コロナの影響で小規模企業の譲渡相談が増える 東京都事業承継・引継ぎ支援センター

東京商工会議所(東京・丸の内)

小規模企業の譲渡相談が増加、譲受相談と成約は減少

東京商工会議所は10月18日、「東京都事業承継・引継ぎ支援センター」の2022年度上半期(4~9月)の相談・成約実績を公表した。歴史的な円安などによる原材料価格高騰が止まらない中、小規模企業の譲渡(売り手)相談が増加。一方、譲受(買い手)相談は減少し、成約件数も前年度同期を下回った。

2022年度上半期の新規相談社数は前年度同期比30社、5.8%減の488社。新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けた2020年度同期(360社)を大きく上回ったが、コロナ禍前の2019年度同期(453社)とは、ほぼ同水準だった。前年度同期と比べた譲渡相談は30社増の220社だったのに対し、譲受相談は257社と64社ものマイナスで推移した。

2回目以降の継続案件を含めた総相談件数は前年度上半期比51件、7.4%減の642件。2020年度同期(529件)は超えたものの、2019年度同期(767件)には届かなかった。前年度同期比の譲渡相談は42社増の309社で、譲受相談は94社減の226社だった。

譲渡企業の約80%が年商10億円以下

譲渡関連相談企業の年商は48%が1億円以下。3億円以下が約70%、10億円以下が約80%を占める。同センターは「小規模企業における第三者承継の動きが浸透している」とするが、経営体力に乏しい小規模企業の譲渡相談のみ増えているのが実情だ。受け皿となる譲受相談が縮小する中、第三者承継(M&A)のマッチングは難しさを増している。

コロナ禍の過剰債務が譲渡の足かせに

また、成約件数は41件にとどまり、2021年度上半期の56件より15件も少ない。2022年度はコロナ禍前の水準まで一気に持ち直した前年度を超える実績が期待されるが、上半期はコロナ禍が直撃した2020年度の46件にも及ばない低調なペースとなった。

私的整理や法的整理の選択に二の足を踏む経営者は多いものの、コロナ禍などの影響で過剰債務を抱えていれば譲渡を望んでも敬遠されやすい。まずはM&Aの俎上に載れるだけの業績改善を果たす必要に迫られるが、再建の道のりが極めて困難なケースは少なくない。

経営環境の悪化で増しているM&Aの重要性

東京商工リサーチが10月19日に公表した調査結果によると、2022年度の業績で減益を見込む企業は34.4%に上り、うち77.3%は原材料価格高騰を理由に挙げた。新型コロナ関連の経営破たんも全国で4,500件に迫る勢いで、地域別では全体の20%超を占める東京都が突出。中小企業のM&Aを活発化させる支援の強化が急務となっている。

事業承継・引継ぎ支援センターは経済産業省が47都道府県(48カ所)に設置し、2021年4月に第三者承継支援の「事業引継ぎ支援センター」と親族内承継支援の「事業承継ネットワーク」の機能を統合。2021年度の成約件数は過去最多の1,514件(東京都は86件)で、2022年度は2,000件到達を目標に掲げている。

文:M&A Online編集部

関連リンク:「東京都事業承継・引継ぎ支援センター」2022年度上半期の相談実績

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