ひょう被害のナシをパリパリスナックに 素焼き製法でおいしさ凝縮 加須の食品会社 「規格外」の活路にも

ナシの素焼きで連携する布川健太郎さん(左)と矢野学さん

 地元特産のナシをスナック感覚で―。埼玉県加須市川口の食品製造会社「ノムリン」が久喜市のナシ農家と連携し、ひょう被害で傷ついたナシを「素焼き」製法でパリパリチップに商品化したところ、人気になった。同社は今後、地元特産の野菜やフルーツを素焼きで盛り上げようと商品開発に力を入れている。

■規格外品を活用

 ノムリンは農産物を独自の「乾燥素焼き」製法で、商品化する特殊な技術を開発。油を使わずに野菜や果物の水分を飛ばし、カリっと仕上げることができる。商品は「Suyakki(すやっき)」の愛称で親しまれている。

 工場長の布川健太郎さんは元シェフ。2018年から加須市で独自の製法を開発した。布川さんは「素材そのものの味を楽しめる。ノンフライ、ノンオイルで、着色料や保存料など一切使わないため安心安全」と魅力を語る。

 下ごしらえや焼き加減を工夫し、失敗を繰り返す中で、さまざまな農産物の素焼きに成功した。「仮説と改良の繰り返し。毎日作り続け、失敗する中で経験を積み重ねてきた」と布川さん。

 現在では大手百貨店やスーパーが注目しているだけでなく、「地元の野菜やフルーツを素焼きにして」と全国の農家から依頼が相次いでいる。特に規格外の農産品を商品化できる点が魅力だ。

■久喜の農家と連携

 そんな布川さんは久喜市のナシ農家と連携し、地元の特産の商品化に取り組んでいる。パートナーは地元のイベントで知り合った久喜市中妻で農家を営む矢野学さん。矢野さんはすでにアイスやサイダーなど、ナシを使った商品に取り組んでおり、早速、布川さんにナシの素焼きを依頼。「パリパリ食べられ、ナシの味が凝縮されていてすごくおいしい」と太鼓判を押す。

 今年は6月のひょう被害で規格外となったナシが多く出たため、素焼きのお世話になったが、商品は人気で短期間で売り切れたという。

 布川さんは素焼き製法を通じて、農業を支援したいと全国の農家と連携を進めている。「農家の仕事は大変で人手不足など課題も多い。国内の自給率を上げるためにも、長期保存ができる素焼きの技術で農家をサポートしたい」と目を輝かせている。

甘みが凝縮されて、パリッと香ばしい素焼きされたナシ

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