水際対策緩和 神奈川にも外国人観光客じわり 円安〝追い風〟も本格回復なお遠く 「浅草に比べたらまだまだ」

大涌谷で記念撮影する外国人観光客ら=22日午後、箱根町

 新型コロナウイルスの水際対策が大幅に緩和されてから10日余り、神奈川県内でも外国人観光客の姿が目立ち始めた。この2年半で打撃を受けてきた観光地は胸をなで下ろし、歴史的な円安も“追い風”に需要の取り込みに力を注ぐ。ただ本格的な回復はなお遠く、人手不足といった課題も浮かぶ。

 「親族訪問のついでに、東京や大阪などを旅行している。箱根には1泊する予定。少し蒸し暑いけれど、楽しんでいる」。日本人パートナーとオーストラリアから訪れたシェーンさん(32)が笑顔を見せた。

 紅葉シーズンを控え国内観光客でひしめく箱根に、訪日客の姿もちらほら。箱根湯本駅前の観光案内所に立ち寄る訪日客は1日10~20人で、町観光協会の佐藤守専務理事は「連休や土日には、欧米を中心に3~4割の訪日客が戻ってきている感触がある」と話す。

 鎌倉でも外国人の姿を見かけるようになった。「コロナは流行しているけれど、大好きな日本に来られてよかった」。クロアチアから初めて日本を訪れた女性は2週間滞在予定で、古都の町並みを楽しんでいた。

 ただ、鎌倉小町商店会の今雅史会長は「東京の浅草などに比べたら訪日客はまだまだ」。飲食店や土産物店は修学旅行生らでにぎわうものの、外国人はわずか。消費単価が高い訪日客が県外の有名観光地から流れる「波及」を待ち望む。

 政府は11日に入国者数の上限(1日5万人)を撤廃し、個人旅行も解禁。入国制限はコロナ禍前にほぼ戻った形で、県内観光地の期待感は強い。

 「訪日客はまだ1日1組いるかいないかだが、『やっと』という感じ」。箱根で旅館を展開する一の湯の担当者は、表情を緩ませる。かつては訪日客が約3割を占めて平日もにぎわったが、今は休日との差が歴然。急速に進む円安を「日本に行きたいと考えている海外の人が決断する後押しになる」と捉え、英語の食事メニュー作成などサービスの再整備を急ぐ。

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