【F1第19戦木曜会見】サインツ、元僚友フェルスタッペンの連覇を祝福。自身が後れを取った原因は「序盤戦のつまずき」

 F1第19戦アメリカGPの会見パート1に出席したカルロス・サインツ(フェラーリ)にはまず、2週間前のF1日本GPでドライバーズ選手権2連覇を遂げたマックス・フェルスタッペン(レッドブル)についての質問が飛んだ。それに対するサインツの答えは、いつもながらのユーモアを含んだ優等生的な非の打ちどころのなさと同時に、フェラーリの不甲斐なさを嘆いているようにも裏読みできそうな、そんな内容だった。

Q:トロロッソでチームメイトだった頃から、マックスがドライバーとしてどのように成長し、進化してきたか、聞かせてください。
サインツ:彼が今年成し遂げたことについて、僕がこれ以上の褒美めいたものを上げる必要はないと思う。とてもいい仕事をしたことは明らかだし、どれだけいいパフォーマンスをして、どれだけうまくシーズンをやり遂げたかは明らかだからね。特にシーズン序盤に何度かリタイアした後は、どうやって回復し、年間を通じて多くの勝利といい瞬間を重ね、一貫性を保ち、フェラーリが強くなれなかった領域で強くなることができたか、誰もがわかるはずだからだ。もちろんレッドブルにも、祝福を送りたい。十分に賞賛に値する仕事を、彼らもしたからね。

2022年F1第18戦日本GP マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がドライバーズタイトルを獲得

Q:あなたたちがチームメイトだった頃より、彼はドライバーとして進化していると思いますか?
サインツ:間違いないね。8年間という歳月は、F1では途方もなく長い。その間にマックスは、あらゆる分野で進化してきた。進化していない領域はひとつもないし、一歩一歩すべてを改善し続けることができた。8年間で改善できないものは何もないのだから。そしてマックスは今、競争力のあるマシンを手に入れ、それを最大限に活かし切れている。このふたつは、勝つために絶対に欠かせない条件だし、マックスはそれを見事に成し遂げたということだ。

 ではサインツ自身は、マックスと同じように進化を遂げて来ているのだろうか。

Q:フェラーリ移籍初年度だった昨年のあなたは、ドライバーズ選手権でシャルル・ルクレールを上回ることができました。しかし今年は、後れを取ってしまった。その最大の原因は?
サインツ:おそらく、シーズン序盤のつまずきだね。最初の6、7戦、マシンの競争力はすごく高くて、シャルルはポールポジションを獲得し、レースでも優勝していた。しかしその間の僕は、十分な結果を出すことができなかった。
 そして今のフェラーリは、その時のようなレベルにないし、同時にレッドブルが力をつけてきた。それでポールも優勝も、簡単には獲れなくなっている。とはいえ全般的にいえば、今年は明らかにシャルルの方が僕よりもいい仕事をしている。ドライビングもレース運びもそうだ、僕よりも、マシンに馴染んでいるように感じるんだ。

Q:具体的にF1-75で、うまくいかないところは?
サインツ:今までいろんなF1マシンを走らせた経験で言うと、ラップタイムを見なくても、いいラップができたと感じるクルマもある。あるいは逆に、チームメイトや他のドライバーのタイムは、とても出せないと思うクルマもある。一方で自分ではいいラップタイムを刻んでいると思っても、あちこちでミスを犯してしまい、結果的に遅いクルマもある。
 そして今年のクルマは、運転しながらたくさん考える必要があるんだ。このコーナーはああして、このコーナーはこうしてと、頭をフル回転させなければならない。これはとても、F1ドライバーとして理想的な状態じゃないよね。

2022年F1第19戦アメリカGP木曜会見 カルロス・サインツ(フェラーリ)、ランス・ストロール(アストンマーティン)、セルジオ・ペレス(レッドブル)

 ここでサインツには、ここ数戦大きな話題となっているレッドブルの予算制限違反についての質問がでた。

Q:レッドブルのコストキャップ違反について、どう考えていますか?
サインツ:(ニヤリと笑って)レッドブルだけじゃないよね。というのは冗談だけど、でも隣のランス(・ストロール/アストンマーティン)には、何も聞こえてないみたいだよ(笑)。
 どのチームもどのドライバーも、明快さを求め、次に公平さを求めているのは明らかだ。100万ドルか200万ドル、あるいはもっと多いのか、具体的な金額はわからないけど、そんな数字がF1のマシン開発にどれだけ貢献できるか、みんなが知っていることだからね。ほんの数年前まで、上位3チームは3億5000万ドルを費やしていたのに、今は1億5000万ドルに抑えられてしまった。そこで違反が起きたのなら、十分に効果的なペナルティが科されることを願うばかりだよ。みんなにとってフェアプレーであることが、何よりも重要だからね。

 コストキャップ違反に関する質問は、ルイス・ハミルトン(メルセデス)にも飛んだ。ただしこちらはより具体的に、接戦の末に敗れた昨年のタイトル争いに関するものだった。

Q:あなたのファンのなかには、レッドブルがコストキャップに違反していたのなら、昨年の結果は逆転してもいいはずだと主張する人もいるようです。それに同意しますか?
ハミルトン:まず第一に、僕はすべてのファンを愛している。彼らがどれほど情熱的な人々か。本当に、敬意を表するしかない。その点を前提にして聴いてほしいけど、この問題について僕は基本的に、前向きにしか考えてない。つまり、どうすれば再びタイトルを獲得できるかと言うことだ。
 でも一方で、チームと僕が昨年やったことに対して、僕は本当に誇りに思っている。自分たちが獲得したものを、今も信じているからね。だからもしコストキャップについてのルールが骨抜きになったら、F1というスポーツにとってよくないのは明らかだ。万一そうなってしまったら、こんなルールはなくなった方がいいかもしれない。言いたいことはそれだけだ。

2022年F1第19戦アメリカGP木曜会見 ルイス・ハミルトン(メルセデス)

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