石破茂氏に聞く『日本の防衛』 「専守防衛」見直す時期、自衛隊には総司令官不在、シェルター整備も急務

ロシアのウクライナ侵攻が先行きも見えないまま長期化している。日本にとっても決して対岸の火事ではなく、東アジアの情勢も緊迫している。「命を守るシェルター協会」の代表でジャーナリストの深月ユリア氏が、同協会の顧問を務める自民党の石破茂元防衛大臣を直撃取材し、日本のあるべき防衛政策などについて話を聞いた。また、深月氏が同協会代表として防災核シェルターについて解説した。

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長引くウクライナで、プーチンが核兵器を使用する可能性が高まってきている。また、北朝鮮のミサイルによる国際社会の〝威嚇〟も増した。激動する国際情勢の中、今後の日本外交・防衛のあり方はどうあるべきか。筆者は石破茂議員にインタビューした。

-今後の日本の防衛政策はどのあるべきでしょうか?

「岸田内閣も歴代内閣と同様に『専守防衛、非核3原則を堅持する』としていますが、今後はこの原則も一部見直すべき時期に来ているのではないでしょうか。『専守防衛』は冷戦時代に生まれた構想で、『米軍が来るまで持ちこたえる』持久戦になり、日本の国土が戦場になることを前提としています。持久戦には十分な人員、弾薬、燃料、食糧などが必要ですが、日本は現状ではいずれも十分とは言い難いと思います」

-現状の自衛隊では対応できないと?

「対応できないとは思いませんが、有事であっても外交を駆使して、とにかく戦闘状況を短くしなければ戦略としては成り立ちにくい部分があるでしょう。また、日本の自衛隊には陸、海、空の司令官の上位にあるべき『総司令官(全体の司令官)』がいないので、サイバーや宇宙を含めた統合作戦を行いにくいのではないかとも思っています」

-単に軍事費を増やすのではなく、中身が大事ですね!

「そうです。まずは迎撃ミサイルの数に余裕を持たせたいですし、Jアラートの運用も見直さなければなりません。有事の際に国民の命を守るシェルターの整備は急務です。『どうやって国民の命を守るのか』を総合的に考え直す必要があると思います」

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現在、日本でのシェルター普及率はわずか0・02%だといわれている。防衛省と首相鑑定に避難施設は整備されているが、大勢の国民が避難するには不十分だ。ウクライナ戦争が始まって以降は民間でもシェルターへの関心が高まっているが、値段が数百万円以上もするので(大きさや、地下に埋めるか地上に作るかによって値段が異なる)、現状では、資金に余裕がある富裕層でないとシェルター購入のハードルは高いだろう。

諸外国のシェルター普及率はイスラエルとスイスは100%、アメリカは82%、ロシア78%、イギリスが67%、韓国のソウル市は323・2%(ソウル市の人口比に対して3倍以上の人口を収容できるシェルターが)ある。「武力攻撃事態等における国民の保護のための措置に関する法律(国民保護法)」が制定されているが、内閣官房「国民保護ポータルサイト」の資料によると、有事の際にはマスクやハンカチ、手ぬぐいを使って、放射能・化学兵器・細菌兵器などから身を守るようにと記載されている。しかし、これでは非科学的で、とても「国民保護」には不充分であろう。

シェルターに関して、これまで国会で議論されることが少なかったが、岸田政権は17日の国会で「避難施設の確保を含む国民保護の在り方は議論しなければならない重要な課題だ」と整備を検討する考えを示した。石破氏の主張する通り、 「どうやって国民の命を守るのか」を早急に国策として整備する必要があるだろう。

(ジャーナリスト・深月ユリア)

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