北村諒主演 舞台『青の炎』開幕 ささやかな家族の平和を望んだその先の孤独、哀しい結末。

北村諒主演の舞台『青の炎』、原作は貴志祐介による小説、映画化、コミカライズ化もされている作品。こくみん共済coopホール/スペース・ゼロにて10月28日より開幕、11月6日まで。なお、配信も決定しており、こちらは11月3日の昼夜公演。

ゲネプロ前に簡単な挨拶。
北村諒「原作を知ってる方にも知らない方にも楽しんでいただける、作品の空気感を大事に作って下さった。小説ファンにすごく楽しんでいただける、自信を持ってお届けできる。役者として挑ませていただいてる、この先もそうですし、役者人生を変える作品、パワーを持っている舞台です」
飯窪春菜「ファンなので、すごく嬉しい、映画では先輩の松浦亜弥さんが演じてました。プレッシャーですが、私らしい福原紀子を演じます。今後の人生で、この作品がまた映画化、舞台化されるかもしれませんが、これが初めてで最後と思って」
田中涼星「7人8脚で臨んでいます。スタッフ・キャストみんな一丸となって作っています。観てる間は思考し続けていると思います」
松永有紗「すごくシンプルで7人で、少ないキャストですが、シンプルなセットだからこそ。みんなでセット動かして、ずっと緊張感が続く作品、『青の炎』の世界観をお届けできるように。また囲み舞台なので、いろんな楽しみ方ができます」
田中良子「小説の風景、音、匂いが沸き立つような作りになっています。北村さんにどんなバトンを渡していくのか、一瞬も気を抜かずに」
村田洋二郎「この作品をやるにあたって、僕の親友がずっと『やりたい』と言ってました。すごく嬉しいです。観にきていただき、『面白いな』と夢に描いてくださるように…この囲み舞台、慣れていない、北村諒も我々もずっといます。北村諒がいるので絶対に成功する!(北村諒、照れる)」
荒木健太朗「昔、読んだことがありまして。7人でやるって聞いて『え?どうやってやるの』と。我々でこれを作っていく、役者の生命力と熱量で見せたいと演出家に聞かされて。緊迫した空気がピンと張ってると思っていますが、櫛森秀一の生き様、カーテンコールはどうなるのか、楽しみ。お客様たちとこの空気をどう作っていくかです」

質疑応答で「自分ががんばったと思うポイントを1つ挙げてほしい」と質問が出た。しばし悩み、北村諒は「セリフを覚えること」とコメント、「秀一くんはそうですよね」と共演者から。北村諒は続けて「想像の500倍ぐらいセリフが多くて…演じる中で大事なのは、共演する皆さんから影響を受けたり、いじめられながら(笑)、シンプルに“秀一を生きる”ことだと感じました」と語った。

物語は主人公・秀一(北村諒)のモノローグで始まる。映像で空、照明で風景を見せる、明るく眩しい季節感。舞台上にはキャスト全員がいる。その言葉をキャストが次々に言うことで、空気感に厚みが増してくる。そして一転して、学校の風景、日常、皆わいわい、先生が教室に入ってきて授業。なんと言うこともないが、秀一は上の空、観客は秀一の家庭の事情を知る。

どうにもならない閉塞感、母・友子(田中良子)と妹・遥香(松永有紗)を思う気持ち、胸が痛むが、彼を助けられるものは誰もいない。舞台では心理描写をどう描くか、派手なアクションがあるわけでもない。そこはモノローグや芝居のコンビネーションでわかりやすく見せる。秀一は最初はまともな方法で解決しようとする。だが、弁護士に相談するもうまくいかないし、警察は動くはずがない。

無理矢理に住み着いた曾根隆司(村田洋二郎)、その経緯、曾根は暴力を振るい、金を無心、働かない、母と妹と共に怯えて暮らす毎日。殺意が湧いてくるのは無理もない。だが、殺人を犯せば、母や妹が困るのは目に見えている。そこで秀一は完全犯罪を計画する、それは決して超えてはならない一線。

推理小説ではないので、犯行の手口は、観客には丸わかり。秀一が殺人を綿密に計画、実行、その彼の心の変化、実行してからは不安な雲が彼の心に立ち込める。そして石岡拓也(田中涼星)にバレて強請られる。犯罪・殺人、やってはならないこと、彼にとっては悲壮な決断、母と妹を守るために。福原紀子(飯窪春菜)は秀一の変化に気づいていた。彼のために警察に嘘をつく、偽証罪に問われるというのに。
囲まれた舞台、7人の俳優は常に舞台上にいてセットを動かし、そしてことの成り行きを見守る傍観者だったり。そして観客もまた、ことの成り行きを見守る立場、座る場所によって景色も違う。原作を読んだことのある観客や映画版を見たことがあるなら、結末も展開もわかっていることだろう。

それでもキリキリしながら観てしまう。タイトルの『青の炎』、赤い炎は温度は最も低く約1500度、その次が黄色、約3500度、白は約6500度、青は、なんと約10000度。この10000度の炎が秀一の心の中で燃え上がる。その炎に様々なものが焼き尽くされる。シンプルな舞台セットだからこそ雄弁に語れる、俳優の演技がクローズアップされる、演劇だからこその手法。秀一の心の動きを北村諒が丁寧に演じる。紀子が秀一を思う気持ち、後半はその熱い想いが迸る。妹の遥香、無邪気で兄想い、そしてラスト近く、自分の出生がわかり、複雑な想いを滲ませる。キャラクター一人一人の性根と想いがしっかりと伝わる。典型的なヒール役である曾根隆司、なぜ離婚した妻の元に転がり込んで居座っていたのかもわかってくるのだが、その理由は切ない。ささやかな家族の平和を望んだだけの主人公が犯したその代償、哀しい結末、孤独、気持ち。彼の戦いの先にあるものは…。
公演は11月6日までだが、配信は11月3日の昼夜公演。劇場に行かれないファンはこちらで。

あらすじ
秀一は湘南の高校に通う17歳。女手一つで家計を担う母と素直で明るい妹の三人暮らし。その平和な生活を乱す闖入者がいた。警察も法律も及ばず話し合いも成立しない相手を秀一は自ら殺害することを決意する。
公演概要
タイトル:舞台「青の炎」
原作:貴志祐介『青の炎』(角川文庫刊)
日程・会場: 2022年10月28日(金)~11月6日(日) こくみん共済coopホール/スペース・ゼロ
脚本:月森 葵
演出:加古臨王
キャスト
櫛森秀一:北村 諒/福原紀子:飯窪春菜/石岡拓也:田中涼星/櫛森遥香:松永有紗/櫛森友子:田中良子
曾根隆司:村田洋二郎/山本英司:荒木健太朗
主催・企画:舞台「青の炎」製作委員会
制作:Office ENDLESS
提携:こくみん共済coopホール/スペース・ゼロ
問合:info@officeendless.com

公式サイト:https://officeendless.com/sp/aonohonoo_stage/

Ⓒ舞台「青の炎」製作委員会

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