大宮踊や白石踊 無形文化遺産へ ユネスコ評価機関が登録勧告

8月に真庭市蒜山地域で営まれた大宮踊

 国連教育科学文化機関(ユネスコ)の評価機関は、盆踊りなどとして伝承されてきた「大宮踊(おどり)」(真庭市)や「白石踊」(笠岡市)など24都府県41件の民俗芸能「風流(ふりゅう)踊」を無形文化遺産に登録するよう勧告した。文化庁が1日発表した。11月28日から12月3日までモロッコで開かれるユネスコ政府間委員会で、勧告通り登録が正式決定する見通し。

 各地の踊りは人口減少や高齢化による担い手不足が課題となっており、登録が実現すれば、伝統継承の励みとなりそうだ。文化庁も保護の強化や継承支援を手厚くする。

 永岡桂子文部科学相は1日の記者会見で「地域の活力の源として大きな役割を果たしていることが評価された。政府間委員会での登録(決定)に向け、最善を尽くしていきたい」と語った。

 風流踊は華やかな衣装をまとい、太鼓や笛のはやし、歌に合わせて踊るのが共通の特徴。豊作祈願や厄災払い、先祖供養など地域の歴史や風土を反映した祈りが込められている。日本三大盆踊りで、いずれも国の重要無形民俗文化財に指定されている「郡上(ぐじょう)踊」(岐阜)や「西馬音内(にしもない)の盆踊」(秋田)のほか、香川の「綾子踊」、「滝宮の念仏踊」も含まれる。

 文化審議会が2020年2月、「大宮踊」や「白石踊」など23都府県の37件をまとめて一つの遺産とみなし、候補に選定。同年3月に政府がユネスコに登録申請した。21年3月に「対馬の盆踊」(長崎)など4件を追加し、再申請した。

 文化庁は「地域密着型の小規模な行事も多い」として、行事に使う道具の修理への補助など手厚い保護やきめ細かい支援に当たる考え。風流踊を含む各地の民俗芸能についても、担い手確保など継承を後押しする。

 国内の無形文化遺産は現在、歌舞伎や和食など22件ある。風流踊は09年に単独で登録された「チャッキラコ」(神奈川)を拡張し、名称を変える形になるため、登録されても国内件数は22件のまま変わらない。

 風流踊に続く候補として、政府は今年3月、日本酒や焼酎、泡盛などの「伝統的酒造り」の登録をユネスコに申請した。24年秋ごろに登録の可否が審査される予定だ。

 大宮踊 真庭市蒜山地域に伝わり、江戸期には始まっていたとされる。優美な所作の「あおい」、歯切れよい「しっし」、編みがさや手拭いをかぶった集団が躍動する「てんこ」の順に構成され、五穀豊穣(ほうじょう)や子孫繁栄を願うとされる。1997年に国重要無形民俗文化財に指定。

 白石踊 笠岡市の笠岡諸島・白石島で、源平水島合戦(1183年)の死者を弔うために始まったとされる盆踊り。1976年に国の重要無形民俗文化財に指定された。「男」「女」「笠」など13種類の異なる振り付けがあり、一つの音頭で複数の振り付けを同時に踊るのが特徴。

夕闇が迫る白石島の砂浜で披露された白石踊=7月

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