ダウン症児の母、困窮の末に頼った報酬300万円の「強盗のふりするバイト」

京都地裁

 京都市中京区の高級腕時計買い取り販売店で5月、2人組が押し入り腕時計が奪われた事件で、実行犯として強盗の罪に問われた岐阜県多治見市の無職女(45)の判決公判がこのほど、京都地裁であった。村川主和裁判官は、懲役2年8月(求刑懲役5年)を言い渡した。

 判決などによると、仲間と共謀し、5月2日午後3時15分ごろ、中京区烏丸通蛸薬師下ルの高級腕時計買い取り販売店「ビッグムーン京都」に押し入り、従業員に「さがっとれ」などと脅迫した上で、ショーケースをハンマーで壊してロレックスなどの高級腕時計41点(約6900万円相当)を奪った。

 ■「あやしいと思ったが、どうしてもお金が欲しかった」

 白昼の繁華街で起きた強盗事件の実行犯は、SNS(交流サイト)の「闇バイト」を通じて組織されていた。公判で、経済的に困窮した女が安易に応募した結果、犯罪の片棒を担がされ揚げ句に「指示役」から突然連絡を絶たれ、「使い捨て」にされた経緯が明らかになった。

 「あやしいなと思ったが、どうしてもお金が欲しかった。後悔している」。公判で、闇バイトに応募した理由や経緯を問われた女(45)は、か細い声で繰り返した。

 女は重度のダウン症と自閉症を抱える子ども2人を育てていたが、自身も発達障害やうつ病のため就労が難しく、障害年金に頼る暮らし。家賃の滞納などで約150万円の借金を抱えていた。今年4月、一度に高額報酬がもらえる仕事をツイッターで探したところ、「強盗のふりをするバイト」の募集を見つけた。報酬は300万円。怪しいとの認識はあったが「抱えている借金を払ってしまいたかった」という。

 闇バイトに応募後、指示役から、匿名性の高い通信アプリ「テレグラム」を通じて犯行計画の説明を受けた。ショーケースを割るハンマーを準備することや、閉店間際の店を襲うこと、盗品をレンタカーで運搬する役割分担などを取り決めていた。

 当日は別の実行犯の男と2人で店内に押し入り、リュックサックに時計を詰めた後、分かれて逃亡したという女。ところが、運搬役とともに大阪府内のサービスエリアまで盗品を運ぶよう指示された実行犯の男は、報酬を受け取ろうとした際に何者かに襲撃を受け、時計を奪われてしまう。女は指示役に問いただそうとしたが連絡が取れなくなり、報酬も得られなかった。

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