子ども患者のコロナ検査、控え目だった小児科医が一転…号泣させても親は喜ぶ「おとなの事情」

イラスト・小林孝文

 「うぎゃあー」って、今日もクリニックの屋根付きの出入り口に止めた車の中で、お熱で受診した幼児が泣く。というか、泣かせたんだけどね。小児科医としては、子どもを泣かせるのは本来、不本意なこと。泣かせると、いろいろなことが分からなくなってしまう。聴診の胸の音もそうだし、四肢の動きなどリラックスしたところで発達の評価をしないとね。子どもたちの笑っている顔を見たいのであって、嫌われたい訳では決してない!

⇒男性の家事・育児力の都道府県ランキング 1位は高知県

 今年の1月までは、なるべく新型コロナウイルス検査をしない方向できた。その方針を変えたのは、今年1月末のオミクロン株の急拡大から。流行の当初、別に園などでクラスターもなく、保育園の子の普通のかぜの発熱かな? という感じでも、園や学校からも、保護者の職場からも「陰性確認しろ」という重圧がかかってきた。鼻の検査は痛いよ、泣くよ、ホントはこっちも検査したくないよ。でも陰性だよと伝えた時に見た母のうれしそうな表情は、ああプレッシャーかかってたんだ…とよく分かって、それ以来、方針変更。

⇒笑わない赤ちゃん、なぜ?

 その後、保育園など集団で感染する事例も増えて、子どもたちを検査する意味も出たけれど、オミクロン流行前の頃も流行が治まりかけてきた最近も「検査は必要?」「やはり“おとなの事情”だよね」と感じてしまう機会は多い。そして、結果は陰性と告げられて喜ぶのは圧倒的に母が多いっていうのも、一つの“おとなの事情”なのかと。感染・自宅待機などで母の方にかかっている負担が多いってことだよね。でも、何でも“おとなの事情”で片付けてしまうっていうのもねえ…。(小児科医・津田英夫=福井県福井市)

© 株式会社福井新聞社