』が勃発していた。

 これを受け、明けた月曜に自身のSNSを更新したウォレスJr.は「反省」と題した文面を投稿したが、シリーズを運営するNASCARの主催側は、罰金やポイント剥奪の制裁こそ課さなかったものの、マイアミはホームステッドで開催される今週末の第34戦『ディクシー・ウォッカ400』に向け、当人を「1戦出場停止処分とする」重い判断を降した。

 ラスベガス・モータースピードウェイでの決勝95周目に発生した重大事案は、バックストレッチからターン3でケビン・ハーヴィック(スチュワート・ハース・レーシング/フォード・マスタング)に仕掛けたラーソンの動きが発端となった。

 ボトムレーンに飛び込み、最上段のウォレスJr.を含め3ワイドに持ち込んだチャンピオンは、中段にいたハーヴィックがスピードを緩め勝負を降りたことで、ターン4からフロントストレッチに向けトヨタ・カムリとのサイド・バイ・サイド一騎打ちとなる。

 ここで立ち上がりのラインをいっぱいに取ったラーソンに対し、行手を阻まれたと感じたウォレスJr.は、お互いに接触こそなかったもののアウト側のウォールに激しく接触する事態に。その直後、ダメージを負った23XIレーシングの45号車は明らかに感情的な反応を示し、オーバルを急降下してシボレーの右後部を直撃。全開からスピンモードに陥ったHMSのシボレーともども、最上段のウォールにクラッシュを喫し、ここでレースを終えることとなった。

 このアクシデントの余波で、プレーオフ・ドライバーとして戦ってきたトヨタ陣営内のクリストファー・ベル(ジョー・ギブス・レーシング/トヨタ・カムリ)が巻き添えを喰うなど、怒り心頭のウォレスJr.も“小さくない代償”を支払った。

ハイレーンから明らかにバンクを”急降下”し、結果的にふたりはここでレースを失うことに
「かつては僕も感情的に振る舞った時期があったが……」と、今回は冷静さを保って対応したカイル・ラーソン(Hendrick Motorsports/シボレー・カマロ)

■事故とその後の行動を「謝罪したい」とウォレスJr.

 直後にはマシンを降りたラーソンに直接詰め寄り「ヤツは自分が何をやったか知っている」と、暗に意図的な動きだったと非難し、揉み合う場面も見せたウォレスJr.だったが、明けた月曜には「5号車とのコース上での事故に続く日曜日の行動について謝罪したい」との書面をリリースした。

「私の行動は、この偉大なスポーツの頂点に向け、重要な役割を果たして信じられないほどの旅を共有する23XIレーシングや、そのパートナーが共有するコアバリューと一致しません。NASCARとファン、そしてクリストファー・ベル、ジョー・ギブス・レーシング、そしてトヨタに対し、プレーオフでの彼らにふさわしくない状況をもたらしたことを謝罪したい」と綴ったウォレス。

「私は計り知れない情熱を持ってレースに挑むが、情熱にはときにフラストレーションが伴います。ただし、振り返ってみればクルマの外でフラストレーションを追いかけるより、パートナーやチームのコアな価値観をうまく表現するべきでした。私は人生から学び、今回の事案からも大いに学ぶつもりです」

 このアクションに対し、NASCARの最高執行責任者であるスティーブ・オドネルは、次戦ホームステッドへの「出場停止処分」を課すとアナウンスした。

「あの事件がどのようにして起こったかを見れば、我々の胸中としても、本当に危険な行為だったと言わざるを得ない。それは意図的なものであり、他のコンテンダーやドライバーを危険にさらしたと考えるほかない」と、シリーズの公式ラジオ番組で語ったオドネル。

「このスポーツと現在の我々が置かれた立場と状況、そして今後その線をどこで引きたいのか……という点を総合的に勘案すると、それは間違いなく一線を越えた行為だった。それがこの決定を下す際に焦点を当てたものだ」と、今季導入の新規定車両“Next-Gen”の安全性が揺らぐ、昨今の情勢も踏まえた判断だったことも明かした。

 この結果、ウォレスJr.は2015年のマット・ケンゼス以来、コース上でのインシデントで出場停止となったドライバーという不名誉な記録を作り、次戦マイアミ・スピードウェイでの『ディクシー・ウォッカ400』には、今季もNASCARキャンピング・ワールド・トラック・シリーズで活躍を演じ、同エクスフェニティ・シリーズでも好調さを維持するジョン-ハンター・ネメチェクが代役として起用される。

この瞬間、現場を通過していた”プレーオフ・ドライバー”のクリストファー・ベル(Joe Gibbs Racing/トヨタ・カムリ)も巻き添えリタイアに
今週末の代役は、NASCAR Camping World Truck Seriesで活躍を演じるジョン-ハンター・ネメチェクが起用される

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