【寄稿】属性グラデーション(WEB版)/POKKA吉田

ちょうど10月の前半に本稿を書いている。スマートパチスロ登場前一か月半といったところであり、遊技機市場の活性化に期待を寄せている人も多いだろう。もちろん私もその一人である。

ただ、店ごとに状況を見ていくと手放しで期待するということでもなくなってくる。昨年からの部材供給不足の世の中において、業界の期待を受けて登場するスマート遊技機もその例に漏れず。どうしても徐々にしか導入は進まない。もっともこれは業界側で何かコントロールできる代物ではないことから、致し方ないとも思う。

需要に供給が追い付かない状況だと、どうしても店ごとの格差というものは拡がる。スマートパチスロ一つとっても、導入できるところ、導入の見込みが立たないところとはっきりと明暗が分かれてくる。

スマートパチスロ導入前夜で遊技機やユニットの販売営業が本格化した9月になると、面白い現象も見られたように思う。とにかくユニットが足りないという話が先行したことから導入を狙うホールはユニット業者に確保をお願いする。しかし、各ユニット業者も用意できる数に限りがある。必然的に各ユニット業者の重要取引先にランク付けされているところを優先した配分となっていく。これが必ずしも大手ホールチェーン優位とは限らないということがまずは特徴だ。

大手チェーンの場合でもたとえば全店ユニット確保なんてことは実現不可というご時世となり、自社での配分を迫られたりユニット業者によっては業者側が店舗を指定して配分している。一方で中小ホールであってもユニット業者のお得意先というのは普通にあって、そういうところはユニット確保が可能となっていた。

遊技機、ユニット、サーバなどのモノはもちろん、業界凋落トレンドにおいて人出不足もあって工事の日程確保もかなり影響する。また、もともとホール法人間にある設備投資力、すなわち資金(調達)力の格差もあるし、販売方法にもいろいろあって、素直に導入前夜を期待しながら待っているという雰囲気ではなくなっている。が、無事先行導入の計画を実現できそうなところは普通に期待して待っているという感じだ。

既存機も同じだが、供給不足がずっと続いている。PS問わないが、遊技機そのものの数が少ないのだ。市場は今やぱちんこ200万台、パチスロ100万台規模にまで縮小してきた。遊技機メーカーは市場の絶対数が急増するような事態にでもならない限り、特に大手メーカーほど販売台数に特化するよりも大成功機種を一つ出すことによって、そこから先しばらくの遊技機販売を確保していく、ということを狙いたくなるものだ。特に抱き合わせみたいなことも供給不足の中では増えている印象もあるが、抱き合わせがなくともホール側から機歴など取引実績を積み上げるために欲しいというケースも増える。それは一度でもその時期のトップ機種を出せば一気に各メーカーの営業担当者は実感するものである。

単純に考えれば「良い機械だけ売ればいい、良くない機械は売らなければ(あるいは作らなければ)いい」と思いたいわけだ。ただ、実際問題、良いか悪いかは事前にわかるものでもない。昨年の牙狼のように始まる前から結果が確定していたという空気になる機種というのは極めて異例である。昨年のガンダムユニコーンも今年のRe:ゼロも、始まる前からあのような評価ではない。

遊技機メーカーの企画開発のフローを考えれば、良い機械だけ売ればいいということは実現がほぼ不可能となる。製造のための調達(それが昨年からとても大変)もあって、ある機種が大成功したとしても他の機種の販売を止めるわけにもいかず、結果、いろんな機種を販売していく。このため特定機種に需要を集中させているはずのホール側は、特定機種以外の機種も想定以上に導入するケースもある。

こういった流れの中、従来型の資金力格差もあって、P機、6.5号機の導入競争に参加せず、ゆっくりと低貸島などをメインに中古市場で設備投資を抑えて、という営業スタイルにしている店も多いわけだ。全日遊連加盟店舗が7,000ちょっとまで減っている以上、そういう店の数は少ないと思いきや、まだまだおそらくたくさんある。すべてがすべて、注目新機種を導入している店だけになるとすれば、この半分でもまだ多いくらいではないだろうか、というのが私のなんとなくの現場感だ。

そのなんとなくの現場感で「積極的に設備投資する」店の中で、今回、スマートパチスロの導入の可否がわかれている。同一チェーン内でも店舗によって可否がはっきりわかれている。こうなると、各店舗ごとの属性の変化というか幅は、かなり拡大しているように感じる。

要するに店舗属性のグラデーションがかなり拡がっており、単純に「イケイケの店」「低貸専門の店」あるいは「大型店」「小型店」というようなはっきりした区分ではなくなってきたわけだ。

業界の一般論で言えば、このところずっと「大型店の収益性が中小店の収益性よりも優位」という状況が続いている。収益性の低い大型店は切り売りされるケースも珍しく、コロナの世の中になってからは業績にさほど問題がない法人であっても自社内での店舗整理が進んでいることもある。結果、残った大型店の収益性は優位というのは考えれば当たり前のことでもある。

その大型店は設備投資に積極的であり、その逆もまたしかり。結果、「大手と中小」という格差の二極化が進んでいった。これは近年というよりもこの20年以上の大きな流れと言ってもいいだろう。

そんな中、スマートパチスロの登場で、また供給不足の世の中ということもあって、二極化というよりも多極化の様相になってきた。中小だから無理ゲーということでもなく、私の知る限り、単店のところでもスマートパチスロの先行導入が実現するところもあるのである。

スマートパチスロ登場前夜の今、先行導入店は導入機種の業績が6.5号機を凌駕することを望んでいるのは間違いない。性能的なアドバンテージはもちろんのこと、そもそも遊技メダルがないことから(メダルはないので疑似的な)IN枚数は、客がメダルに触れる工程を端折ることによって、少なくとも単位時間当たりのIN枚数は向上する。これは理論上当然の結論となる。

だから期待も大きい。先行導入店は多少の無理をしてでも導入しているところも多い。これは、期待の大きさゆえだし成功してほしいと私も思っているし、成功する確率も低くはないと思っているが、遊技機の成否を決めるのは遊技客だ。客がどのような反応をするかは導入後にしかわからないのである。

まずはスマートパチスロ登場前夜に店舗の属性グラデーションは急拡大した。先行導入の可否という違いで目先の業績がどうなるか。スマートパチスロがスタートから大成功となれば先行導入店は優位になるし、初速が鈍足なら先行導入できなかったところにむしろ費用対効果の面でアドバンテージがあり収益性で勝負できることになる。いずれはスマート遊技機が市場の主流となり、しっかりとした中古市場も形成されて一大市場となるとは思うが、供給不足の世の中ではその時期が読めない。

まずは属性グラデーションの拡大からのスマートパチスロのスタートである。スタートがどうなるか、導入するしないを問わず、皆が注目の年末商戦がそろそろ始まる。

■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。

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