太平洋側と日本海側の境界はどこ?【日本地図の秘密3】

日本地図には県境や地名、地形、歴史などの秘密が隠されています。そんな地図の秘密をひも解くと、これまで知らなかった日本の姿が見えてくるかもしれません。そこで、『知れば知るほど面白い!日本地図150の秘密』(日本地理研究会編/彩図社)から、日本の地理にまつわる豆知識を抜粋して紹介します。

水分れ公園(兵庫県丹波市)

太平洋側と日本海側の境界は「中央分水界」

「太平洋側は台風の被害が多い」「日本海側は豪雪地帯が多い」……。このように普段から区分の一つとして使われる太平洋側と日本海側。どちらかの海に面していれば判断はつきやすいですが、日本列島を太平洋側と日本海側に分けたときの境界はどこになるのでしょう?

それは「中央分水界」と呼ばれる境界です。この名称になじみのない人もいるでしょう。

まず、降った雨が西か東、または北か南のどちらに分かれるかの境界線を、「分水嶺」あるいは「分水界」といいます。基本的には、山の峰と峰を結んだ線、つまりは自然をもとにしています。中央分水界という場合は、日本列島の中央部を走る山脈が、その境界です。北は北海道の宗谷岬から南は鹿児島県の佐多岬まで、その全長は約5000キロメートルにも及びます。

津軽海峡は日本海でも太平洋でもない

乗鞍岳

とはいうものの、実はこの中央分水界をはっきり定めるのは難しいのです。日本列島の周りの海域を、明確に太平洋と日本海に二分することができないからです。海域の定義は機関によって異なりますが、海図の作成を行う海上保安庁においては、津軽海峡は日本海とも太平洋ともされていないようです。

ちなみに、日本で最も高い地点にある中央分水界は北アルプスの乗鞍岳で、標高約3026メートルを誇ります。一方で最も低い地点にあるのは兵庫県丹波市にある石生(いそう)の水分(みわか)れで、その高さはわずか95.45メートルだといいます。

分水界の位置は変わる?

石生の水分れ Wikipediaより

実は、日本山岳会が2005年に全国の中央分水界を定める調査を行っており、その際に北海道の新千歳空港付近に最も低い中央分水界があるという結果が出ました。しかしその高さは20メートルほどで、大雨でも降ろうものなら分水界の位置が変わりかねないという不明瞭な場所なのです。

この調査結果のため、水分れ橋のある丹波市は、「本州一標高の低い中央分水界」と名乗っています。

このように、太平洋側と日本海側を分ける中央分水界が存在しているのですが、場所によってはあいまいな部分もあるようです。

【出典】

知れば知るほど面白い!日本地図150の秘密』(日本地理研究会編/彩図社)

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