長崎県内の少年2事件、全記録廃棄問題 「運用適切でなかった」 経緯不明、調査打ち切りへ 長崎家裁

 長崎市の男児誘拐殺害事件(2003年)と佐世保市の小6女児同級生殺害事件(04年)の全事件記録が家裁で廃棄されていた問題で、長崎家裁は24日、いずれも最高裁の内規で定める「特別保存」扱いとせずに廃棄していたと明らかにした。同家裁は「当時の運用は適切ではなかった」とするが経緯は不明のまま。「当時の判断過程を検証することは困難」として調査を打ち切る考え。

 家裁によると、長崎家裁が18年3月8日に長崎事件の記録を、同家裁佐世保支部が19年2月28日に佐世保事件の記録をそれぞれ廃棄した。いずれも捜査書類や少年審判の処分決定書、精神鑑定書などの文書一式とみられる。
 最高裁は内規で、一般的な少年事件の捜査書類や審判記録は少年が26歳になるまでの保存を規定。史料的価値の高い記録は期間満了後も保存しなければならず、26歳以降も事実上永久保存する「特別保存」を定めている。運用を定めた1992年の通達では、対象例として「全国的に社会の耳目を集めた事件」などを挙げている。
 長崎家裁は長崎、佐世保の事件を特別保存扱いとしなかった理由について「要否について具体的に検討された形跡がないため、理由は不明」とする。両事件とも元少年の年齢が26歳に達した翌年に廃棄処分としたとしている。同家裁管内で特別保存扱いとした事件はこれまでないという。
 同家裁が2020年5月に定めた運用要領は「主要日刊紙のうち2紙以上(地域面を除く)に終局に関する記事が掲載された事件」などを特別保存扱いにすると規定。現在は同要領に従って運用している。
 長崎事件は03年7月、中学1年の少年=当時(12)=が男児を誘拐し、立体駐車場の屋上から突き落として殺害した。佐世保事件は04年6月、市立小で小学6年の女児=当時(11)=が同級生の女児をカッターナイフで切り付け、失血死させた。


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