長崎市恐竜博物館オープン1年 来場25万人迫る勢い 野母崎の振興に貢献

オープンから1年を迎えた市恐竜博物館。常設の全身骨格レプリカや企画展開催などで来館者を楽しませている=長崎市野母町

 長崎市恐竜博物館(野母町)はオープンから29日で1年を迎えた。長崎で発掘された恐竜の化石や全身骨格レプリカなど約180点を展示し、開館以降の累計来館者数は約25万人(9月末時点)に迫り、想定を上回るペース。教育・研究機関としてだけでなく、過疎化が進む野母崎地区の振興にも貢献しているようだ。

■研究機能注目

 開館1周年を控えた21日午後。平日にもかかわらず館内には家族連れや団体客の姿があった。兵庫県芦屋市から家族4人で訪れた会社員、山内健太郎さん(43)は「娘が恐竜が好きなので来た。展示物が良かった」と声を弾ませた。
 恐竜専門の博物館としては熊本、福井両県に次ぎ国内3カ所目の同館。恐竜だけでなく、長崎市周辺を中心とする地球史や生命の歴史を学ぶことができる。
 野母崎地区では2004年に草食恐竜の化石が発見されて以降、多様な化石が見つかっている。14年、ティラノサウルス科大型種の化石を国内で初めて発掘。古代、長崎半島は「恐竜王国」だったのではないかとロマンが広がり、同館整備の機運が高まった。
 今月21日には、3例目となる同科大型種の化石発見を公表。これらの貴重な資料も展示している。化石を調査研究する様子を「オープンラボ」として公開。岩石の中に化石があるかどうか確認する最新のエックス線機器や、3Dプリンターを備える同館は研究拠点としても注目され、九州をはじめとする各方面から調査依頼が寄せられている。

■修学旅行誘致

 同館によると、累計来館者数は約25万人。当初開館5年後の26年に年間12万人が目標だったが、高江晃館長は「あくまでもオープニング効果」と冷静に分析する。来館者のうち修学旅行生は9月末までに計39団体2343人(月平均3、4件)。平日の来館対策として修学旅行誘致を重要視している。
 同館や一帯の広場を含む「長崎のもざき恐竜パーク」は延べ約40万人が利用した。新型コロナ禍の中での開館だったが、同パークの安達考紀所長は「人が多く集まる市街地の観光施設ではなく郊外の施設であり、屋外の遊具もプラスに働いた。パークを訪れた人々が周辺の飲食店も訪れ、まちの振興に貢献している」と評価する。
 同町で洋菓子店を営む江﨑貴之さん(42)は「家族連れが増えた」と開館の効果を実感。「海沿いの景色も野母崎の魅力。今後、全国旅行支援の開始や入国者の水際対策緩和で観光客がさらに増えてほしい」と期待した。

■立地がネック

 長崎市中心部から乗用車で約40分、バスで約1時間の立地がネック。高江館長は「あえて行こうと思えるような魅力を継続的につくりだす必要がある」と“常に新鮮味がある博物館”を理想に掲げる。恐竜を中心とする古生物学などの生涯学習拠点施設として、また地域振興の核として、その役割を長期的に果たしていけるか。引き続き注目される。


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