石破茂氏に聞く 混迷の今、日本のあるべき姿「独立主権国家にふさわしい体制を」「人口減少への対策」

ロシアのウクライナ侵攻、東アジアの政治的な状況など、今後も混迷を深めていくであろう国際社会において、第二次大戦後は平和を享受していたかに思えた日本も決して安穏とはしていられない時代に突入している。ジャーナリストの深月ユリア氏が、自民党の元幹事長、元防衛大臣の石破茂氏を単独取材し、日本を取り巻く現状と課題、将来あるべき姿などについて話を聞いた。

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長引くウクライナ戦争と激動の国際情勢。物価高や統一教会問題も影響して岸田政権の支持率は低下している。混とんとする世の中で、今後の日本政治・外交はどうあるべきか。石破茂議員にインタビューした。

-政策として日本で実行されるべきことはなんでしょうか?

「まずは、日本に独立主権国家としてふさわしい体制を整備することです。在日米軍は必要だと私も思っていますが、それは『政策選択の結果』として置くべきであって、条約上の義務として置かなければならない、という現状は改めるべきだと思います。『米国は日本を防衛する義務を負う、日本は米軍の基地を受け入れる』というのが条約上の義務となっているのが現状です」

-防衛の面で対等な関係でないから、日米地位協定も『不平等条約』となっているんですよね。

「その意味で『平等』にしようとするなら、他のあらゆる同盟と同じく『相互防衛』を基本とすべきです。憲法改正も議論されていますが、少なくとも憲法には『日本は集団的自衛権を行使できない』とは、どこにも書いていません。私は今までの政府解釈の変遷を踏まえても、集団的自衛権の国際法的な行使は合憲と解釈することは可能だと考えています。自衛隊も『必要最小限度の軍備を越えない』から『軍隊ではない』ので合憲、とされているのです。しかし、このような解釈をいつまでも続けていて、日米地位協定を改定しろ、対等な関係にしろ、といっても無理な話です」

-確かに憲法にそのような明文はなく、多くある解釈の一つに過ぎない「解釈」が保守層の間で1人歩きしているのかもしれませんね。

「もう1つ、防衛問題含めて、私は日本のサステナビリティ(持続可能性)を取り戻すことがあらゆる政策の目的となるべきだと思っています。その最たるものが人口減少への対策です。人口が減っていくことを放置していれば、当然日本の持続可能性は低くなります。それとともに、国民皆保険を原則とする医療制度も手直しが必要です。食糧やエネルギーも海外に頼りっぱなしでは、サステナブル(持続可能)とはいえないでしょう」

-食糧自給率33%ですと、戦時中に海外から輸入できなくなりますし、エネルギーも高騰して物価が上がり国民が困りますね。

「食糧自給率、というのは、カロリー換算のものや金額換算のものがありますが、安全保障の観点からは、できるだけ国産の農林水産物を増やすという方策とともに、いざという時に芋や穀類を作れるだけの農地を確保しておくことが必要です。米についても、減反政策を続けるだけでなく、もっと海外に輸出する方法も考えたらどうでしょうか。例えば、世界でも高く評価されている日本の炊飯器とセットで売ってみたら、短粒種の米のおいしさも伝わると思うんです」

-米リサーチ会社の調査によると、2027年にグルテンフリー(※小麦に含まれる「グルテン」というタンパク質を抜いた食事法)の市場は75億ドルになると推定されていますが、グルテンフリーが健康と美容によいと考える健康志向の欧米人に売れる気がします。

「エネルギーも、小さな水力発電を各地の農村に置いて、エネルギーの地産地消を進めれば、再エネ発電のシェアも上がると思うんです。また、日本は地熱のポテンシャルが世界第2位なのに、エネルギー生産に占める割合が低いので、活用する方法を考えるべきと思います」

石破氏の発言から日本の将来あるべき姿を要約すると(1)独立国家にする、(2)サステナビリティを取り戻す…の2点となる。ウクライナ戦争により、有事の際の連携という意味での集団的自衛権、そして食糧やエネルギーの「サステナビリティ」の重要性がますます浮き彫りとなった。

(ジャーナリスト・深月ユリア)

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