藤子不二雄Ⓐさん「お別れの会」 小説家・京極夏彦さんが回想「遊ぶので忙しいんだよ」

「忍者ハットリくん」「ウルトラB」「怪物くん」などで知られ、今年4月に88歳で死去した漫画家・藤子不二雄Ⓐ(本名:安孫子素雄=あびこ・もとお)さんの「お別れの会」が31日、東京・港区のオークラ東京で行われ、関係者が出席した。小説家の京極夏彦さんは、新作への期待を本人に伝え続けた交流を語った。

京極さんは「僕はお酒を飲まないし、ゴルフもしない。他の方々とは違う付き合い方だった。純然な読者と漫画家、あるいは先生は日本推理作家協会の会員でしたので会員同士という関係でした」と語った。酒場やゴルフ場での接点はないが、「お会いするたびに声をかけて下さって、うれしかった。僕は熱心な読者で作品の話をよくしました。そしていつも『新作を描いてください』と、最後にお会いした時もお願いしました」と話した。

SF・ホラー作家の瀬名秀明さんがデビューした際の対談で、藤子不二雄作品に触れた後、「よくオレのことを語ってくれたな、と言ってくださってビックリしました」と親交が深まったという。

最後に言葉を交わしたのはコロナ禍の前。新作への期待に対して「遊ぶので忙しいんだよ」と、茶目っけたっぷりに返されたという。「とってもさみしいですね。藤子・F・不二雄先生の作品も好きでしたが、離れられてからの安孫子作品も毒の濃さが違ってていい。大好きな漫画家の一人でした。作品の魅力は一言では表せませんが、絵の黒さってのは魅力だね」と悼んだ。

「お別れの会」にはちばてつや、永井豪、つのだじろう、高橋留美子、荒木飛呂彦、王貞治、武田鉄矢、伊東四朗ら199人が参加。同日午後6時から8時までは一般読者の来場も受け付けられ、この日合計で1125人が訪れた。トキワ荘の部屋、「笑ゥせぇるすまん」に登場する喪黒福造とBAR魔の巣の再現セットなどの企画展示も同所で行われた。

祭壇にかけられた藤子不二雄Ⓐさんの写真
藤子不二雄Ⓐさん「お別れの会」会場に設置された企画展示=都内

(よろず~ニュース・山本 鋼平)

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