体操女子エース宮田笙子選手、信頼厚い恩師と世界挑む 福井県立鯖江高校で田野辺満コーチの指導受け3年

体操世界選手権に出場する宮田選手(右)と、帯同する田野辺コーチ=10月13日、福井県の鯖江高校丹南キャンパス

 体操女子日本代表のエース、宮田笙子選手(鯖江スクール、福井県立鯖江高校3年)のそばには、いつも厳しくも優しいコーチの姿がある。同スクールの田野辺満さん(鯖江高校女子体操部監督)。3年前から福井で指導を受けてきた宮田選手は決意していた。「世界選手権に連れていく」。その大舞台が日本時間10月30日未明、英国のリバプールで開幕。「一番信頼できる先生」(宮田選手)は今回もともにフロアに立っている。

 宮田選手は中学3年の秋、京都の体操クラブから鯖江スクールに練習環境を移した。その時から指導に当たるのが田野辺コーチ。中学時代、体操関係者の注目を集めていた宮田選手に対し「パワーはあるが荒削り。課題がたくさんある選手」との印象だったという。

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 その言葉通り、すぐに結果は出なかった。「気持ちにムラがあり、練習にまじめに向き合っていなかった」と田野辺コーチ。同時に「その分大きな伸びしろがある」と確信した。日本代表選手を育てた経験などを基に、精神面や生活面を指導。練習への向き合い方、コンディションの調整など「トップ選手になるために足りないところを徹底的に伝えた」。

 対する宮田選手は「なんやねんってむかつく時もある」。そう言いながらも「思ったことを言ってくれる(性格が)まっすぐな先生」と徐々に信頼を寄せていく。「鯖江に来て一番感謝している先生。自分が鯖江高にいる間に恩返ししたい」。高校2年の秋にはそう思うようになった。自身の体操ノートに「田野辺先生を世界選手権に連れていく」と記した。代表選考会を兼ねた今年5月のNHK杯個人総合で優勝。コーチに世界選手権への帯同をお願いした。

 その後も全国高校総合体育大会(インターハイ)、全日本シニア選手権といった国内大会を制し、18歳で日の丸を背負うエースに成長した。宮田選手は言う。「あくまで照準は世界選手権。これまでの大会はその過程に過ぎない」。この半年は田野辺コーチと二人三脚で、世界選手権にピークを合わせてきた。「日本の体操界をもっと盛り上げたい。もちろん自分のため、そして支えてくれた人のために頑張る」。集大成を見せる覚悟だ。

 ◇田野辺満さん(たのべ・みつる) 千葉県出身。市立船橋高、順天堂大を経て大和銀体操部(現・コナミスポーツ)に入部。社会人2年目の1993年、ユニバーシアード米国バッファロー大会に出場し男子団体7位。94年の全日本選手権では男子団体優勝、鉄棒で準優勝、個人総合7位。97年に28歳で現役を退き、順天堂大コーチとして、アテネ五輪の体操男子団体金メダルを獲得した冨田洋之らを指導。2005年に鯖江高に赴任し、体操部監督を務める。52歳。

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