農業初心者 vs. シカ 休耕地 再生へ 5年目の挑戦 本気です

標高およそ350メートル、広島市 安佐北区の休耕地です。

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ここを花畑にしようと取り組むのは、農業初心者マークのグループ。ところが…

グループのメンバー
「いつも、こんな感じです。20頭から多いときは40頭くらい見たりします」

そこは、まるでシカのサファリパークです。

「やられましたわ」

― シカとの戦いですね?
「ほんまに激戦区です」

それでもグループの面々は前向きです。きょうのテーマは、『休耕地 再生へ… 本気です! 農業初心者マーク 5年目の挑戦』

舞台は、広島市 安佐北区 大林町 桧山地区 です。もともと、過疎・高齢化が進んでいる地域で、8年前の広島土砂災害でさらに休耕地が増えました。

放っておくと増えるばかりの休耕地の再生に取り組むグループがいます。グループ、5年目の挑戦はシカとの戦いにも頭を悩ませる1年になりました。

グループの名前は、「ふるさと楽舎」。田んぼのあらかきをするのが、リーダーの馬場田さんです。ふるさと楽舎のことしの活動は、田植えから始まりました。

ふるさと楽舎 馬場田 真一 プロジェクトリーダー
「ことしももう1回、酒を造りたいなと。そのためにもいいコメを作りたいなと思いますので、ご協力よろしくお願いします」

「乾杯!」「ええ酒じゃ」

実は去年、4回目の挑戦で初めてコメ作りに成功。収穫したコメで地元・大林町の酒を作り、地元の人たちと祝杯を上げました。

正式メンバーは、馬場田さんを含め4人。人手不足は、学生ボランティアの手を借ります。

先生役の地元の農家が、学生にアドバイスします。

地元農家
「こうしてにぎやかにしてもらうと、楽しみもあるし、元気も出ますよね」

田んぼは、合わせて20アール。作り手のいなくなった休耕田を借りました。ことしはさらに50アールの休耕地の再生に挑みました。

馬場田 真一 プロジェクトリーダー
「ことしは花畑をちょっと挑戦をしております。まずは草刈りをして、シカが入ってこないように柵をして」

植えたのは、ヒマワリの苗です。以前、レンゲを植えてシカに食べられたため、ことしは電気柵を設置しました。

広島市内の環境保全団体に勤務する馬場田さんが、休耕田の再生に取り組み始めたのは、広島土砂災害で被災した地区内の遊歩道をボランティアで修復したのがきっかけでした。

2年前には、家族で大林町に引っ越し、この土地に正面から向き合っています。

地元の人
「ワナにかかったけえ」

6月中旬、近くの農家が仕掛けたワナにシカがかかったこの日。花畑も被害を受けていました。

馬場田 真一 プロジェクトリーダー
「あっという間にこの状態、首だけにされて…。きのうまでは、ちゃんと葉っぱがあって、大きくなっていたんですけど。やられましたわ」

― シカとの戦いですね?
「ほんまに激戦区です」

畑のセンサーカメラの映像です。電気柵は、シカの侵入を防ぐことができませんでした。

シカは、畑のまわりに広がる耕作放棄地を住みかにしているようです。今月上旬、馬場田さんの畑の夜回りに同行しました。

馬場田 真一 プロジェクトリーダー
「いつも、こんな感じです。20頭から多いときは40頭くらい見たりします」

深夜、馬場田さんの家から桧山地区に向かうと、道の両側から次々にシカの姿が現れました。畑の夜回りは、秋のこの時期は3日に1回。夏場は毎日、行います。

馬場田 真一 プロジェクトリーダー
「こりゃ、いかんですわ」

花畑に行くと、2日前は異常がなかった電気柵が壊れていました。すぐそばのやぶの中から飛び込んできたようです。

馬場田 真一 プロジェクトリーダー
「もうコスモスのコの字もないです」

ここは、コスモス畑にする予定でしたが、花が咲く前に全部、食べられました。

ふるさと楽舎 馬場田 真一 プロジェクトリーダー
「まあ、ちょっとしんどいところもありますが、楽しみながら、いろいろ試行錯誤しとります。負けてたまるか」

桧山地区で稲刈りが始まり、ふるさと楽舎のメンバーは農業の先生・保原さんの収穫作業を手伝っていました。

農業の先生 保原 哲也さん
― 助かっていますか?
「うん。そりゃ、まあ、ええですよ。初めてよ」

馬場田さんは、保原さんが作ったコメに興味津々です。

馬場田 真一 プロジェクトリーダー
「(コメが)きれいです。保原さん、きれいですね」

馬場田さんがあらためてコメ作りのノウハウをたずねる中で保原さんは、その本気度を今も計りかねているようでした。

農業の先生 保原 哲也さん
「仕事もどんどん忙しくなって、管理職でもなれば、なかなか上がって来れんよね」

馬場田さんが反応しました。

ふるさと楽舎 馬場田 真一 プロジェクトリーダー
「わたしは継続。続けていって、メンバー増やしながら、半農半Xじゃないけど、町まで通いつつ、順番に見ていくとか、そういったシェアするような形ができてくるといいかなとは思っています」

その2週間後、今度はふるさと楽舎が育てたコメの稲刈りです。

馬場田 真一 プロジェクトリーダー
「ようやく稲刈りができるようになりました。見てのとおり、ちゃんと立っています」

期待と不安が入り混じる中、収穫したモミを確認します。

馬場田 真一 プロジェクトリーダー
「ええ感じじゃないでしょうか」

酒蔵の杜氏も太鼓判を押します。

旭鳳酒造 浜村 洋平 代表
「いいです。しっかり身が入っています」

― いいお酒ができそうですか?
「いいお酒を造ります。がんばります」

シカに悩まされながら、ことしのコメ作りは終わりました。

ふるさと楽舎 馬場田 真一 プロジェクトリーダー
「初心者マークはありつつも、車で言ったら事故なくですかね、おコメが作れるという状況にはなってきたかなと思います」

― 初心者マークがはずれたっていう感じ?
「いや。はずれていないですね(笑)」

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