【コラム】マカオの次期カジノライセンスは7社による6枠争奪戦に ゲンティンが再び新規参入に名乗り(WEB版)/勝部悠人

目下、マカオでは現行カジノ運営コンセッション(カジノライセンス)の満期(2022年12月31日まで)に伴う次期コンセッションの入札手続きが進められており、内外から大きな関心が寄せられている。以前に本コラムでもご紹介させていただいた通り、政府は現行契約の延長というかたちではなく、再入札としているのが大きな特徴で、昨年後半から法改正などの準備が進められてきた。その集大成として、次期コンセッションの入札が今年7月29日からスタート。9月14日午後5時45分に締め切られ、現行ライセンス事業者6社に新規参入1社を加えた計7社が入札書を提出した。

入札書を提出した事業者は下記の通り(提出順)。①Wynn Resorts (Macau) Limited、②Venetian Macau Limited(サンズ)、③Melco Resorts (Macau) Limited、④SJM Resorts, Limited、⑤MGM Grand Paradise Limited、⑥Galaxy Casino Company Limited、⑦GMM Limited

①~⑥が現行ライセンス事業者、⑦が新規参入のマレーシアを本拠とするGenting Group(ゲンティングループ)関連企業とのこと。ご存知の通り、ゲンティングループは米国ラスベガス及びニューヨーク、マレーシア、英国、シンガポール、ギリシャなどでカジノ事業を展開する世界的レジャー企業で、「リゾートワールド」のブランド名で知られる。同社は21社が参加した前回(2001年)の入札にも名を連ねており、今回が二度目のマカオのカジノライセンス獲得チャレンジとなる。

マカオ政府のカジノ経営コンセッション競争入札委員会は9月16日午前10時から開札手続きを行った。委員会メンバーと7社の代表者らが出席し、同日午後6時40分に終了。委員会は開札結果について、6社が受理、1社が条件付きで受理と発表した。条件付き受理となったのはGMM Limitedという。

委員会主席でマカオ政府行政法務庁の張永春長官は開札手続き開始前の会見において、今後の流れとして、開札結果が受理となった入札参加社との協議、諮問及び審査を経て、年末までに選定を終える予定を示している。

また、次期コンセッションの契約期間は最長10年で、枠の数は最大6とされており、枠数を上回る7社が入札に参加していることについては、張氏は行政長官令及び関連法で最大6枠と規定されているため、6という数字は不変であるとコメントした。

コロナ禍によってマカオのカジノ業界がかつてない逆境に立たされる中、現地では7社目の入札があったことに驚きの声も聞かれた。当のゲンティングループは、今回の入札に至った理由について、事業拡大、地理的基盤の多様化、マカオのカジノ業界の回復見通しを挙げている。前回マカオのカジノライセンスの入札が行われた20年前と比較して、同グループの事業は大きく拡大しており、業界でも一目置かれる存在となっている。インパクトの大きいものとしてシンガポール・セントーサ島の大型IR開発が挙げられるが、日本(横浜)のIRに参入意向を示していたことも記憶に新しい。実は、20年前からこれまでの間、さまざまなかたちでマカオへの参入機会を模索してきた経緯がある。グループ会社が手がける複合施設「トレジャーアイランドリゾートワールドホテル&ショッピングセンターマカオ」が年内にもオープン予定とされ、いよいよマカオにも「リゾートワールド」の旗が立てられる。ただし、現時点の発表内容を参照すると、この施設内にカジノは入らない模様。

マカオにおける実績では、当然ながら現行ライセンス事業者である6社に優位性があるとみられるが、これまでマカオ政府は審査において現行と新規参入社は全く横並びであることを重ねて強調してきた。実は、次期コンセッション事業者の審査基準のひとつとして、中国本土以外からの集客を図ることが含まれている。この点については、マカオ以外の東アジアにカジノ事業の拠点を持つゲンティングループにも十分なアドバンテージがあるといえよう。

なお、マカオの次期カジノライセンスは10年間となっており、今回の入札参加やリゾートワールドの名を冠した複合施設のオープンは、10年後の入札でのライセンス獲得に向けた布石とする見方もある。今回の選定結果の如何に関わらず、今後ゲンティングループの世界、そしてマカオにおける動向を注視していく必要がありそうだ。

マカオ半島南湾湖畔に建設中の「トレジャーアイランドリゾートワールドホテル&ショッピングセンターマカオ」(資料)=筆者撮影

■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。

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