社会人、中高生が東大生と一緒に学べる「東大メタバース工学部」、そのメリットとは?

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「フラトピ!」のコーナーでは、東京大学の新学部“メタバース工学部”をキャスターの田中陽南が取材しました。

◆オンラインで誰もが学べる"東大メタバース工学部”が誕生

10月1日、東京大学に新たな学部「メタバース工学部」が設立しました。9月23日にはメタバース空間で記念式典が行われ、そこではメタバース空間の舞台上でさまざまな登壇者が挨拶をし、参加者はアバターで拝聴。

会場内では花火も打ち上げられるなど、既存のフォーマルなイメージとは異なる、とてもユニークな式典に、参加した田中は「メタバース空間だと、室内でも花火が上げられるんですね」と感心しきり。

では、肝心のメタバース工学部とはどういった学部なのか。それを知るべく、田中は東京大学へ。

式典にも登壇していた、東大の工学部長・染谷隆夫教授に話を聞いてみると「メタバース工学部は、実空間で行われている学びだけではなくて、オンラインに学びの場を移すことで、東京のこの場所にみんなが集まらなくても学びの場を提供したいと考え、設立されました」と経緯を説明。

メタバース工学部では、ほとんどの授業はオンラインで行われ、その内容もメタバース空間をデザインするものからAI、プログラミング、飛行ロボットの製作など多岐にわたります。

そして、染谷教授がこの学部の最大の特徴と語るのが"受講生”。「今までは東大生だけに対して提供していた講義の内容も、社会人の方、あるいは中高生の方にも受講していただくことができる」と力を込めます。

現在、市場調査・データ分析の仕事をしているという社会人の受講生(31歳 男性)に話を聞いてみると、メタバース工学部を受講しようと思ったのは「(現在の仕事に活かすために)よりスキルを高めたい」という思いから。「今までに経験していないことをリスキリング(学び直し)することで、今まで自分が気づいていなかったスキルや価値観、自分の可能性を広げることができると思う」と期待を寄せます。

通常、大学の授業を受けるにはその大学に入学する必要がありますが、メタバース工学部は試験などを受けることなく授業を受ける資格が得られます。そうして門戸が開かれることでさまざまなメリットがあり、「先端技術というのは日々生まれ、新しく生まれ変わっていくので、中高生、あるいは社会人の方のリスキリング講座を提供し始めるというのは、みんなが持っているチャンスがどんどん広がっていくだろうと考えています」と染谷教授。

そして、大学の授業に中高生や社会人など、違った価値観や知識を持つ人が加わることで、「新たな学びの場になる」とも。さらに、「違う専門性の方がみんなの議論の輪に入ると、他の人もその人からの気づきがあるというように、お互いがお互いの専門を教え合うとか学び合うとか、そういう刺激をし合うことによって新しいものがどんどん生まれてくるだろうと期待している」と今後の展望を話していました。

◆メタバース空間なら原発について詳しく学ぶことも可能

取材した田中によると、現状メタバース工学部では「Zoom」などを使って授業をしていくそう。また、染谷教授曰く、現在、工学部は女性が少なく、文系に進むと工学に携わらなくなってしまう人が多いなか、こうして誰もが参加できる授業を行うことで工学を知ってもらい、いろいろなことに使ってほしいという思いから設立に至ったとか。

また、授業の内容もさまざまで、中高生を対象にしているジュニア講座ではメタバース空間の作成・デザインから飛行ロボットを創造・製作、さらには未来の原発のデザイン、バーチャル原発見学会などもメタバース空間でできるようになるとのこと。

メタバース領域を専門とするmicroverse株式会社 CEOの渋谷啓太さんは、「授業で飛行ロボットを飛ばすなどは、メタバース空間ならでは。原発のモデルを東大の敷地内に造るとなると莫大な費用がかかるが、デジタル空間であればコストも少なく、没入感が体感できる。そうしたメタバース空間ならではの体験を使ったコンテンツはとても良いと思う」と歓迎します。

Fridays For Future Tokyoオーガナイザーの黒部睦さんも「今後、再エネ(再生可能エネルギー)などをいかに導入していくかといったことも、AIなどを使って開発が進むといいなと思うし、誰でも学び直しができるのは本当に素晴らしいと思う」と評価。また、日々新たな技術が更新されるなかで、教える側が最新の知識から取り残されてしまうこともあるため「学校の先生なども参加できるような環境がすごくいい」と笑顔をのぞかせます。

これにはキャスターの堀潤も「最新の知識に教育現場の最前線のみなさんが触れられる環境整備、それはぜひやってほしい」と共感。

インスタメディア「NO YOUTH NO JAPAN」代表の能條桃子さんは、今後の広がりが楽しみとし「知識もそうだが、直接経験することで感情が動くと思うので、そういったものを提供していく場になると、もっとリスキリングしようというモチベーションになっていくと思う」とさらなる発展に期待していました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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