「今度こそ事実語って」那須雪崩事故遺族、3教諭へ真摯な姿勢望む

悠輔さんの仏壇で焼香する父鏑木浩之さん(右)と母恵理さん=18日午後、那須町寺子丙

 宇都宮地裁で25日に初公判が開かれる那須雪崩事故の刑事裁判には、亡くなった大田原高の生徒と教諭計8人のうち、6人の遺族が被害者参加制度を利用して出廷する。「厳正な処分を」「責任の所在を明らかに」。愛する息子を失った遺族はそれぞれの思いを抱え、業務上過失致死傷罪に問われた男性3教諭と向き合うことになる。「なぜ事故は起きたのか」。3教諭から直接、事実が語られることを遺族は強く望んでいる。

 「8人と事故について、どう思っているのか説明してほしい」。鏑木悠輔(かぶらぎゆうすけ)さん=当時(17)=を失った父浩之(ひろゆき)さん(56)と母恵理(えり)さん(55)は真相解明と厳正な処分を求めている。

 3きょうだいの末っ子で家族の「太陽」だった悠輔さん。その命を飲み込んだ雪崩事故を、発生直後は「自然災害」と考えていた。

 だが、後に確認した雪崩発生現場は急斜面で植生がまばら。山岳救助隊から雪崩発生の危険性の高さ、ビーコン(電波受発信器)など非常時の装備が不十分だったと聞いた。訓練を実施した3教諭への疑念と不信が募った。

 「なぜ登らせたのか」。自宅での弔問時、3教諭に尋ねたが、「すみません。何も答えられません」と繰り返すだけだった。2年ほどで弔問は途絶え、遺族が申し立てた民事調停にも姿を見せなかった。

 法廷で事故の話を聞くことや、3教諭側の説明・対応に傷つくかもしれないと恐怖心もある。それでも教諭の言葉を直接聞きたい。「今度こそ逃げずに答えてほしい」と望んでいる。

 浅井譲(あさいゆずる)さん=当時(17)=の両親は、他の遺族が3教諭らを相手にした民事訴訟には参加していない。「先生だけを責めるつもりはない」と胸中を明かす。ただ、父慎二(しんじ)さん(53)は「直接先生の話を聞ける機会」と参加を決めた。事故の状況と責任の所在を知りたいと強く思っている。

 強豪の大田原高山岳部を引っ張る存在だった譲さん。海外登山などの経験がある教諭陣は憧れの存在だったという。母道子(みちこ)さん(56)は「ゆずにとっては『山の師匠』だったんです」と振り返る。

 法廷では当時の状況を正直に話すよう望んでいる。「ゆずにとって格好良い先生のままでいてほしい」と真摯(しんし)な姿勢を求めた。

 道子さんは事故後、同校山岳部の活動に同行し、安全な登山の在り方を模索している。今回の裁判は学校登山の指導にも影響を与える。そういった視点でも審理の行方を注視している。

仏壇の前で譲さんに語りかける母浅井道子さん(手前)と父慎二さん=18日午後、那須塩原市東豊浦

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