ロシアの『汚い爆弾』主張はメチャクチャ!「原発攻撃を正当化するプロパガンダ」とグレンコ氏が非難

ロシアによるウクライナ侵攻でプーチン大統領が発した「汚い爆弾」という表現がクローズアップされている。ロシア側は「ウクライナが『汚い爆弾』を使う可能性がある」と主張しているのだが、ウクライナ側は反発。緊張感が高まっている。ジャーナリストの深月ユリア氏がウクライナ出身の国際政治学者で日本在住のアンドリー・グレンコ氏に話を聞いた。

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10月26日、ロシアのプーチン大統領は旧ソ連の独立国家共同体(CIS)諸国の会談にオンライン参加し、「ウクライナは放射性物質を撒き散らす『汚い爆弾』を使った挑発行為を計画している」と警告した。これに対し、ウクライナのゼレンスキー大統領は「汚い爆弾」に関して、その使用を否定し、「ロシアが『汚い爆弾』を爆発させ、ウクライナが使用したことにする偽旗(にせはた)作戦」だと主張し、国際原子力機関(IAEA)に専門家を派遣して調査するよう要請した。

ロシア外務省は同24日、ツイッター上に「ウクライナの2つの組織がいわゆる『汚い爆弾』の製造を命じられたとの情報を入手した」と投稿し、「汚い爆弾」とする画像を添付した。しかし、この投稿に対して、26日、スロベニア政府は「ロシア外務省が使用した画像は2010年のスロベニアの放射性廃棄物管理機構のものだ」「12年前にスロベニアの機関が放射性廃棄物に関する説明を行った際に使用したもの」と反論。これに対するロシア側の反応はない。

「汚い爆弾」はロシアのプロパガンダなのだろうか。ウクライナの国際政治学者のアンドリー・グレンコ氏に筆者がインタビューしたところ、「ロシアの安全保障会議は『ウクライナはカルト国家で、非サタン化が必要だ』と言い出しました。ロシアは戦況が不利になるほど、めちゃくちゃなプロパガンダを言います」

「『汚い爆弾』のプロパガンダの目的は、ウクライナの原発を攻撃する事を正当化するためです。『ウクライナは汚い爆弾の材料を原発の廃棄物から取るので、爆弾を作らせないために原発をたたく』みたいな理屈で。南ウクライナ原発、リウネ原発、フメリニツキー原発が狙われるでしょう」「エネルギー施設を攻撃する目的はウクライナ軍に勝てないから、民間人を屈服させるというのもあります。ウクライナはいま寒い冬ですが、停電させ、暗くて寒い中で、多くの凍死者を出すという酷いテロ行為です」

ロイター通信によると、25日にウクライナの国営原子力企業エネルゴアトムは「南部ザポリージャ原子力発電所でロシア軍が1週間ほど前からウクライナ人職員やIAEA職員の立ち入りを禁じ、『秘密の工事』を始めている」とSNSで発表したそうだ。今回も「汚い爆弾」は追い詰められた「プーチンの戦争」を何とか維持するためのプロパガンダなのか。

(ジャーナリスト・深月ユリア)

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