福岡市議がライバル候補になりすましビラ配布 「批判目的」の行動はどこまで許される?

福岡市議が同じ選挙区のライバル候補になりすまし、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)との関係を想起させる内容のビラを配ったというニュースがありました。ライバル候補と旧統一教会の関係を批判しようとしたと思われますが、他人になりすましてビラを配るのは罪に問われる恐れのある行為です。実際、その市議は私文書偽造容疑で事情聴取を受けた後に所属政党を離党、最終的に議員を辞職することになるという報道もあります。

街頭演説などで他候補を批判することは珍しくありませんが、そもそも批判を目的とする行動はどこまで許され、何をしたらいけないのでしょうか。今回は『適正な批判』のラインについて調べてみました。

誹謗中傷、虚偽情報はNG

まず前提として、事実に基づいて批判することは許されています。例えば、他の候補者が公表している政策を「実現可能性が低い」などと批判することは、事実をもとにしているので問題ありません。注意すべきは、虚偽の情報を流したり、批判が行き過ぎて悪口になってしまうことです。

自身の身分や相手の情報などを偽ることは刑法で禁じられているものが多く、選挙運動や政治活動に関係なく常日頃からやってはいけない行為です。例えば、前述の福岡市議が事情聴取を受けた容疑である「私文書偽造罪」も刑法犯です。

また、虚偽の内容で名誉を傷つけることを禁じた「名誉毀損罪」、人を侮辱することを禁じた「侮辱罪」なども刑法で規定されており、悪質な誹謗中傷は刑事罰に処されうるということを肝に銘じておきましょう。なお、名誉毀損は事実を言っても適用される可能性がある罪ですが、相手が議員など公職の候補者である場合は真実であることを証明できれば適用されません。

当選させない目的で候補者または候補者になろうとする人に関する虚偽の事実を公にする、または事実をゆがめて公にする「虚偽事項公表罪」は公職選挙法で禁止されている行為ですが、刑法と同様に刑事罰が適用されてしまいます。

事実に基づいた批判は許されていますが、何らかの「ウソ」があった時点で適正な批判とは認められず、罪に問われることになるので注意しましょう。なお、禁錮以上の刑に処されている間は、選挙権も被選挙権も持つことができません。

「落選運動」は許されている?

批判を目的とする行動の一つに、ある候補者を当選させないために行う「落選運動」というものがあります。公職選挙法にはところどころに「当選を得しめない目的」という表記があり、落選運動は想定されているといえます。誹謗中傷などを行うのはもちろんダメですが、事実に基づいた批判であれば、特定の候補者を落選させる運動は禁止されていません。

ただ、落選運動が「誰かを落選させるため」だけであれば選挙運動にはあたらないといわれますが、「誰かを落選させ、かわりに誰かを当選させるため」という目的になると、選挙運動とみなされます。そうなると、事前運動禁止などの規定に触れたり、選挙期間中の活動は選挙運動と同じルールが適用されることになるので注意が必要です。

また、落選させることだけが目的であっても、選挙期間中に落選運動のウェブサイトなどに文書図画を掲載する場合は、メールアドレスの表示義務が定められています。ただ、投票日当日にやってはいけないというようなルールは規定されていません。

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