中国で拘束経験ある艾未未氏、中国語る「地球人の1/6が住むも実際は1人しかいない驚異の専制国家」

埼玉大学で学生からの質問に答える艾未未氏(左)=26日、さいたま市桜区

 中国を代表する現代芸術家の艾未未(アイ・ウェイウェイ)氏(65)が26日、埼玉県さいたま市桜区の埼玉大学で大学生らと対話した。人権への思いをアートに込め、中国当局から拘束されたこともある艾氏は「中国には地球の人口の約6分の1の人が住むが、実際は秦朝時代から中国はずっと『1人』しかいない、驚くべき専制国家。高速で物を運べる機械のようなものだが、逆に言えばとても危険な機械だ」と示唆に富んだ言葉を残した。艾氏によると、日本で学生との対話を行うのは初めて。

 艾氏は、世界的な業績を上げた芸術家に贈られる高松宮殿下記念世界文化賞を受賞し、来日した。艾氏とは30年来の友人という埼玉大学の牧陽一教授が働きかけ「講演は嫌だが、学生との対話なら」と授業が実現したという。同大学の学生ら約150人が参加した。対話では、日本の文化の好きなところを聞かれ「中国で42年、欧米で約20年生活したが、日本は中国とも欧米とも違う。強制されたわけではないのに、日本人の姿勢によって独特の文化を保護してきたのは驚くべきことだ」と印象を語った。

 教員志望の学生の「美術で個性を教えるにはどうすればいいか」との質問には「勉強して個性を発揮する場合と、もともと個性がある人が芸術で発揮する場合がある」と回答。さらに「最初は勉強しようとしたが、すぐに合わないと分かり、制服を脱いだ。鏡の前で服を脱いでみればそこに自分自身がいる。ベルリンの大学で教えた時も学生にそう言ったが、ほとんどの学生は実行しなかったようだ」とエピソードを紹介し、「今日は埼玉大学が寒いので服は脱がない」と笑いを誘った。

 人権のために闘い続けているが、「中国の状況を変えることができると思うか」と聞かれ「芸術は薬と同じ。芸術への敬意がなければ、その薬を飲んでも意味がないし、体調が悪くなってから薬を飲んでももう遅いということもある」と話した。

 授業に参加した教養学部2年の小島里奈さん(20)は「艾さんが『現代社会には情報があふれてしまっている』と話すのを聞き、世界の第一線のアーティストも社会のどうにもならなさを感じていると知った。自分も芸術が好きで小説を書くが、気持ちが楽になった」と感想を述べた。

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