主演・中村倫也×演出・河原雅彦 ミュージカル『ルードヴィヒ~Beethoven The Piano』開幕 静寂の中から音楽が溢れ出る

本作は2018年末~2019年にかけて、韓国で初演されたミュージカル。日本でもおなじみとなった『SMOKE』『インタビュー』『BLUE RAIN』の作・演出家 チュ・ジョンファの新作として注目された作品。世界中誰もが知る天才音楽家であり、聴力を失ってなお音楽への情熱を注ぎ込んだ悲運の人・ベートーベンの生涯を、彼を取り巻く人物たちとの愛と影、喪失そして運命を、彼が綴った音楽とオリジナル楽曲で。いよいよ初日、配信は東京千秋楽と大千穐楽。
中村倫也が青年期のルードヴィヒを務め、河原雅彦が、日本版の上演台本・演出を手掛ける。また、訳詞を森雪之丞が務める。

シンプルなセット、ピアニスト(木暮真一郎)が登場、演奏を始め、奥から修道女(木下晴香)が入ってくる。「申し訳ございません」とピアニスト、「いいえ」と笑顔で返す修道女。ピアニストは手紙を託されており、修道女に渡す。ベートーベンの楽曲、手紙を読む。そして年老いたルードヴィヒ(福士雅治)がゆっくりと登場。そこへ幼いルードヴィヒ(高畑遼大(Wキャスト))が登場。
時間軸が一気に遡る。1774年頃、父からその才能をあてにされ、虐待に近い音楽のスパルタ教育を受けていた。怒鳴り散らす父、「僕はモーツァルトじゃない」と叫ぶ幼いルードヴィヒ。このスパルタ教育はルードヴィヒに深い影を落とす。
キャッチーな楽曲、複数でルードヴィヒを演じるシーンもあり、重層的、福士誠治が複数役を演じる、時には父親に、時には老ルードヴィヒであったり。この切り替えが素早い。そして中村倫也は青年ルードヴィヒを演じる。生演奏、ピアノ、ヴァイオリン、チェロ。そして世界中の人が知っていること、ルードヴィヒは聴力を失う。20代後半頃より持病の難聴(原因については諸説あり、鉛中毒説が通説)が徐々に悪化。28歳の頃には最高度難聴者となる。聴覚を失う、死にも等しい絶望感、激しい慟哭。

1802年には『ハイリゲンシュタットの遺書』をしたためて自殺も考えていた。だが、自分の人生を受け入れていく姿、自暴自棄だったルートヴィヒが変わっていく瞬間は圧巻、「静かに黙って聴いていろ」と。
基本、フィクションだが、実際のエピソードも交えているので、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンがリアルに観客の胸に迫ってくる。よく知られている交響曲、『運命』『英雄』『田園』、舞台上に五線譜が光り、まさに音楽が降り注ぐ、といった場面は美しい。
彼の甥であるカール(福士雅治)のエピソード、彼に対して自分の父親にされたことを行う、スパルタ教育。だが、カールは自分に才能がないことを自覚していた。争う2人、激しくも物悲しい。
なかなかに憎い構成、楽曲、深いテーマ、細かいエピソードをさりげなく散りばめて、人間・ルートヴィヒを見せる。また、ルートヴィヒは頻繁にワインを飲んでいるが、銘柄はリーズナブルなトカイワインが好きだったというエピソードに基づいている。

中村倫也、大人ルートヴィヒを演じるが、激しい性格のルートヴィヒ、これでもか、というほどの熱演、また、歌唱シーンもしっかりと歌い上げ、見応えのある生き生きとしたルートヴィヒ像を創造、木下晴香は持ち前の歌唱力で切々と歌い上げるところは聞き惚れてしまうし、福士誠治が七変化。また、難易度の高い楽曲もかなりあり、このミュージカルのレベルの高さを見せつける。子役はゲネプロでは高畑遼大だったが『ピピン』や『オリバー!』に出演歴がある、もはやベテランな貫禄。

