リセッション=景気後退でも強いセクターは?代表的なETFや関連銘柄を金融アナリストが解説

2022年、流行語と言っていいほどポピュラーな言葉になってきている「リセッション」。ニュースなどで見聞きした方も多いと思いますし、投資家にとってはもうお馴染みのワードにもなっているでしょう。


リセッションとは

ロシアのウクライナ侵攻など世界情勢が不安定ななか、米国を含め世界的な利上げ、世界中でリセッション=景気後退の懸念が進んでいます。

リセッションというと、教科書的には株価が下落します。アメリカでは2022年4-6月期の米GDP速報値が、住宅投資などの落ち込みから前期比年率換算0.9%減 と 2四半期連続のマイナス成長になりました。2四半期連続のマイナス成長は「テクニカル・リセッション」といわれ、景気後退と判断される可能性が出てきています。

米国株投資はしたい、でもリセッションは怖い−−そんな方にリセッションにも相対的に強いといわれるセクター2つと、そのセクターを代表するETFや関連銘柄も紹介します。

セクターとは、銘柄を業種やテーマ、材料などによってグループ分けしたものになります。相場や市場を分析する際に、セクターごとに業績や株価などを比較することで、投資判断の材料となります。

リセッションに強いセクター(1)公益事業

まず1つめのセクターは、安定した事業を持っている公益事業セクターです。テーマ型ETFといって偏ったセクターに投資をするETFがあるので、米国の公益事業セクターETFを紹介します。

米国の公益事業セクターETFの代表はバンガード社のバンガード・ユーティリティーズETF(VPU)、ステート・ストリート社の公益事業セレクト・セクター SPDR ファンド(XLU)、ブラックロック社のiシェアーズ米国公益事業ETF(IDU)の3つであるといえます。

大まかにパフォーマンスを比較しても約10年、約5年間でほぼ3つとも似たようなパフォーマンスとなっており、強いて言えばVPUが1番パフォーマンスが良いと言えそうです。とはいえ、どの時点から測定するかで異なっていくような印象ですので、パフォーマンスで選ぶのは難しいかもしれません。

TradingViewより

その他の面で比較すると、IDUは経費率も高めで純資産額も他の2つと比べて小さめです。コスト重視するタイプの投資家である私としては、経費率が最安値のVPUに注目しています。

VPUは、MSCI USインベスタブル・マーケット・ユーティリティーズ指数のパフォーマ ンスに連動する投資成果を目指すETFで、あらゆる時価総額規模の米国電力・ガス会社、水道、独立系発電事業者、再生エネルギー系発電事業など、国民の日常生活に不可欠なインフラサービスを提供する企業に分散投資できる公益事業セクターのETFです。

BloombergによるとVPUの直近配当利回りは、10月20日(木)時点で3.69%となっています。経費率は0.10%です。インフレやウクライナ危機の影響で、エネルギー価格が高止まりすることが予想されるなかヘッジにもなりそうですし、公益事業セクターの底堅さもあるETFなのではないかと感じます。

さて、VPUは時価総額加重平均を用いて保有銘柄のウエートを算定していますので、投資信託組入れ上位銘柄の値動きの影響が大きいといえます。投資信託組入れ上位銘柄から2銘柄をピックアップして簡単に紹介しましょう。

1番比率の高いネクステラ・エナジー(NEE)は、連続増配25年以上の配当貴族銘柄です。持続可能エネルギーの発電・販売をする公益事業の企業でフロリダに基盤を置いている北米の電力会社です。再生可能エネルギーで世界最大規模を誇り、大規模な再生可能エネルギーに強みがあります。

ベスト3に入っているデューク・エナジー(DUK)は米国最大の電力会社で、ガス事業や再生可能エネルギーも手がけており、電力事業は生活に不可欠で安定感があるうえ連続増配は13年となっており、公共事業関連として個別株としても注目できる銘柄ではないでしょうか。

アメリカだけでなく、世界の公共事業の企業に分散投資をしたいなら、ブラックロック社のiシェアーズ グローバル公益事業ETF(JXI)も選択肢となるのではないでしょうか。JXIは世界各国の公益事業企業に分散投資するETFといえ、連動している指数はS&P Global 1200 Utilities (Sector) Cspped Indexとなっております。米国が投資先の約6割となっていますが、スペインのイベルドローラ(IBE)、イタリアのエネル(ENEL)、イギリスのナショナル・グリッド(NG)など、先進国の公益事業企業も組み込まれています。気になる方は調べてみてくださいね。

