フェラーリ、50年ぶりのル・マン・プロトワークスカー『499P』を正式発表。2023年WECに投入

 2022年10月29日、フェラーリは2023年のWEC世界耐久選手権で予定しているトップレベルのスポーツカーレースへの復帰に先立ち、新しいハイブリッドパワートレインを搭載したル・マン・ハイパーカー『フェラーリ499P』を正式発表した。

 イタリアのメーカーは29日(土)夜、イモラ・サーキットで開催されたイベント『ファイナル・モンディアリ』の中で、このフェラーリ499Pを公開。LMH規定の新型プロトタイプカーはゲストの間を縫ってキャットウォークを進み、ステージ上のターンテーブルでお披露目された。

■3リットルV6ターボ+ハイブリッドを搭載

 マラネロで自社開発されたフェラーリのLMHカーは、半世紀ぶりにル・マン24時間レースのトップカテゴリーに投入されるワークスカーだ。このマシンにはリヤミッドに置かれた3.0リットルV6ターボエンジンと、200kWを発生するフロントアクスルMGUが搭載され、WECのBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)で定められた速度域では四輪駆動が可能となる。

 この他、パワートレインの構成要素には900VバッテリーとXトラック製の7速トランスミッションも含まれている。

 車名の“499”は、3000cc近いエンジンの排気量をシリンダー数で割ったもの。末尾に付く“P”はフェラーリのスポーツプロトタイプに伝統的に与えられている呼称だ。

 既報のとおり、フェラーリ・ワークスチームは来季のWEC/ル・マン24時間ハイパーカークラスで計2台の499Pを走らせるが、現在のところドライバーラインアップは明らかにされていない。

「499Pは、WECシリーズでの完全な勝利を目指し、我々が戻ってくることを示すものだ」と語るのは、フェラーリのエグゼクティブ・チェアマンを務めるジョン・エルカン氏。

「私たちがこのプロジェクトにコミットすることを決めたとき、我々は革新と開発の道を歩き始めた。これはレーストラックを、最先端のテクノロジー・ソリューションの境界を押し広げる理想的な場所であると考えている、私たちの伝統に忠実なものだ。そのソリューションはやがて、私たちのロードカーに引き継がれることだろう」

「我々は謙虚にこのチャレンジに入るが、ル・マン24時間レースで20以上の世界耐久選手権タイトルと9回の総合優勝を獲得してきた歴史を意識している」

フェラーリ499Pは50号車と51号車の2台体制で2023年のWECに参戦する

■フェラーリの歴史に敬意を表したいと考えた

 フェラーリはこの日、初めて499Pのレース用カラーリングも披露した。レッドのベースカラーにイエローのラインは差し込んだリバリーは、1972年の世界スポーツカー選手権で優勝した『フェラーリ312PB』のカラースキームと似ている。このクルマは、同社がマラネロで製造した最後のスポーツプロトタイプ・ワークスカーでもある。

 LMHメーカーのトヨタ、プジョー、グリッケンハウスに加え、LMDh勢のポルシェ、キャデラックなどが集う2023年のWECに参戦する2台のフェラーリ499Pは、50号車と51号車として登場する予定だ。

 前者はフェラーリが最後にスポーツカーレースのトップカテゴリーに参戦してから50周年となることをちなんだもの。後者は近年のLMGTEプロクラスや主要なGTレースに公式参戦しているフェラーリのナンバーだ。

 フェラーリのスポーツカー・レーシングディレクターで、このクルマの開発を主導したアントネッロ・コレッタは、「499Pは夢を実現させたようなクルマだ」と語っている。

「この2年間、プロジェクトに懸命に取り組んできたすべての人々にとって、今日は重要な瞬間だ」

「私たちは、成功と称号で構成された過去について、大小を問わず多くの言及とともに、私たちの歴史に敬意を表したいと考えた。一方で、私たちは将来を見据え、世界耐久選手権へのコミットメントのマニフェストを作成した」

「499Pは、あらゆる意味でフェラーリらしいプロトタイプであり、ついに我々のクライアントや多くのフェラーリファンの皆さんにお見せできることに、大きな興奮を覚えている」

 同社のテクニカルディレクター、フェルディナンド・カニーゾは、フェラーリGTトラックカー開発の責任者として、「チーム全体と私自身にとって、これは本当にスリリングな瞬間だ」と付け加えた。

「私たちは大きな責任を負っていることを自覚している。我々は真新しく、あらゆる面で特に複雑なクルマを設計し、エンジニアリングしてきた。この前例のない挑戦は、社内のあらゆる部門と技術パートナーを巻き込み、包括的ですべてを共有するコラボレーションへと皆を駆り立てたんだ」

 来年100周年を迎えるル・マン24時間と、同大会をカレンダーに組み込むWECへの投入が予定されている『フェラーリ499P』は規定上、北米のIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権GTPクラスへの参加資格を有する。しかしイタリアのメーカーは、現時点ではWECでのみプログラムを実施するとしている。

フェラーリが発表した新型ル・マン・ハイパーカー『フェラーリ499P』

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