人は一生でうんこ何トン出す?『ウンチク/うんこが地球を救う』は映画史上初の“ウンコメンタリー”

『ウンチク/うんこが地球を救う』©️TRICKY HALE FILMS

「誰でもするんだから、親しみがあるでしょ」「地球はクソだらけ」というパワーワードが連発される映画『ウンチク/うんこが地球を救う』は、大量のうんこが劇場のスクリーンいっぱいに映し出される衝撃的なドキュメンタリーだ。

語り口はカジュアルだがイロモノ映画ではなく、忌み嫌われる排泄物=うんこの可能性を深掘りしていく、いたって真面目な作品である。

知られざるうんこの世界

実家がド田舎だった人なんかは、じいちゃんばあちゃんに「うんこ? 田んぼでしてこい!」なんて言われた経験があるのではないだろうか。しかし、ダイレクトうんこが田畑には刺激が強すぎるのと同じように、需要と供給のバランスが崩れると、排泄物は人間社会を汚染してしまう。

1人の人間が生涯で排泄するうんこの量は12.2トンに及ぶという。まったくピンとこない。ではアフリカゾウは? 猫は? そんな素朴な疑問から、トイレの起源や歴史、つまり高度な下水技術を持っていたローマ帝国時代からその後の暗黒時代、そして現代の土地汚染問題や最新のうんこ活用技術まで、フランクに教えてくれるのがこのドキュメンタリーである。

真面目ぶったトーンではなく、あくまでカジュアルに。「うんこ」と聞いただけで爆笑してしまうキッズたちへのインタビューをちょいちょい差し込んだり、日本語翻訳の際に発生する“ウン”絡みのワードもしっかり拾っていく抜け目のなさに、思わず唸ってしまう。

うんこを活用すれば未来が拓ける

私たちが日々当たり前のように流しているトイレの水は、どこに行くのか? メキシコからアメリカ国境に流れ込む汚水問題などは、適切な処理を怠った糞尿が人間社会を脅かすことを教えてくれる。朝から晩まで街がうんこ臭かったら、たまったもんじゃない。汚染された排泄環境は生活水にも影響を及ぼし、かつては多くの人間が病にかかり命を落としていたのだ。

“糞便移植”という初耳すぎるワードや、宇宙空間や戦地での排泄問題などのトリビアも興味深い。「うんこが地球を救う」かどうかは今後次第とは思うが、途上国での下水処理改善や人口増加に伴う汚染水処理技術の向上といった諸問題に対し、本作で紹介される意外なうんこ再利用法の数々が一縷の希望を与えてくれるのは確かだろう。

あまりにも大量の(動物の)うんこがスクリーンに大映しになるので苦笑してしまうが、鑑賞後は自宅アパートの水洗トイレにすら感謝したくなるはずだ。

『ウンチク/うんこが地球を救う』は2022年10月28日(金)よりヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、新宿シネマカリテほか全国公開

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