専有走行で流れはインパルに? 仁義なき“チームタイトル争い”プレビュー/SF第9・10戦鈴鹿

 前戦もてぎに続き、今回も1ウイーク2レース制で開催される全日本スーパーフォーミュラ選手権の第9戦・第10戦。毎年ドライバータイトル争いに注目が集まる最終大会だが、今回は同時にチームタイトルも決定する週末となり、こちらも最後まで目が離せない“王座決定戦”が繰り広げられようとしている。

 注目の週末を占う上で重要な要素のひとつとなる10月28日金曜日の専有走行では、チームタイトルを争う2チームの明暗が分かれる結果となった。

 第8戦もてぎが終了した時点で、野尻智紀と笹原右京を擁するTEAM MUGENは、第2戦で野尻、第6戦で笹原が優勝を飾り、合計で132ポイントを獲得、ランキング首位につけている。ドライバータイトルの方では、野尻が2連覇をかけて今週末の2レースに臨むのだが、TEAM MUGENとしても、長年達成できなかったチームタイトル獲得に、あと一歩というところまで近づいている。

 その対抗馬となるのが、前回の第8戦もてぎでワン・ツー・フィニッシュを飾ったcarenex TEAM IMPUL。これで113ポイントとなり、TEAM MUGENとの差は19ポイント。両チームとも自力での逆転チャンピオンが可能な圏内におり、インパルは2年連続でのチームタイトル獲得を狙う。

 この他にも、ランキング3位のKONDO RACINGが91ポイント、4位のDOCOMO TEAM DANDELION RACINGが70ポイントで、可能性としては限られているが逆転でのチームタイトルの可能性を残している。

■“今季一番の手応え”をつかんだインパル関口

 同じ鈴鹿サーキットを舞台に行われた今季第3戦では野尻がポールポジションを獲得するなど、TEAM MUGENが優勢な雰囲気があったが、最終大会を前にした専有走行では、5番手に平川亮、6番手に関口雄飛と、carenex TEAM IMPUL勢が好調な走りをみせた。

「自分自身は、鈴鹿との相性はあまり良くないんですけど、今回は珍しく手応えがあります」と関口。明日の第9戦予選に向けては、さらに伸び代があると語った。

「感触は今年の中で一番良いです。最後、時間がなくてセッティングの変更ができなかったんですけど、何を直せば良いかは分かっています。ただ、Q1がA組で、TCRの予選のあとなので、そこがどこまで影響するかは、ちょっと恐いところではあります。明日の予選では今日の順位(6番手)より上は取れるのかなと思います」

 2年連続チームタイトル獲得に向けては「チームタイトルのポイントとかを詳しく考えても、それで速くなるわけではないので……とにかく自分のやるべきことに集中していきたいです。(IMPULの)ふたりが実力を出し切れたら、結果はついてくるし、チャンピオンは獲れると思っているので、深く考えずにいきたいです」と、いつも通り、目の前のレースに集中したいという関口らしさが垣間見えた。

 ただ、前回のもてぎでワン・ツー・フィニッシュを飾ったことで、チームの士気も上がっていることは確かなようで「(ワン・ツーは)チームとしても十数年ぶりとのことで、なかなかできることではないです。それはチームスタッフ全員が誇りに思っていると思いますし、あの時は普通の優勝の時と比べても、倍以上の喜びがありました。今週もワンツーを獲れるほど、甘い世界ではないですけど、勢いを継続していきたいと思っています」と関口。

「もちろん、2年連続でのチームチャンピオンは獲りたいです。そのために何をやるかといったら、シンプルに自分のベストを尽くすだけです」と今週末に向けた抱負を語っていた。

 今シーズン、carenex TEAM IMPULの快進撃を影で支えている星野一樹監督代行が、ニッサン Z GT4の詳細が発表されるSEMAショーに参加する関係で、スーパーフォーミュラは欠席となる。それでも専有走行で2台が上位につけることができ、チームの雰囲気も明るく、普段通りという印象を受けた。

2022スーパーフォーミュラ第9戦&第10戦鈴鹿 関口雄飛(carenex TEAM IMPUL)

■「良かった要素もある」と11番手のMUGEN笹原

 一方、今シーズンは各レースで力強い走りをみせているTEAM MUGENだが、最終大会を前にした走行では2台そろって上位に食い込めず、笹原は11番手、2連覇に王手をかけている野尻は16番手という結果に終わった。

「そもそも今日はMUGENが2台そろって沈んでしまっているので、チームタイトルということに執着するよりは、自分たちのパフォーマンスを最大限引き出すことが課題です」と笹原は言う。

「この週末のスタンスとしては、まずは2台がちゃんと高いポテンシャルを出せるようにしないといけないです。そこが出せれば、あとはレースをどう戦っていくかというのはありますけど、(仕上がりが)良ければ(結果は)ついてくるし、ダメなら逆転されるだろうというだけだと思っています」

「チームタイトルは2台で頑張るものだと思っています。そういう意味で、今日は順位で見たら全然ダメだったで、IMPULの2台が相対的に上の方にいましたけど……気にしたところでどうなるわけでもないので、まずは自分たちの良いところ悪いところを理解して、明日に繋げたいです」

「今日は良かった要素もあれば、悪かった要素もあるので、まずは明日『良かったね』と言えるような状態に向けて、みんなと話し合っていきたいです」

 明日の第9戦予選になれば、路面のコンディションも変わってくるため、勢力図が少し変わる部分も出てくるかもしれないが、金曜日の走行を終えたパドックの雰囲気を見ると、少しcarenex TEAM IMPUL側に流れが傾き始めているのでは……という感じだった。

 ちなみに、同一チームでドライバーとチームの両タイトル獲得というのは、2017年の石浦宏明とP.MU CERUMO/INGINGまで遡ることになる。それ以来となる快挙達成となるかに注目が集まる。一方、チームタイトルを2年連続で同一チームが獲得したというケースは2016年・2017年のP.MU CERUMO/INGINGが最後。どちらのチームが王座を手にしても、ひとつの快挙となる。

 チームタイトルの方は間違いなく日曜日の最終戦で決着がつくことになる。果たして、どちらのチームが笑うことになるのか。最後まで目が離せない。

2022スーパーフォーミュラ第9戦&第10戦鈴鹿 笹原右京(TEAM MUGEN)

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