議員の“先生”呼び撤廃…呼び方変更で関係・距離感に変化はあるのか

TOKYO MX(地上波9ch)朝の報道・情報生番組「堀潤モーニングFLAG」(毎週月~金曜7:00~)。「モニフラZ議会」では、大阪府議会が決定した「議員への先生呼び撤廃」にちなみ、呼び方を変えることでどんな変化があるのか、適切な上下関係には何が必要か、Z世代の論客が議論しました。

◆議員の"先生”呼びは、現代社会からするとズレている!?

大阪府議会は議会運営委員会で、議員を"先生”と呼ぶのをやめることを決定。これは「上下関係を生みやすい」、「勘違いを助長する」などの指摘を受け、議長らが提案していました。

この決定に関し、株式会社ゲムトレ代表の小幡和輝さんは「(議員が)自分たちから変えていくのはいいこと」と評価。

政治プラットフォーム「PoliPoli」代表の伊藤和真さんは「一般論として、政治行政と国民の距離が近いことは大事で、"先生”となると若干距離が生まれてしまうことがある。そういう意味では、いい流れだと思う」とポジティブに捉えつつ、一方で「僕は("先生”呼びをする)周りの人が偉い人たちを偉くさせていると思う」と周囲にも責任があると指摘します。

そして、それは議員に限らず経営者などにも言えることで、「いい意味で尊敬や敬意を表していると思うが、それがどんどん加速している」と懸念し、最終的には「議会運営者、行政の方々が(議員を)先生と呼ばなくなっても、(議員を先生と)呼ぶ人は呼ぶ気がする」と話します。

議員のことを"先生”と呼ぶようになった起源は、明治時代という説があります。当時、書生と言われる現在の秘書の役割の人は住み込みで議員の世話をしており、議員はその代わりに政治を教え、その関係から書生は議員を"先生”と呼び、それがきっかけになったのではと言われています。

広辞苑で「先生」を引いてみると、「先に生まれた人」、「自分が師事する人」、「学校の教師」、「医師や弁護士など指導的な立場にある人」と示され、さらに「他人を、したしみ、またはからかって呼ぶ」という使い方も。なお、元三鷹市議で特定行政書士の高井章博さんは「有権者の代表で議員には上下関係はない」、そして「議員が先生と呼ばれることで市民感覚が欠如するのでは」と指摘しています。

政治家と接することの多い伊藤さんは、議員を先生と呼ぶことに違和感を覚えるようで「今の感覚からすると、若干ズレている気がする」と自身の見解を示します。

キャスターの堀潤は、「先生と言った瞬間に力関係が決まる」とし、「いい面もあれば、悪い面もあるが、英語圏などではみんなファーストネームで呼び合い、その辺りは全然違う」と海外と比較。

大阪府議会の決定に関し、平和教育を研究する東京大学3年生の庭田杏珠さんは、「それまで(「先生」と呼ぶことに)モヤモヤしていた人も、決まりがあるとスッキリするところがあると思う」と肯定的に捉えている様子。

◆呼び方変更で距離感に変化はあるのか

適切な上下関係を保つべく、上司をどのように呼んでいるのか、街頭の声を聞いてみると「さん付け。上下関係というより絶対服従ではないが、(上司は)先に会社に入ったから知っていることも多いし、学ぶことも多いと思うので」(21歳・会社員 男性)、「プライベートならいいが、仕事だと関係性とかも違う。役職とか距離感とかちゃんとしていたほうがいい」(21歳・会社員 女性)、「ある先輩とだけ仲がいいとそれはそれで空気が悪くなってしまいそうなので、全員が部長のことは部長と呼んだほうが楽」(18歳・学生 女性)などさまざまな意見が。

街頭の声を受けて、堀は「コミュニティや組織などの、いわゆる秩序をいかに作っていくのかという話だと思う」と組織論へと展開し、「上位下達のほうがコントロールもしやすいし、わかりやすさもある。良い面でいうと指示・命令系統が整っているほうが、誰が責任者なのかもわかる」とメリットを語る一方で、「いい回答もあった。上下関係はあるけど絶対服従じゃない。関係性じゃなくて、そこにある力関係を利用した何かでないことが重要なのかな」と思いを巡らせます。

伊藤さんは議論を重ねるなかで、この問題の難しさを再確認し、「逆に見えてこなくなった。単純な問題じゃない」と熟考。というのも、議員側はむしろ先生と呼ばれることを敬遠しており、「政治家が(自分のことを)『先生と呼べ』と言うのを聞いたことがない」と伊藤さん。「難しい問題だが、言葉はすごく大事なものであり、これは結論が出しにくい」と悩ましい様子。

呼び方を変えることで既存のイメージを払拭する動きは他にもあり、例えば病院では「患者さま」から「患者さん」に。これは過剰なお客様意識の助長を防ごうという狙いです。そして、テレビ局でも「AD(アシスタントディレクター)」を「YD(ヤングディレクター)」や「SD(サブディレクター)」に。さらに、企業でも風通しの良さをアップさせるべく、役職ではなく「さん付け」で呼んでいこうとする動きもあるようです。

大阪府議会は、仕組みとして先生呼びを撤廃しましたが、庭田さんは理想として「自然と内部でこういうふうに呼び方の変化が生まれ、それがプラスの方向に働いていけば」と希望。

小幡さんは、自身の会社内ではかなり言葉に気を遣っていると言い、「お客さん」を「お客さま」と呼ばず、子どものことも「お子さま」ではなく「お子さん」。保護者のことも「保護者さま」とは呼ばず、「そこは重要な僕らの文化」と話します。

◆適切な上下関係を築くために…Z世代の提言とは?

最後にZ議会を代表し、小幡さんが適切な上下関係に必要なことを提言。それは「"とりあえず”の言葉を使わない」。

小幡さん自身、言葉はしっかりと意識を持った上で使っていて、子どもの呼び方ひとつとっても「子どもたちとの距離をしっかりと作りたいから"お子さま”と呼ばない」と強調。議員を「先生」と呼ぶことに関しても、みんなが呼んでいるからそう呼ぶ風潮を危惧し、「とりあえず使っている言葉が多いんじゃないか。言葉をもう少し意識して使っていくことが大事」と主張します。

庭田さんは「自分の発する言葉に責任を持つ、"さん”と"先生”で(意味合いが)違ってくることを意識することは重要だなと思った」と感想を口にしました。

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<番組概要>
番組名:堀潤モーニングFLAG
放送日時:毎週月~金曜 7:00~8:00 「エムキャス」でも同時配信
キャスター:堀潤(ジャーナリスト)、田中陽南(TOKYO MX)
番組Webサイト:https://s.mxtv.jp/variety/morning_flag/
番組Twitter:@morning_flag

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