新生『SL』はメルセデスAMGの独自開発に。専用設計シャシーにF1直系の“電動ターボ”を搭載

 初代『300 SL』の誕生から70年を迎え、語源である「Super」と「Light」(軽量)の頭文字を取るメルセデス・ベンツの最高峰ロードスター『SL』が新たな時代に突入した。新型『メルセデスAMG SL』はメルセデスAMGによる完全自社開発モデルとして生まれ変わり、SL専用の高剛性プラットフォームによる卓越したダイナミクスと2+2の快適性を両立。そしてF1の技術を採用した新型直列4気筒ターボ“エレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャー”を採用し、10月24日より発売が開始されている。

 300 SLのデザインをオマージュしながらも、ラグジュアリーで快適な空間を実現したという新型『メルセデスAMG SL』は、そのボディシェルにメルセデスAMGが開発したまったく新しい車両アーキテクチャーを採用。軽量なアルミニウム複合シャシーにより最大限の剛性を生み出しつつ、精度の高いドライビングダイナミクスや優れた快適性、最適なパッケージングとスポーティなプロポーションを高い次元で成立させた。

 この新型ロードスターのアルミ製自立構造スペースフレームは、初代と同様にゼロから新規開発されたもので、先代『SL』はもちろん、セグメントを同一にする『AMG GTロードスター』との部品共有なども一切ないという。

 アルミに加えてスチールやマグネシウム、繊維複合材の組み合わせによるボディは、重量を抑えつつ高い剛性を実現。中空の熱間成形高張力スチールによるウインドスクリーンフレームと、リヤシート後方のオートマティックロールバーとともに、横転時に乗員を保護する安全装備となっている。

 そのシェル構造のねじり剛性は先代モデルに比べて18%向上し、横方向の剛性は、もとより高性能な『AMG GTロードスター』に対して50%、前後方向で40%増とするなど、約270kmのホワイトボディはマウント類の負荷導入剛性改善とも併せ、きわめて正確なハンドリングと優れたアジリティをもたらす。

 こうして強固なベースの上で、先代の金属製バリオルーフに代えて電動ソフトトップに回帰したルーフは、約21kgの軽量化と低重心化に貢献。そのスポーツ性を高めると同時に、ピンと貼りつめた外側シェルと精度よく仕上げたルーフライナーの間に防音マットを挟んだ3層構造とし、優れた防音効果を発揮する。

 省スペース軽量型Zフォールドの採用で、収納時のカバーが不要で周囲の面と段差なく収まるソフトトップは、車速60km/hまでであれば走行中でも操作可能で、開閉時間はわずか15秒に。また、新方式のファブリック製軽量コンパートメントにより収納時のトランク容量も拡大され、オープン時でも213Lを確保。トップを閉じればパーティションがスライド上昇して標準仕切り位置よりもトランク容量を拡大し、約240Lの容積となる。

 そして注目の心臓部には、直列4気筒エンジンとして初めて「One man, One engine」の主義に従い、熟練のマイスターが手作業で丹念に組み上げたM139型ユニットを搭載する。

SL専用の高剛性プラットフォームによる卓越したダイナミクスと2+2の快適性を両立する
ソフトトップは、車速60km/hまでであれば走行中でも操作可能で、開閉時間はわずか15秒に。カラーはブラック、グレー、レッドの3色を設定する
全輪の制御やステアリング特性、ESPの追加機能に対してアジリティを強化する介入を行う”AMGダイナミクス”も搭載

■排気圧が上がらない領域でのサポートを担うテクノロジー

 最高出力381PS、最大トルク480Nmを発生するこのエンジンには、厚さ約4cmで 排気側のタービンホイールと吸気側のコンプレッサーホイールの軸に直接一体化された、量産車としては世界初となるエレクトリック・エグゾーストガス・ターボチャージャーを採用。このターボはF1由来の技術となり、現在のメルセデスAMG・ペトロナスF1チームが長年採用して実績を重ねてきたシステムを直接のベースとしている。

 この軸間モーターが電子制御でターボチャージャーの回転軸を直接駆動し、コンプレッサーホイールの回転数を制御。排気圧が上がらない領域でのサポートを担い、アイドリングスピードから全エンジン回転域にわたってレスポンスが大きく改善されると同時に、低回転域のトルクを高める効果をもたらされ、アジリティや発進加速性能の向上につながっている。

 また、アクセルから足を離したりブレーキを踏んだりした場合でもブースト圧を維持することができるため、速やかなレスポンスが途切れることなく得られるという。

 このターボチャージャーは車載の48V電気システムを電源とし、最大17万0000rpmまで動作することで極めて高い空気流量を供給。ターボチャージャーと 電気モーター、それに電子制御ユニットはエンジンの冷却システムに接続されており、つねに最適な温度管理が行われる。

 同時にBSG(ベルトドリブン・スターター・ジェネレーター)も第2世代となり、48V電気システムの中ではマイルドハイブリッドとしても機能。短時間ながら出力を10kW(16PS)高めるブースト機能のほか、セーリングモードや回生ブレーキにより効率を最大限に高める。そのセーリングモードの切り替えやECOスタートストップ機能も48V電源が担い、移行や切り替えがほぼ体感できないほどのシームレスさで行われる。

 その高出力を支える脚元には、きわめて軽量かつ可変ダンピングシステムを搭載した高性能なアルミニウム製ダンパーと軽量コイルスプリングを搭載した新開発のAMG RIDE CONTROLサスペンションを標準装備。フロントではメルセデスAMGの量産車として初めて、5本のリンクをホイールの内側にすべて収めたマルチリンク式を採用する。

 さらに全リンク類とステアリングナックル、ハブキャリアなどを鍛造アルミニウム製としてバネ下重量を削減し、特殊な焼き戻しにより性能を損なうことなく軽量化したコイルスプリングには、シートを接着する方法も採用して1本あたり約0.2kgの軽量化も果たした。

 また、減衰力特性を調整できるAMGの最新世代ダンパーは、プレッシャーリリーフバルブを各ダンパーに2個ずつ搭載し、伸び側と縮み側の減衰力特性を広範囲で相互に独立制御することも可能とした。

 これらの方式や新機能の数々により、快適性を高めながらいちだんとスポーティなドライビングダイナミクスを実現することが可能となった新型『メルセデスAMG SL』は、左右双方のステアリング仕様が用意され、価格は1648万円(税込)となっている。

1990年代のR129型以来となる2+2シートレイアウトが復活。ただし、着座できる乗員の身長は150cmまでとなる
AMGパフォーマンスステアリングに標準装備の”AMGドライブコントロールスイッチ”は、 直感操作と鮮やかなカラー液晶表示を可能に。9速のAMGスピードシフトMCTのアルミ製パドルも備わる
空気抵抗係数=Cd値は0.31にまで低減。車速80km/h以上で展開するスポイラーは5段階で角度を制御する

メルセデスコール:0120-190-610
メルセデス・ベンツ日本ウェブサイト:http://www.mercedes-benz.co.jp

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