長崎経済にも“円安の影” 輸入原材料高騰に悲鳴 輸出企業の収支も圧迫

 円相場が一時1ドル=151円台まで下落し、長崎県内の中小企業にも影を落としている。輸入する原材料費の高騰に悲鳴が上がり、輸出関連企業ですら収支が圧迫される様相に。一方、新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和され、インバウンド(訪日客)消費の回復によるプラス効果に期待が寄せられている。
 「今まで経験のないピンチ。致命的に厳しい」。杉永蒲鉾(長崎市)の杉永清悟社長は苦々しくこう語った。原料すり身の輸入価格は8月の時点で既に前年同月と比べ約4割増。こらえきれず9月に値上げしたが、さらに円安が進み「(対策が)追いつかない」。食用油や包材、ガスの費用も軒並み上がり、「政府にどうにかしてほしい」と切実に願う。
 150円台はバブル景気終盤の1990年以来32年ぶり。菓子店の梅月堂(本店長崎市)の本田時夫社長は「その時の比じゃない」と憤る。輸入食材の仕入れ価格の上げ幅は平均10%以上、中にはキイチゴなど40%を超えたものも。フィルムや箱など包材も平均13%以上高くなった。対策として国内産食材への転換を図り、レモンなどフルーツは県産品に切り替えた。「長期的に外国産は高止まりするだろう。国内産の方が安いという材料も増えてくる」と警戒する。
 スーパーのS東美(長崎市)は、9月の仕入れ価格が総じて前年同月比7~10%増。値上がり前に大量発注して店頭価格を抑えるなど企業努力をしている。
 円安は輸出企業に有利に働く。だが、水産物を輸出している長崎魚市(同)は「流通コストや資材高騰など水産業界全体ではデメリットの方が大きい」。東アジアを中心に県産品の輸出を担う県貿易公社(同)も「輸出メリットはあるはずだが、メーカーの値上げに伴う仕入れのコスト増で(利益が)食われてしまう」と懸念を示す。
 日銀長崎支店の鴛海健起支店長は、長崎経済にとって円安はマイナス面が大きいとみる。「輸出産業が小さいことに加えて、中小企業中心の経済構造なので、輸入物価の上昇圧力が企業収入を下押しする」と理由を分析。その一方、水際対策緩和でインバウンド回復の見通しが立ち、観光業などで「この先は為替円安のプラス効果も期待できる」とも語った。


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