ウォーレン・バフェット、ジェフ・ベゾス、イーロン・マスク…大富豪が「時間」にこだわる真意とは

世界の大富豪はどんな哲学を持ち、その考え方や生き方に共通点はあるのでしょうか?

ジャーナリスト・桑原晃弥 氏の著書『世界の大富豪から学ぶ、お金を増やす思考法』(ぱる出版)より、一部を抜粋・編集してウォーレン・バフェット、ジョン・ロックフェラー、ジェフ・ベゾス、本田宗一郎、イーロン・マスクについて紹介します。


「私は小さな雪の玉をずいぶん若い時から固めた。10年遅く始めたら、今頃もっと山の斜面のずいぶん下にいただろう」

「スノーボール」下
ウォーレン・バフェット (バークシャー・ハザウェイCEO。世界一の投資家)

「世界一の投資家」と呼ばれるウォーレン・バフェットは子どもの頃からさまざまなビジネスに手を染めています。6歳の時、アイオワ州にあるオカボジ湖にある山荘を借りて、一家が休暇を過ごしたことがありますが、その時、バフェットはコーラ缶6缶を25セントで買い、それを湖に行って1缶5セントで売り、5セントの利益を上げています。休暇を終え、オマハに帰ってからは祖父の雑貨屋で仕入れたソーダを一軒一軒売り歩いてもいます。

生活に困っていたわけではありません。大恐慌の直後こそ父ハワードは職を失い、新しく立ち上げた証券会社の顧客開拓に苦労しましたが、バフェットが6歳になる頃には家庭の経済状態は随分と好転していました。「お金が好き」という以上に、自分の小さなビジネスによって「お金が増えていく」のを見るのが好きな子どもでした。

以来、競馬場で予想紙を発行したり、ゴルフ場でロストボールを集めて売ったり、あるいは友だちと組んで中古のピンボールマシンを理髪店に置いてもらうこともあれば、子ども50人を使って新聞配達を行ったこともあります。初めての株式投資も11歳で行っています。結果、高校を卒業する頃には既に1万ドル近い資金を貯め、さらに大学を卒業する頃にはその資金を倍にまで増やしています。

こうして早くから蓄えた資金がバフェットの「雪の玉」になりました。こう言っています。

「私は小さな雪の玉をずいぶん若い時から固めた。10年遅く固め始めたら、今頃もっと山の斜面のずいぶん下にいただろう」

お金持ちになりたいのならできるだけ早くスタートを切る方がいい。ゲームの後をついていくよりは、ゲームの先を行くようにする。それだけでゲームの主導権を握ることができるし、よほどのへまをしない限り成功もより確実なものにすることができるのです。

ここがポイント
できるだけ早くスタートを切り、常にゲームの先を行くことを心がけよう。

「1日も早くビジネスをやれ。人生はマネー、マネー、マネーだ」

「ライバル企業は潰せ」
ジョン・ロックフェラー (ロックフェラー財閥始祖)

米国史上最も莫大な富を築いたと言われるジョン・ロックフェラーの人生は、大きく2つに分けることができます。

週給5ドルの店員から身を起こして石油市場を独占し、「潰し屋」「追いはぎ貴族」「同時代最悪の犯罪者」と酷評された前半生。シカゴ大学やロックフェラー大学設立などの慈善事業に励んだ後半生です。

ロックフェラーの前半の人生に強い影響を与えたのは「ビッグ・ビル」と呼ばれた父親です。農夫に7.5%の利息をつけて50ドルを貸した息子を母親は叱りましたが、父親は「いいじゃないか。この国で一番大切なのはマネーなんだから」と賞賛しました。まだ学生のロックフェラーにこう言い続けています。

「1日も早くビジネスをやれ。人生はマネー、マネー、マネーだ」

これがロックフェラーの信条となります。

16歳で高校を中退したロックフェラーは今で言う商社の新人簿記係として採用されますが、やがて「天与の商才」を発揮するようになり、英国で飢饉が発生するという情報をもとに小麦やコーン、ハムなどを買い占めることで会社に大きな利益をもたらします。しかし、社長に昇給を断られたことで会社を退社します。ロックフェラーは20 歳の頃に年長のモーリス・クラークと商事会社を設立、農産物や石油で最初の成功を収めますが、事業の拡大をめぐって慎重派のクラークと対立し、会社を大金を出して買い取っています。「彼らと別れたその日こそ、私の成功の始まりだった」と振り返っています。

ロックフェラーは石油精製に突き進み、1870年にスタンダード石油を設立、以後、凄まじい快進撃を開始します。

ここがポイント
1日でも早くスタートを切れ。時には人と別れることも成功要因の1つ。

「バーンズ&ノーブル・ドット・コムが、優れたオンライン小売業であるために必要な能力を買収で手に入れるか、築き上げるか、あるいは習得するまでに、アマゾン・ドット・コムが世界一流のブランド名を確立できるか」

「アマゾン・ドット・コム」
ジェフ・ベゾス (アマゾン創業者)

アマゾンの創業者ジェフ・ベゾスが創業期から追い求めたのは「速く大きくなる」ことです。かつては創業したばかりの企業であれば、時間をかけて足元を固め、少しずつ成長していくことを良しとしていましたが、インターネットという急速に拡大する市場でビジネスを行い勝ち抜くためには、とにかく「速く大きくなる」ことが必要だというのがべゾスの考え方でした。

