博士邸宅 ゆるくつながる場に再生 岡山で有志 四季折々イベント企画

古民家を再生し交流拠点となった博士の家

 医学博士が暮らしたその邸宅は90年前に建てられた。老朽化し空き家となっていたのが再生され、名前の通り人々が集う場として親しまれている。コミュニティーハウス「みんなが集まる 博士の家」(岡山市北区広瀬町)。有志による運営委員会が四季折々に多彩なイベントを企画し、社会福祉の市民活動拠点にもなっている。

 「家が人を呼び、人と人とがゆる~くつながる。『ゆるつながり』の居場所かな」と話すのは運営委の企画担当・横田都志子さん(56)。15日には秋恒例の「月見会」を開いた。といっても、眺めるのは壁に掲げた満月の写真。集まる名目があればいい、というわけだ。

 約30人が参加し、大人も子どもも弁当やおでんを食べながら会話を弾ませる。オカリナ、クラリネット、ウクレレ、キーボード…。これもまた、ゆる~く結成された「博士太郎楽団」が演奏。「蓄音機コンサート」もあり、趣深いレコードの音色がレトロモダンな建物に響いた。

 岡山市中心部近くの住宅地にある博士の家は、重厚な和風建築に洋館を組み合わせた木造2階建て。岡山大病院長を務めた医学博士・津田誠次氏(1972年没)が32(昭和7)年に建てた。傷みが激しく空き家となっていたが、2019年2月に改修。津田氏の孫で医師・稲田健一さん(64)=名古屋市=が多額の修繕費用を負担した上で、「地域のために活用してほしい」と弁護士、司法書士、建築士、大工棟梁(とうりょう)らさまざまな立場の有志でつくる運営委(委員長・井上雅雄弁護士)に託した。

 運営委は多彩なアイデアを出し、交流の機会を設けてきた。節分の豆まき、桜はなくても春には花見会、七夕のそうめん流し…。庭の草取りや師走の大掃除でさえ、親睦行事にして楽しむ。各種セミナーや会合、楽器の練習、昼寝にも使われ、飲食店が“出張バー”を開くこともある。

 子どもの虐待防止や性教育に取り組むNPO法人・CAPプロジェクトおかやまは、コミュニティー食堂、子育てサロン、ヨガ教室などを開催。住居確保が困難な高齢者や障害者らを支えるNPO法人・おかやま入居支援センターも事務所を置く。

 月見会で久しぶりに博士の家を訪れた稲田さんは「愛着ある家が想像以上に活用され、うれしい。祖父も喜んでいるだろう。みんなの財産として次の世代に引き継いでほしい」と語った。

 博士の家 敷地は540平方メートル、建物は延べ230平方メートル。会員制で運営。広間と和室2室、調理室、浴室、庭などを共用スペースとしており、会員とその同伴者・招待者が利用できる。入会費2千円、年会費団体5千円・個人3千円。問い合わせは、おかやま入居支援センター(086―230―1056)。

食事やおしゃべりを楽しむ月見会の参加者
趣深い音色が響いた「蓄音機コンサート」

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