リセッションに強いセクター(2)ヘルスケア

2つめのセクターは、ヘルスケアセクターです。ヘルスケアセクターは一般的に暴落時にも下落しにくい、ディフェンシブのセクターと言われます。

米国では医療支出の割合がGDPの10%超となっており、世界各国の経済に占める割合も大きい巨大な産業といえます。世界的な高齢化も年々加速しており、その市場の需要や規模の拡大は今後も続くと考えられます。景気が悪くても医療支出というのは削減しにくいでしょう。

ヘルスケアセクターの代表的なETFとして、ヘルスケア・セレクト・セクター SPDR ファンド(XLV)、バンガード米国ヘルスケア・セクター(VHT)、iシェアーズ グローバル・ヘルスケア(IXJ)、ヴァンエック医薬品ETF(PPH)をあげます。

どこから計測するかで変動もありますのであくまで目安ですが、パフォーマンスをおおよそですが10年と5年で比較すると、XLVが1番良く、ついでVHTとなっています。この2つのETFはXLVが1番歴史が古く、総資産額も最大です。一方で経費率はVHTが最安で、さすがバンガードという印象です。

TradingViewより

VHTは、MSCI USインベスタブル・マーケット・ヘルスケア・インデックスに連動する投資成果を目指すETFです。指数を構成し、指数のウェイトと同比率で保持する株式に資産のすべてを投資していますので、分散効果もしっかりしています。Bloombergによると、10月20日(木)時点での直近配当利回りは1.44%、経費率は0.1%です。VHTの投資信託組入れ上位銘柄から2銘柄を紹介します。

組入れ銘柄首位のユナイテッドヘルス・グループ(UNH)は医療保険やヘルスケアサービスなどを提供するグローバル企業で、米国最大級のヘルスケア企業です。企業の雇用者や中小企業向けに医療保険・サービスを提供するほか、ニーズに合わせて予防ケアプラン、遠隔診療、処方薬給付などのサービスも提供しています。アメリカで受給資格がある人のみが受けられる公的医療保険制度のメディケアや、メディケイドの受益者サービスの提供、医療システムのデジタル化支援もしています。米バリュー株の代表格のひとつと言っていいのではないでしょうか。

2番目のジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)は世界最大級のヘルスケアカンパニーで、医薬品の研究開発から製造、販売を中心に医療機器や日用品まで幅広い事業ポートフォリオを有しています。医薬品、医療機器・診断、消費者の3部門で構成されていて、それぞれが分かれていることで効率的な経営がされている企業です。日本では「バンドエイド」や「ジョンソン」ベビー製品などの消費者向け製品や、使い捨てコンタクトレンズ「アキュビュー」などで有名ですね。

今回は米国ETFと米企業を紹介しましたが、日本株投資をされている方は、日本でも公共事業やヘルスケアの企業をチェックしていただけると、銘柄選びの役に立つかもしれません。皆さまの投資判断の参考になれば幸いです。

10月17日週「相場の値動き」おさらい

10月21日(金)の日経平均株価は、前日比116円38銭安の2万6,890円58銭と続落。前週末10月14日(金)の日経平均株価は2万7,090円76銭でしたので、週間では206円12銭の下落となりました。

米FRB高官のタカ派発言もあり、利上げによる景気後退への懸念は継続。予想より堅調な企業決算が相場を支えているものの、20日の米市場は米長期金利が連日で上昇し、一時4.2%台と2008年以来14年ぶりの水準となったことが相場の重しとなっているようです。

外国為替市場では、ドルが対円で32年ぶりに1ドル150円台となっています。

10月14日(金)、円相場は一時1ドル=148円台まで値下がりし、10月19日(水)には一時149円50銭付近を推移。 10月20日(木)の16時半過ぎにドル円が大台の150円を超えた途端に大きく下落をし、9月22日の財務省と日銀の介入が同じような時間(ロンドンタイムの前)に入ったことを思い出された方もいたはず。

TradingViewより

10月21日(金)には150円後半まで円安進行していますが、チャートをみると次のレジスタンスは160円の大台なので、ここで円安進行がとまるかは疑問だと個人的には考えます。

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