予見可能性の有無焦点 3教諭が初めて法廷へ 那須雪崩事故あす初公判

宇都宮地裁

 那須町で2017年3月、登山講習会中だった大田原高山岳部の生徒7人と教諭1人が死亡した雪崩事故で、業務上過失致死傷罪に問われた男性教諭3人の初公判が25日、宇都宮地裁(瀧岡俊文(たきおかとしふみ)裁判長)で開かれる。事故発生から約5年7カ月。講習会の責任者だった教諭らが初めて公開の法廷に立つ。関係者によると、3教諭側は起訴内容を否認するとみられ、雪崩発生の予見可能性や過失の有無を地裁がどう判断するかが焦点となる。

 3人は当時の県高校体育連盟(高体連)の登山専門部専門委員長だった男性教諭(56)、副委員長で犠牲者8人がいた班を引率していた男性教諭(53)、後続の班を引率していた男性教諭(59)。

 起訴状は、17年3月27日朝、雪崩事故発生が容易に予想されたのに、情報収集や安全な訓練区域の設定を行わず、那須町湯本のスキー場周辺で漫然と深雪歩行訓練を行い、雪崩で8人を死亡させ、生徒5人にけがをさせた、としている。

 8人がいた班を引率していた男性教諭と後続の班を引率していた男性教諭については、訓練中にそれぞれ雪崩発生が予想される斜面を認識したのに、生徒に訓練中止を指示するなどしなかったともする。宇都宮地検は2月に在宅起訴した。

 検察側は、3教諭の積雪期の登山・指導経験を踏まえ、植生がまだらな急斜面の地形、前日からの積雪状況などから雪崩発生が予見可能だったと主張するとみられる。3教諭は、一部遺族が申し立てた民事調停や係争中の民事裁判に姿を見せておらず、初めて司法手続きの公の場に立つ。

 雪崩事故に詳しい中島嘉尚(なかじまよしひさ)弁護士(長野県弁護士会)は「雪崩は研究が進み、発生メカニズムが分かってきたことで予見可能性が高まってきた」と指摘。「裁判所が刑事責任を問えると判断するほどに注意義務、予見可能性を認めるかどうか注目される」と話している。

 雪崩事故で亡くなったのは、いずれも同校山岳部1、2年生だった浅井譲(あさいゆずる)さん(17)、大金実(おおがねみのる)さん(17)、鏑木悠輔(かぶらぎゆうすけ)さん(17)、奥公輝(おくまさき)さん(16)、佐藤宏祐(さとうこうすけ)さん(16)、萩原秀知(はぎわらひでとも)さん(16)、高瀬淳生(たかせあつき)さん(16)と、同部第3顧問の毛塚優甫(けつかゆうすけ)さん(29)=年齢は全て当時。

浅井譲さん
鏑木悠輔さん
奥公輝さん
佐藤宏祐さん
高瀬淳生さん
毛塚優甫さん

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