物価上昇で再建費用が足りなくなる可能性も。火災保険の保険金額、どう設定するべき?

自然災害の多発により、保険料値上げが続く火災保険。大規模災害では国や地方からの助成があるものの、火災保険には根っことなる公的保険がありません。くらしの基盤となる建物や家財に起きた大きな損害は火災保険で備えることが多いでしょう。ですが、火災保険に入っているだけでは安心といえません。自分にとって、適正な補償になっているかご存知でしょうか?


火災保険の補償範囲は?

火災保険の補償範囲は多岐に渡ります。

従来からの補償範囲として「火災、落雷、破裂・爆発に加え、風災、雹災、雪災のいわゆる自然災害」が、火災保険の基本補償として設定されています。
上記以外にもオプションとして、下記のような損害を補償できるような商品もあります。

・水ぬれ-給排水設備の破損やつまりなどによって発生した漏水や放水での損害
・盗難-強盗、窃盗などで建物などが破損、盗難にあったもの自体の損害
・水災-台風、暴風雨、豪雨による洪水・高潮・土砂崩れなどで発生した損害(浸水の深さなどに制限あり)
・破損、汚損等-不測かつ突発的な事故で建物などに生じた損害

火災保険といっても、火災による損害だけが補償範囲ではありません。

近年では、何十年に1回あるかないかの大きな損害が毎年のように発生し、各地に被害をもたらしています。

ハザードマップなどを確認し、水災や土砂崩れのリスクが高いかを確認しプランを決めることも必要ですが、過去のデータ上リスクが低くても、災害が起きないとは断言できません。「今までこんなことはありませんでした」という被災者の声をよく聞きます。せっかく火災保険に加入されるのでしたら、フルカバータイプに加入した方が安心といえます。

保険金額の設定は?

保険金額の設定は該当の建物を評価して決めます。

評価方法は大きく分けると2通りです。

年次別指数法

評価する建物の新築当時の建築価額に建築費倍数(価格変動率)を乗じて、評価額(再調達価額)を計算します。新築当時の建築価額には土地代や庭木、屋外設備の価額は含めません。再調達価額とは、該当の建物と同じ構造、質、用途、規模、能力のものを再度建てるのに必要な金額をいいます。

概観法

新築当時の建築価額がわからない場合、該当の建物の場所、構造・用法を目安にした、新築費単価という数字を使い、延床面積を乗じて、評価額(再調達価額)を計算します。

古い家だから建物に価値がなく、保険金額を高くはかけられないだろうと思っているひとがたくさんいます。自動車保険で考えると、車両保険金額は購入当初から年々下がっていきますから、そう考えるのも無理はありません。

ですが、火災保険は災害にあった時、元通りに再建するための保険です。古くなり価値が下がっていたとしても、現在の物価で元の建物に修復するわけですから、現在の評価額で保険金額を設定しないと意味がないことになります。

新築費単価は保険会社で決められており、地域や構造によって違います。

例えば、木造、延床面積130㎡の青森県での新築費単価は17.0万円/㎡ 評価額は2,210万円です。

同じ延床面積でも、全国で一番高い東京では新築費単価が19.8万円/㎡ 評価額は2,574万円になります。一番安い宮崎では新築費単価が15.9万円/㎡ 評価額は2,067万円ですから、同じ建物でも東京と比べると500万以上の差がでます。物価に加え、損害率によっても違うようです。

災害で大きな損害を負った時の再建費用ですから、きちんとした評価で保険金額を決めることが大切です。

被災後のくらしを想定することも

火災保険見積の際には建物の評価をすることが大切とお話ししました。再建のために評価金額と同額の設定が望ましいのはいうまでもありません。

結婚し子どもができ、家族での暮らしを想定して新築したものの、子どもが巣立ち、それぞれの地でそれぞれの生活を始め、老後は二人のくらしになりそうだというご家庭も地方には多くあります。

このようなくらしで、万一被災した場合、今と同じ建物を建てるかというと、多くのひとは、再建するとしても、かなり規模を小さくしての再建、または、被災した家を処分し、老後は仮住まいで過ごすという選択をされるようです。

今後の方針が決まっているのでしたら、評価額通りの火災保険に加入するのではなく、評価が2,000万円だったとしても半分の1,000万円、または片付けなどの処分費用として500万円だけ火災保険をかける方法もあります。もちろん保険料も安くなりますので、家計の節約にもなります。ライフステージに合わせ、火災保険更新時の保険金額チェックは必要です。

新築時加入の長期火災保険、保険金額は要チェック!

令和4年10月から、火災保険長期契約は5年が最長になってしまいましたが、35年の長期契約ができた時代に加入後、保険金額や補償内容、地震保険や家財保険がついているかいないかノーチェックのひとも多くいます。保険証券が手許にない場合は、住宅ローンを組んだ金融機関や、建築した工務店などに問い合わせて確認するのも一つの方法です。

前の項目で説明したように、火災保険は再建のための保険です。金融機関で加入の場合、被災時のローン返済の意味合いが強く、借入金額で保険金額が設定されている場合があります。当時は適正であっても、物価上昇に追いついておらず、再建できる評価額に不足している可能性がありますので、保険金額の確認が必要です。併せて、家財保険や地震保険が付帯されているか調べてみましょう。加入しているだけでは安心とはいえません。

住宅金融公庫の特約火災保険に加入されている方は、ローン完済に伴い特約火災保険満了のお知らせが届きます。特約火災保険は複数の損害保険会社で分担して引受けているので、見積が欲しいという希望を出せば、満了後の見積りを出してくれます。自動車保険などですでにお付合いのある保険代理店に相談する方法もあります。いずれにしても、無保険の期間ができないよう早めの検討が必要です。

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