理由は後から来る参入者を圧倒するためでした。1997年、アマゾンの成功を見た全米一の書店「バーンズ&ノーブル」がインターネットを通じた書籍販売への参入を表明します。アマゾンがサービスを開始して約2年後のことです。バーンズ&ノーブルは、AOLと独占契約を交わし、アマゾンと同様の「100万タイトルを超える書籍データベース」「迅速な配送」「30%割引」などで対抗しようとしますが、べゾスは同社の成功には時間がかかると見て、アマゾンの成長を加速させます。

インターネット市場ではシェアや大きさがものを言います。べゾスは「バーンズ&ノーブルがノウハウを確立するのが先か、アマゾンの成長が先か」と考え、利益度外視で積極的な投資を続けます。リアル書店で2位の10倍になるのは大変ですが、ネット上であれば他社より優れたサービスを提供すれば、「いいね」という口コミがまたたく間に広がり、爆発的にユーザーを増やすことができます。

「今の利益」を追いすぎると、「将来の利益」を失うことになります。べゾスは「今の利益」を犠牲にしてでも未来への投資を行うことで急速な成長を実現、アマゾンを巨大企業へと成長させることに成功したのです。他社の先を行き、速く大きくなることこそがインターネット時代の圧倒的な勝利をもたらすのです。

ここがポイント
「他社の先を行け、急速に大きくなれ」がネット時代の勝利の鉄則。

「発明・創意・工夫の中で一番大切なのが時間で、いくら良い発明、発見をしても、百万分の一秒遅れたら、発明でも、発見でもない」

「本田宗一郎からの手紙」
本田宗一郎 (ホンダ創業者)

2013年6月に発売された「週刊現代」の「全時代で最も金持ちなのは誰かランキング」で第4位に輝いたのがホンダの創業者・本田宗一郎です。

静岡県に生まれた本田は幼い頃から当時珍しかった自動車の後をついて走ったり、飛行機の曲芸飛行を見るために大人の自転車に三角乗りをして町に出かけるほどエンジンが好きな少年でした。高等小学校を卒業して東京・湯島の自動車修理工場に徒弟奉公して、自動車の修理技術を身につけたのち、アート商会浜松支店を設立、自動車修理業で成功します。しかし、それには飽き足らずメーカーを志し、戦後、本田技術研究所を創業、自転車に小型エンジンを乗せた、通称「バタバタ」でまたも成功を収めます。

その後、二輪車で世界のトップメーカーとなり、四輪車に進出。アメリカのマスキー法に合格した低公害エンジン「CVCC」の開発により四輪メーカーとしての地位を確立します。数々の特許を持ち、大ヒット製品をいくつも世に送り出した本田が好んだ言葉に「6日のあやめ、10日の菊」があります。あやめは端午の節句の5日、菊は重陽の節句の9日に用意してこそ意味がありますが、1日遅れてしまえば意味がありません。

本田は発明や発見も同じだと考えていました。こう話しています。

「せっかく良い技術を出しても、時間というタイミングがずれれば技術はタダと同じである。発明・創意・工夫の中で一番大切なのが時間で、いくら良い発明、発見をしても、百万分の1秒遅れたら、発明でも、発見でもない」

何もできない人に限って、「もう少し時間があれば考えつくんだけどなあ」と言い訳をしますが、それではただの負け犬になってしまいます。「時間」の大切さ、「スピード」の大切さ、「タイミング」の大切さを知る者だけが成功者となるのです。

ここがポイント
発明・創意・工夫の中で一番大切なのが時間。わずかの遅れが命取りになる。

「最初からそんな甘えたスケジュールにすべきではありません。そんなことをしたら、無駄に時間を多く使うに決まってますから」

「イーロン・マスク」
イーロン・マスク (スペースX創業者、テスラモーターズCEO)

イーロン・マスクが初めて起業したのは24歳の時です。その7年後の31歳の時にスペースXを創業して、6年後に初めてのロケットの打ち上げを成功させ、41歳の時には民間企業では不可能と言われた国際宇宙ステーションとのドッキングに成功しています。

そしてもう1つの会社であるテスラには33歳の時に出資して、その6年後にはアメリカの自動車会社としてはフォード以来の株式公開を実現しています。もちろんそこに至るまでにはたくさんの失敗や危機があったわけですが、それでもいずれも「国家レベルの事業」と言われるロケット開発や自動車開発で、これほどのスピードで成果を上げるというのは驚くほかありません。

これほど短期で結果を出すマスクには、スピードへの強いこだわりがあります。社員が立てた月間や週間の予定に対し、「一日単位、一時間単位、分単位に落とし込め」とさらなるスピードアップを求めますし、電気自動車「モデル3」の開発に際しては同業他社が4~5年かけるところをわずか2年半で完成させるよう指示をしています。理由はこうです。

「最初からそんな甘えたスケジュールにすべきではありません。そんなことをしたら、無駄に時間を多く使うに決まってますから」

通常、スケジュールは自分たちの経験を基に少し余裕をもって立てるものです。それでも予期せぬことが起こって遅れるわけですが、マスクは「無茶に無茶を重ねてやっとできるかどうか」というスケジュールを口にします。そのため混乱や延期もつきものですが、マスクの場合、「スケジュールが楽観的すぎる」と批判されたとしても、最終的には「必ず結果を出す」ところに強みがあります。その積み重ねがマスクに対する信頼となり、世界一の資産家へと押し上げることになったのです。

ここがポイント
スケジュールは無茶苦茶でも「言ったことは必ず実行する」が圧倒的評価につながる。

著者:桑原晃弥

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