埼玉の大手販売店が経営破綻、全国でケータイショップが消える!

(写真はイメージ)

ケータイショップが「消える」時代が近づいている。10月13日、携帯ショップを運営するトーツー(埼玉県上尾市)が特別清算の開始決定を受けて経営破綻した。同社は1994年に創業し、主に埼玉県内で携帯電話ショップや携帯電話会社(キャリア)の正規代理店を展開していた。負債総額は17億円の見通しという。

ドコモは3割、700店舗の「ドコモショップ」を閉店へ

これに先立つ9月27日には負債総額は約1億円と小さいが、携帯電話販売代理店のニーズワン(熊本市)が破産手続きの開始決定を受けている。両社とも競争激化に伴う売り上げの減少が経営破綻の理由だが、ケータイショップを取り巻く環境は悪化の一途をたどっている。

携帯最大手のNTTドコモは、2023年3月期に「ドコモショップ」の約100店舗を閉店する。最終的には全国に約2300店舗あるドコモショップのうち、3割程度の約700店舗を閉店する方針だ。ドコモショップのうち同社直営店は30店舗にすぎず、大半はトーツーやニーズワンのような別会社が運営する販売代理店だ。

ドコモが3割の店舗を閉める理由は、代理店の維持コストを削減するため。ドコモが2022年3月期に代理店へ支払った販売関連費用は3266億円に上り、3割の閉店で年間1000億円ものコスト削減につながるという。

2020年11月にドコモをTOB(株式公開買い付け)で完全子会社化したNTT<9432>の意向が強く働いたと見られる。一方、ドコモと競合するau(KDDI)<9433>やソフトバンク<9434>、楽天グループ<4755>の楽天モバイルは店舗網を維持あるいは拡大している。しかし、いずれは各社とも店舗数が縮小に転じるだろう。

国内携帯電話市場は、ほぼ飽和状態になっている。少子化に伴う人口減少で、契約数はほぼ頭打ちに。それにもかかわらず各社で純増が続いているが、これはIoTなどの通信モジュール回線の契約増によるもの。こうしたモジュール回線のほとんどは法人契約。法人営業・技術担当者の派遣とネットで完結するため、ショップを必要としない。


ショップを利用するのは「儲からない客」だけ

ドコモの格安大容量データ通信サービス「ahamo」の申し込みや手続きは原則ウェブで、顧客がドコモショップを訪れて店員にサポートしてもらう場合は3300円の追加料金がかかる。つまりキャリアにとって、店舗にやって来る個人ユーザーは「コスト高」なのだ。

個人ユーザーでも現役世代や若者はショップで長時間待たされるより、場所や時間を問わず申し込みや変更が可能なネット手続きを選ぶ傾向がある。

ショップを必要とするのはネットに不慣れで、店員による対面での説明や契約、初期設定などのサポートが必要な高齢者だ。通話が中心で、利益に結びつく高額のデータ通信の利用が少ない「儲からない顧客」の高齢者のために、高いコストをかけてショップを多店舗展開するメリットは小さくなっている。

従来の携帯電話やスマートフォンでは必須だったSIMカードも、ネット上で回線開通を含む全ての手続きが完結するeSIMへの移行が進んでいる。日本でも人気の「iPhone14シリーズ」の米国版ではSIMカードスロットが廃止され、eSIM専用端末に。そうなると、ますますショップは必要なくなる。

携帯電話ショップも生き残りのために動き出している。業界最大手のティーガイア<3738>は2020年8月に富士通パーソナルズの携帯電話販売事業を286億円で買収。業界2位のコネクシオ<9422>は2021年1月にケーズホールディングス<8282>の携帯販売子会社ケーズソリューションシステムズのドコモショップ事業を譲受している。「冬の時代」を迎え、携帯ショップ各社がM&Aによる規模拡大で生き残りを図る動きが加速しそうだ。

文:M&A Online編集部

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