長崎県がスマート農業研修会 データ活用でリスク管理、畜産などの先進事例学ぶ

スマート農業について学んだ研修会=諫早市、諫早文化会館

 ロボットや人工知能(AI)、情報通信技術(ICT)を活用し、農作業の省力・効率化、所得向上につなげる「スマート農業」の県内普及を目的に、長崎県は26日、諫早市宇都町の諫早文化会館を本会場に研修会を開いた。基調講演や分科会を通じ、生産者やJA、行政などの関係者が、データに基づき栽培技術・経営の最適化を図るデータ駆動型農業の施設園芸や畜産分野での先進事例を学んだ。
 県は昨年3月、県スマート農業推進方針を策定。離島や中山間地が多い本県の特性に合ったスマート農業を推進している。導入した生産者の中には、▽イチゴの10アール当たり収量が全国平均の3倍以上▽繁殖牛の分娩(ぶんべん)間隔が県平均を45日短縮-などの事例が出ているという。
 研修会は同文化会館を主会場に五島、壱岐、対馬の各会場をオンラインで結び、計約250人が参加。高知県農業イノベーション推進課の小笠原香・データ駆動型農業推進担当チーフが基調講演した。
 耕地面積率が全国46位とハンディを抱える高知はスマート農業の先進県。今年9月には県内の出荷や栽培環境に関するデータをオンラインでリアルタイムで集約、共有するクラウド型データベースシステム「SAWACHI(サワチ)」の本格運用が始まり、収集したデータを営農指導に活用するなどの取り組みが進む。
 小笠原氏は、「現在のAIなどの技術では熟練農家の経験と勘を超えるのは困難」と指摘。その上で、「誰もが(熟練農家のような)神様になれるわけではなく、後世への継承も難しい。(スマート農業は)失敗しないためのリスク管理であり、指導する側も(効率的なデータ管理で)営農指導に時間を使えるようになる」とメリットを強調し、SAWACHIの利用農家を増やしていきたいとした。


© 株式会社長崎新聞社