ミュージカルならではのカタルシス、120分、ノンストップだが、もう瞬きできないくらいの作品、公演は東京は11月13日まで。その後、大阪、金沢、仙台を回る。

ゲネプロの前に簡単な会見が行われた。登壇したのは、中村倫也、木下晴香、福士誠治、上演台本・演出の河原雅彦。

初日前の気持ちということで中村倫也は「まだ現実感がないです」と言い、木下晴香も「お稽古も、今までお仕事をしてきた中で一番あっという間に感じました。毎日目の前のことに必死に走っていた」と語る。
福士雅治も「確かにあっという間でしたね。とても密な稽古をやらせていただいて。まず初日開けて、お客様にどう受け取ってもらえるか」とコメント。
中村倫也と福士誠治は初共演。
中村倫也は「人見知り度合いが似ています、ほとんど、人見知りしないです。遠慮することもなく、気を配りすぎることもなく」と福士雅治に。すかさず、「すぐにツッコんでくれる」と福士雅治が返す。
稽古場での雰囲気については中村倫也はは「今回座長らしいことをあんまりしていないんですよね。みんな真面目で、放っておいてもやるタイプの役者が多い…自分の役は結構やることが多いし、疲れる役なので、毎日毎日それを一生懸命やっていただけ。まだ何も誰にもおごってないです」とコメント。福士雅治は「ちゃんと背中見てますよ」とすかさず。木下晴香は中村倫也については「佇まい…ものすごく視野が広い方。いろんな角度から作品のことを見ていらっしゃるんだなと…もちろん先輩で、尊敬していますし、『すごいな』と思うんですけど、それで終わらない。凄みがあって悔しくて『あそこまで行きたい』というところまで引っ張り上げてくださるような…すごく新しい感覚でした」と語った。
河原雅彦は「素敵な作品になっていると思います」とコメント。中村倫也は「(ルートヴィヒは)音楽が大好きで夢を持って、夢敗れかけて、まだ、夢を持って…情熱だったり…日々、感じながらやっています…少しでも(お客様の心に)刺さるように頑張ろうと思っています」と言い福士雅治は「魂を注いできました。まだまだですが、もっとエネルギーをお客様に届けられたら。音楽の強さを感じているので魂をもって演じたい」と意気込む。木下晴香は「マリーという女性、そうせざるを得なかった、演じる中で変化していく、諦めるということを知らない」と役を分析。
そして公演PR。
河原雅彦「3世代のルードヴィヒ、エンターテインメントとして楽しんでもらえたら」
福士誠治「多少の覚悟を持って見にきてくださると…エネルギーをもらえると思います。『観るぞ』と思って!観に来てくださったら嬉しいです」
木下晴香「エネルギーをお届けしたい」
中村倫也「15曲あります、素敵な音楽が多い、ちょっと異常な人しか出てこない…気がついてたら終わってた。ぜひ、『観るぞ』と思って来て欲しいです」

STORY
残り少ない人生を前に書かれたベートーベンの1通の手紙。
そして、その手紙が一人の女性の元へ届く。
聴力を失い絶望の中、青年ルードヴィヒが死と向き合っていたまさにその夜。
吹きすさぶ嵐の音と共に見知らぬ女性マリーが幼い少年ウォルターを連れて現れる。
マリーは全てが終わったと思っていた彼に、また別の世界の扉を開けて去っていく。
新しい世界で、新たな出会いに向き合おうとするルードヴィヒ。
しかしこの全ては、また新たな悲劇の始まりになるが・・・。

MUSICAL『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』概要
タイトル
MUSICAL『ルードヴィヒ ~Beethoven The Piano~』
ORIGINAL PRODUCTION BY ORCHARD MUSICAL COMPANY
MUSIC BY SOO HYUN HUH
BOOK BY JUNG HWA CHOO

出演
中村倫也
木下晴香
木暮真一郎
高畑遼大・大廣アンナ(Wキャスト)
福士誠治

上演台本・演出: 河原雅彦
訳詞:森 雪之丞
日程・会場:
東京公演
2022年10月29日(土)〜11月13日(日) 東京芸術劇場プレイハウス
大阪公演
11月16日(水) 〜11月21日(月) 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
金沢公演
11月25日(金)~11月26日(土) 北國新聞赤羽ホール
仙台公演
11月29日(火)~11月30日(水) 電力ホール

公式HP:https://musical-ludwig.jp/
撮影クレジット ©MUSICAL「ルードヴィヒ~Beethoven The Piano~」製作委員会/岩田えり

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