まるで巨大な白い棺! ハロウィンにちなんだ氷山の画像をNASAが紹介

【▲ 2018年9月に国際宇宙ステーション(ISS)から撮影された氷山「B-15T」(Credit: NASA)】

宇宙から撮影されたこちらの画像。空一面に浮かぶ雲の下には、なにやら巨大な白い物体が……。その輪郭は西洋の棺のような人工物を思わせます。

実はこの物体、2018年9月23日に国際宇宙ステーション(ISS)から撮影された巨大な氷山「B-15T」です。細長い直線的な輪郭をしていることと、雲の隙間からところどころが覗いていることで、たまたま棺のような形に見えているというわけです。注意深く観察すると、輪郭も完全に直線ではないことがわかります。

B-15Tは、もともと「B-15」と呼ばれていた非常に巨大な氷山の一部でした。2000年3月に南極のロス棚氷から分離したB-15は、大きさが長さ295km・幅37kmで、棚氷を離れてからさらに複数の氷山に分裂しました。そのうちの1つがB-15Tで、2015年4月時点での大きさは長さ52km・幅13kmとされています。

次に掲載した画像は、アメリカ航空宇宙局(NASA)が運用している地球観測衛星「Aqua」の「中分解能撮像分光放射計(MODIS)」を使って2017年10月に取得されました。中央付近に写っているB-15Tは、棺に似ている……と言われればそう見えなくもない輪郭をしています。ちなみに、右上には同じB-15から分離した別の氷山「B-15Z」も写っています。

【▲ 2017年10月に地球観測衛星「Aqua」が取得したB-15T氷山とその周辺(Credit: NASA Earth Observatory, Lauren Dauphin and Jeff Schmaltz)】

NASAによれば、冒頭の画像が撮影された当時のB-15Tは南極海を離れて大西洋に入っており、一般的に南極海よりも温かい南緯54度付近の海域まで北上していました。9月の南半球は冬の終わりを迎える時期にあたり、周辺に氷が見当たらないことは海水温が氷点を上回っていたことを意味しているといいます。ロス棚氷を(B-15の一部として)分離してから氷山が消滅する海域に至った18年半に渡るB-15Tの漂流を、NASAは「氷山墓地への旅」と表現しています。

冒頭の画像は2018年10月26日にNASAが公開したもので、NASAゴダード宇宙飛行センターがハロウィンにちなんで2022年10月27日付で改めて紹介しています。この時期のNASA関連アカウントはハロウィンにちなんだ天体画像などを例年紹介しており、アカウント名も「Ghoul-dard(元はGoddard)」「BOOniverse(元はUniverse)」「SOFI-AAAAHHH!(元はSOFIA)」など、一時的にハロウィン風に変更されています。

【▲ B-15T氷山の画像を紹介するNASAゴダード宇宙飛行センターのツイート】

【▲ キャッツアイ星雲(NGC 6543)を紹介するNASA科学ミッション本部のツイート】

【▲ ゴースト星雲(IC 63)を紹介する成層圏赤外線天文台SOFIAのツイート】

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Source

  • Image Credit: NASA, NASA Earth Observatory, Lauren Dauphin and Jeff Schmaltz
  • NASA Earth Observatory \- A Place Where Icebergs Go to Die
  • eoPortal \- Landsat-8 - 2017 to 2013

文/松村武宏

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