22年の時を経て復活した伝説のバンド"kein"、昨夜10月20日のEX THEATER ROPPONGI公演をレポート!

1997年の結成から瞬く間にその名前を全国区に轟かせ、一躍人気BANDとなった「kein」。

人気絶頂の中、2000年8月21日名古屋ボトムライン公演をもって突然解散し、わずか3年の活動にピリオドを打った。

2022年5月1日 最新のアーティスト写真と再始動ワンマンライブ「はじまり」を発表。

即チケットSOLDOUTとなった名古屋復活ライブの追加公演が昨日EX THEATER ROPPONGIにて行なわれた。

終演後には2023年1月の東名阪ツアーも発表され、今後の活動にも目が離せない「kein」、その追加公演の模様をライブ写真と共にいち早くリポートする。[Text:増田勇一(ライター)/ Photo:マツモト ユウ]

「ありがとう。良い夢見て生きようぜ」──午後8時40分、二度にわたるアンコールの最後の最後、ライヴ本編でも演奏された代表曲のひとつ“グラミー”を今一度炸裂させたのち、眞呼(vo)は客席に向けてそう告げ、この夜に終止符を打った。それはまさに『はじまり』と銘打たれた今回のライヴが、いわゆる“終わりの始まり”ではなく真の意味での起点なのだということを印象付ける言葉だった。

10月20日、東京・EX THEATER ROPPONGI。スタンディングと椅子席が半々という設定のフロアを前に、keinは約100分にわたる濃密なライヴを披露した。前出の眞呼(vo)をはじめ玲央(g)、aie(g)、攸紀(b)という、過去に同じ座標に立ちながらも袂を分かったことのある面々が、Sally(ds)という新たな血を導入しながらこのバンドの復活を宣言したのは、去る5月1日のこと。1997年に結成され、2000年8月21日に名古屋・ボトムライン公演をもって解散に至った彼らは、それから22年後の同じ日、名古屋・ダイアモンドホールで復活を遂げている。その記念すべきライヴ『はじまり』の追加公演として実施されたのが、今回の東京公演だった。 単純に公演会場のキャパシティだけを考えても、2022年のkeinは過去には到達できずにいた地点から歩みを始めている。まずはその事実が目を引くところだが、そうした数字以上に重要なのは、かつて短命に終わったこのバンドの現在のたたずまいが、驚嘆をもたらすほどの説得力に満ちているということだろう。

2000年の夏以降に各メンバーが経てきた道程について説明しようとすると、あまりにも多くのバンド名を羅列しなければならなくなるうえに、逆に時間の流れがわかりにくくなるほどの紆余曲折があるため、この場ではそれを割愛させていただく。ただ、かつて名古屋系と呼ばれたカテゴリーを象徴する存在のひとつとして認識され、いわばごく狭い世界の中で伝説化されていたこのバンドの音楽やスタイルが、2022年の現在にあってノスタルジックなものとは感じられなかった事実に、筆者は時間の流れの不思議さを思わずにはいられなかった。 ヴィジュアル系という明確な境界線のない枠組みの中に生まれた名古屋系という領域にも、きっぱりとした定義というものはやはり存在しない。ただ、曖昧ながらもその共通項として認識されているのは、黒を基調とするダークさ、耽美的世界観と激烈さのコントラストといったものだろう。それは「90年代的ヴィジュアル系」という言葉から連想される音楽やスタイルとは一線を画するものであり、アンダーグラウンドな気質、メインストリームに反発するような姿勢を伴うものでもあったように思う。 実のところ、筆者は当時からその界隈のシーンに目を配っていたわけではなく、こうした解釈は、当事者にあたるミュージシャンたちがその後に体現してきたものや、そうした人たちの実際の発言などから憶測したものでしかない。実のところkeinのライヴ・パフォーマンスに触れたのも今回が初めてのことだった。が、「百聞は一見に如かず」という言葉通り、たった一回のステージを通じて、複雑なパズルがどんどん噛み合っていき、これまでおぼろげにしか見えていなかったものの実像を捕らえることができたような興奮をおぼえることになった。

興味深いのは、彼らの音楽の背景に、いわゆるゴシック的なもの以外にも90年代前半のグランジ/オルタナティヴ、ハードコア、インダストリアルといった要素が感じられたことだ。実際、ライヴの前後にはまさしくそうした音楽が流れていたが、そうしたBGMひとつにも『はじまり』、つまりこのバンドの起源を感じさせるものがあった。そして同時に気付かされたのは、今現在の彼らが過去の短い歴史の続きを求めようとしているのではなく、過去を消化したうえで、この現在地を真の意味での起点としながら新たな領域へと踏み込もうとしているのではないか、ということだった。 バンドとしてのブランクを感じさせない、整合感と破壊性を併せ持った演奏ぶりに、独特なオーラをまとった眞呼のシアトリカルなパフォーマンスに、筆者は目と耳を奪われた。正直に白状しておくと、僕はこの夜のステージにできるだけ先入観を持たずに向き合いたかったため、事前に過去の楽曲や動画を視聴することも敢えてせずにいた。が、自分にとって未知の楽曲ばかりが繰り出されているというのに、約100分という時間の経過があっという間のように感じられた。すべてが終わり、場内が明るくなった瞬間には、まさに夢でも見た後のような気分を味わわされることになった。 眞呼の言う「良い夢」が果たしてどんなものを意味するのかはわからないが、この新たな夢はここから始まっていく。筆者の隣でこの一部始終を目撃していた彼らと同世代の某ミュージシャンは、ステージ上にこのメンバーたちの楽器が並んでいるのを目にしただけでも胸が熱くなると語っていた。逆に僕は、知らずにいた歴史を掘り下げたくなる欲求と、注目すべき新たなバンドの登場に立ち会ったかのような興奮を抑えきれなくなっていた。

この夢がまだ始まったばかりのものであることを示すように、2023年1月には『木槿の柩』と銘打たれた東名阪ツアーも決まっている。しかも会場限定音源のリリースも決定しているのだという。そこで改めて、keinが柩の中から這い出し、新たな姿を提示することになるのかもしれない。期待感を膨らませながら続報を待ちたいところである。

kein 再始動ワンマンLIVE「はじまり」追加公演

2022年10月20日(木)EX THEATER ROPPONGI

開場18:00 / 開演19:00

【SET LIST】

M01. Mr.

M02. an Ferris Wheel

M03. Color

M04. 絶望

M05. People

M06. 思い出の意味

M07. ブルーベジー

M08. 嘘

M09. Be Loved Darling

M10. 君の心電図

M11. FLASHBACK THE NEWSMAN

M12. グラミー

M13. クランケ

M14. 暖炉の果実

EN01. 雨音の記憶

EN02. keen scare syndrome

WEN01. グラミー

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