犬の首が傾く前庭疾患とは?命に関わる可能性も 獣医師に聞く病気の原因と症状、治療法【ペットドクター相談室】

先月末、首がかたがる病気になりましたが、やっとよくなり食欲もでました。獣医さんに「散歩をやめてください」と言われたのでしていませんが、元気になり、ストレスか吠えてばかりいます。少し気分転換に散歩などをしてもよいのでしょうか(ミックス、るるさんの相談)【お答えします】福井県獣医師会 開業部会 山田動物病院(福井県福井市)藤木恵獣医師

 ◆  ◇  ◆

 首が傾く(斜頸・しゃけい)症状を認める病気は、前庭系(ぜんていけい)と呼ばれる器官の障害で起こります。

前庭系に障害があるときの症状は

 前庭系は、内耳および脳に位置していて、平衡感覚などを調整しています。前庭に異常が生じると、斜頸、旋回、転倒、運動失調などが起こります。また、こういった動物の目を見ると「眼振」と言って、目が左右または上下に揺れ続ける症状が認められます。平衡感覚に異常をきたし、ずっとめまいがしている状態と思われます。そのため嘔吐などの症状もよくみられます。

⇒愛犬の歯磨きいつから?歯周病の原因と予防法

症状どれくらいで治まる?治療方法は

 病変が脳に存在する場合は、重症であったり命に関わったりする可能性がありますが、脳以外の病変の場合は、数日~数週間で症状は治まります。ただし、斜頸は残ってしまうことも多いです。中耳炎や耳道内の腫瘤が原因で生じることもあるので、動物が耳を痒がったり、よく耳を振ったりしていないかも注意点になります。また、原因不明で生じることも多く、これは高齢犬で遭遇するケースが多いです。

 治療は原因によって異なります。高齢犬で多くみられる原因不明の場合は、点滴や吐き気止めなどの支持治療を行って症状が治まるのを待つことになります。原因が治療され(原因不明の場合は支持治療を行い)、症状が治まれば、斜頸が残った状態でもお散歩などを含めた日常生活は問題なく過ごせます。

 相談者様のわんちゃんは、症状が落ち着いているようなのでお散歩などは問題ないと思われますが、原因にもよりますので、かかりつけの先生にご相談されることをお勧めします。

⇒ぐるぐる回り、息ハァハァ…認知症は「本人の意志で止まれない」

© 株式会社福井新聞社