石破茂氏、選択的夫婦別姓やLGBT理解増進法案に前向き「女性の負担減」「人権保障」「多様性」を主張

「保守」とは何か。それは多様性を受け入れる「リベラル」な視点をも内包したスタンスだと、自民党の石破茂元防衛大臣は語る。かつて首相候補としてクローズアップされ、自民党の総裁選にも出馬してきた同氏だが、一般的な保守イメージを覆す発言が注目される。ジャーナリストの深月ユリア氏が石破氏を直撃取材し、選択的夫婦別姓や、超党派の国会議員連盟で合意されたものの自民党内で了承されずに国会提出されなかった「LGBT理解増進法案」などについて話を聞いた。

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さまざまな問題が追及される中、岸田政権が窮地に立たされている。混迷の時代に政府はどうあるべきか。筆者は石破茂議員にインタビューした。

-これまで選択的夫婦別姓やLGBT増進法案など多様性を大事にする政策が可決されなかったことについてどう思いますか?

「LGBTも等しく国民として人権を保障されるべきです。差別的な扱いを受けるようなことがあってはなりません。また夫婦同姓の強制は、結果的にほぼ女性に苗字を変えることを強制することになり、女性の負担が増えているのが現状です。『夫婦の絆を保つため』ということを反対の理由としている人たちがいますが、それは理由にはなっていないでしょう。それより、いかに女性の負担を減らすかが、社会の課題です」

-十分な議論なく「強行採決」や「閣議決定」も増えました。

「政府の決定と異なる意見を持つ方への説明努力が足りないですね。議会は1人でも多くの方に理解していただくための説明の場でもあるのですから。しっかり説明すれば、反対派の方の意見は変えられなくても、納得する方は増えると思います。政府に反対するメディアに出て説明することも必要です。『メディアが悪い』と言いたくなる気持ちは私もよくわかりますが、メディアに批判されるからやめる、放置する、となっては『政治の敗北』だと思います」

-『みんなで議論する』ことは民主主義の最低条件ですが、それがなくなっているように思います。

「人間には本能的に『強いものに従いたい』という心理もありますから、スピード感を持って決めていくことに心地よさを感じる部分は理解できます」

-しかし、そうなると、多様性が受け入れらない政治になり、リベラル派が離れていきますね。

「『リベラル』とは『異なる主張を受け入れられるかの多様性・懐の深さ』だと思いますが、最近の自民党にはリベラルさが少なくなっている傾向がありますね」

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激動する政界はどこに向かうのか。臨時国会が12月10日まで開催予定だが、異なる価値観を排除するのではなく、多様な考え・価値観を大事にする「懐が深い社会」になって欲しい。

(ジャーナリスト・深月ユリア)

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