執刀医の手となり指となり 「“ダヴィンチ” にお任せ!」 ロボット手術の現場に密着

病院の手術室。これからがん患者の手術が始まります。

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執刀医は、この方ですが、患者からちょっと離れたところに座っています。

カメラの画像を見ながらコントローラーを動かして…。

これが、今、注目のロボット手術です。ロボットの名は、「ダヴィンチ」。

執刀医
「本当に患者さんのおなかの中に自分が入ったような感覚になるんですね。患者さんにとっては負担が少ない手術になると」

きょうのテーマは、「執刀医の手となり指となり 手術は “ダヴィンチ” にお任せ!」。その手術現場に密着しました。

先端医療、ロボット手術を紹介します。「ダヴィンチ」は、アメリカ製で1台、2~3億円だそうです。

広島県によりますと、現在、国産ロボットも含め6つの病院で8台導入されています。この2年余りの間に3台増えています。

台数が増えた理由は、保険適用される手術が増えていることです。一番多いのが、がん。10年前、前立腺がんだけだったのが、4年前から増え始め、現在、19種類以上に増えました。

ダヴィンチを使った手術は、どのようなものなのか? メリットはどこにあるのか? ダヴィンチを2台保有している広島市の安佐市民病院で手術現場に密着しました。

この日、手術を受けるのは、前立腺がんの患者です。ちょうどロボットアームに滅菌したカバーをかけたり、手術に使う器具をそろえたりしていました。

ロボット手術は、患者の腹部に開けた小さな穴に3本のロボットアームと内視鏡を挿入し、医師が内視鏡の映像を見ながら行う手術です。

こちらは、ロボットアームの先端に取り付けて、患部を切ったり縫ったりする器具です。鉗子(かんし)といいます。人間の手首や指と同じように操作できるといいます。

内視鏡カメラは、2つのカメラで3D映像を映し出します。

執刀医 三田耕司 医師
「前立腺がんに対してロボット支援下、前立腺、全摘除術をします」

手術を受けたのは、70代の男性です。手術にあたるのは、執刀医、助手の医師・看護師、控えの医師の6人です。

まず、患者の腹部に5つの小さな穴を開けます。ここが、腹部を切る開腹手術と大きく違う点です。

この小さな穴から3Dカメラや鉗子などを入れ、二酸化炭素を注入して腹部をふくらませます。

中の様子を観察しやすくするためですが、二酸化炭素の気圧によって傷口からの出血量を少なくする効果もあります。出血量は、開腹手術の10分の1以下ということです。

三田耕司 医師
「出血量が少ないので、非常に正確な手術が組み立てられる。患者さんにとっては負担が少ない手術になると」

手術開始です。

執刀する三田医師は、操縦席に座り、3Dカメラの映像を見ながら手元のコントローラーで鉗子を動かします。

前立腺にたどり着くまで左の鉗子で途中の臓器をひっぱり、右の鉗子で膜をはがします。

カメラの位置を変えるには、左のフットスイッチを踏みます。

出血すると、右のスイッチを踏んで電気を流して組織を焼いて止血します。出血が多くなりそうなときは縫合します。

控え医師 郷力昭宏 医師
「車の運転とけっこう似たような感じですね。最初はどうしても時間がかかったり、手間取りますけど、慣れてくると、マニュアルの車のクラッチを踏んで運転するみたいな感じにはなっています」

三田耕司 医師
「はい。サンキュー」

三田医師が声をかけているのは、ロボットアームのそばにいる助手や看護師です。鉗子を交換したり、手術に異変がないか、モニターをチェックしたりします。

一番大きな役割は、執刀医が操作する左右の鉗子とは別に、まん中の吸引鉗子を操作することです。尿などが漏れ出たときに吸引して手術する個所をよく見えるようにします。

控え医師 郷力昭宏 医師
「これから、いよいよ尿道を切って前立腺を取ります」

前立腺がんは早期でも全部、取ります。摘出した前立腺は袋に回収します。このあと、ぼうこうと尿道を縫合し、リンパ節への転移がないか、チェックしました。

助手
「終わります」

三田耕司 医師
「ダヴィンチ、終了です。」

「スムーズにふつう通りできました。やるべきことは、全部やったと思います」

所要時間はおよそ1時間20分。感覚的には、これまでの手術の半分だということです。

三田医師は、特に高齢者の手術の場合、ダヴィンチ手術はメリットがあるといいます。

三田耕司 医師
「手術を受けたいという希望があってもですね、4時間も5時間もかかる手術っていうのは、生命的に危険があるじゃないですか。それもやっぱりロボットを使うことで、できるようになるんですね」

安佐市民病院がダヴィンチを導入したのは、6年前です。これまでに手術したがんは11種類に増えました。手術件数も1年目の92件から去年は2倍余りに増え、2台態勢になったことしはおよそ3倍に増える見通しです。

三田耕司 医師
「将来的にはロボット手術っていうのが主流になる。どの科もですね、当たり前の手術になるだろうと思うんですけど」

― ダヴィンチ導入によるメリットは多いようですが、非常に高額な機械なので手術件数が多くないと、病院は経営的に難しいそうです。手術をする人の養成も課題となります。講習を受けてライセンスを持たないと、助手もできないんです。とはいえ、患者の体の負担も少なくてすむ手術ですから、今後の普及を期待したいところです。

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