パティスリー・ピアジェ児島本店 〜 伝統と斬新さが融合した児島のかわいいケーキ屋。青いケーキに込められた想い

「青いケーキ」と聞くと、どんなものを想像するでしょうか。

そもそも筆者は青い食べ物を食べたことがありません。

なぜなら青というのは通常、食欲を減退させる色の代表だからです。

しかし、そんな概念を覆すケーキが児島にありました

そのお店の名前は「パティスリー・ピアジェ」(以下、ピアジェ)。

ピアジェでは、旬の素材を活かした四季折々のお菓子を味わうことができます。

また味だけでなく、さまざまなデザインのお菓子はまるで宝石のようで、目で見て楽しむことができました。

この記事では「パティスリー・ピアジェ」の魅力を紹介していきます。

パティスリー・ピアジェとは?

ピアジェ児島本店は、児島430号線沿いのJR児島駅から徒歩約20分のところにあります。

本店以外には倉敷中庄にもう一店舗あります。

ショーケースには、まるで宝石のような美しいケーキがずらりと並んでいました。

店内奥にはイートインコーナーも併設していて、お持ち帰りはもちろんのことその場で食べることもできます。

2022年で32年目になるピアジェは、地元のかたはもちろんのこと遠方からもお客さんが足を運ぶそうです。

ピアジェ本店がある児島は、国産ジーンズの発祥の地でもともと製塩業で栄えた町。

そんな児島の背景をふまえた、THE児島を表現したケーキがありました。

飾ってあるたくさんのギター

イートインスペースには、たくさんのギターが飾ってありました。

これはオーナーさんの趣味で置いているそうです。

ギター好きの人にはうれしいですね。

洋菓子コンテストマジパン部門受賞

店内にはコンテストで受賞したときの盾が飾ってあります。

これらは「マジパン」を作って獲られた賞だそうです。

マジパンとは、挽いたアーモンドと砂糖、卵白などを練り合わせた洋菓子のこと。

マルチパンなどと呼ばれ、ケーキの上にのっている動物や花、サンタや雪だるまなどをイメージしてもらえればわかりやすいと思います。

▼これは「鬼滅の刃」のキャラクターで、作成するのになんと約1か月かかったそうです

店内に飾ってあったマジパン

それぞれのキャラクターが、まるでスクリーンから飛び出したかのように細部まで再現されています。

食べることも可能ですが、一般的には食べるよりも見て楽しむもののようです。

では、ここからは実際に食べたケーキを紹介します。

店内のイートインスペースにて実食

店内で購入したケーキを食べていきます。

どのケーキもきれいだし美味しそうなので迷いました。

Denim(デニム)とプレミアムモンブラン

筆者はDenim(デニム)とプレミアムモンブランを注文しました。

デニムは、その名のとおりデニムの街 児島をイメージして作られたケーキです。

見た目は丸くて可愛らしく、デニムブルーが写真映えしますね

切ってみると、なんと断面が7層になっています。

7層の内訳は、以下のとおりです。

  • 1層目:クチナシのグラサージュ
  • 2層目:塩バニラムース
  • 3層目:ヘーゼルナッツブリュレ
  • 4層目:アプリコットジュレ
  • 5層目:ヘーゼルナッツフィヤンテーヌ
  • 6層目:アプリコットシロップとメレンゲパウンド
  • 7層目:チョココーティングサブレ

1層目はクチナシのグラサージュ。
グラサージュとは、つや出しや乾燥防止のために表面をコーティングする調理法のことです。
これにより表面がつやつやになり鏡のように輝きます。

2層目は塩バニラムース。
こちらの塩バニラムースには地元児島の塩を使用されているそうです。
バニラの甘さと塩っ気が合わさって相性がいいですね。

見た目はもちろんのこと、それぞれの層で違った食感や味覚を楽しむことができるDenim(デニム)。

濃厚な塩バニラムースの中にあるヘーゼルナッツやアプリコットを味わえるこのケーキは、まさしくスペシャリテです

プレミアムモンブランは、甘さ控えめの食べやすいケーキでした。

中には細かくした栗が入っていて美味しいです。

またモンブランには珍しく、カシスムースが入っています。

カシスムースの甘酸っぱさとマロンクリームの相性がよく、二つ目のケーキでしたがぺろりと食べられました。

ピアジェは、美味しいケーキとホスピタリティあふれる接客を味わうことができます。

そんなピアジェの店長である、有信瑠星(ありのぶ りゅうせい)さんにお話を聞いてみました。

パティスリー・ピアジェ店長の有信さんへインタビュー

2022年で32年目になる「パティスリー・ピアジェ」。

店長の有信さんにお店や児島への想いをお聞きしました。

──お店の歴史について教えてください。

有信(敬称略)──

2022年で32年目になります。

もともと、JR瀬戸大橋線の上の町駅近くのビルの下に店を構えてやっていました。

上の町駅近くで12年、今の児島本店で20年という感じです。

父親が初代オーナーで、私が二代目にあたります。

祖父も玉野の「ありのぶ製菓」で饅頭を売っているので、お菓子というくくりであれば三代目ということになりますね。

──お店の特徴について教えてください。

有信──

デニムクーヘンやデニムフィナンシェなど、デニム関連の商品が多いのが特徴ですね。

児島は国産デニム発祥の地でデニムの聖地と呼ばれていました。

その地元である児島を活かしていきたいと思い、青色を使った商品を販売しています。

もともと、10年前は青いケーキなどは販売していませんでした。

しかし今はSNSの時代で、お客様の色感が広がったと感じています。

またコンビニスイーツの台頭やタルト専門店などさまざまな専門店があるなかで、地元を活かしていくことが差別化につながると思いました。

お客様に来てもらうためには、他とは違うものを全面的に出していく必要がある。

そこで、やっぱりデニムは非常に大きな武器でした。

青は食欲を減退させる色ですが、それ以上にお客様の好奇心をそそるようなものを押し出していこうと思いました。

Denim(デニム)開発秘話

──主力商品や人気メニューを教えてください。

有信──

やっぱりDenim(デニム)ですね。

もともとはデニムクーヘンが一番人気でした。

自家製のバウムクーヘンに児島の塩、さらに技術革新で生まれてクチナシの青を衣掛けに使用しています。

SNSで情報発信をしていて、通販でデニムクーヘンを欲しいと言われるお客様は増えてきていました。

しかし、デニムクーヘンだけでは決め手にかけるとずっと思っていました。

児島近辺のお客様はよく来てくれますが、倉敷や岡山市北区辺りのお客様に来てもらうには、やっぱり生菓子の力が必要です。

とくに焼き菓子であれば、わざわざ来なくてもインターネットで注文したら、お店に来る必要がない。

だからこそ、通販では買えない、足を運んで食べようと思わせるような生菓子をいち早く開発しようと思いました。

味の大部分を占めるムースには、塩をいれて塩バニラムースにしています。

バニラアイスと塩の組み合わせは美味しいのはわかっていたし、青を使うとなったらバニラムースの白色がコントラストとしてより映えます。

形を丸くしたのはグラサージュがきれいにかかるのもありますが、限りなくシンプルなものを選びました。

お客様にとっては青色のケーキという時点で主張が強い、さらに形まで特殊な形だと情報量が多すぎる。

そこで、青色で世の中に最初に出すにはシンプルなものが受け入れてくれると思いました。

自分が児島生まれ児島育ちだからこそ、このDenim(デニム)を販売する意味があると感じています

これまでと今後について

──お店への想いを教えてください。

有信──

私は専門学校でなく、大学に進学して経済を学びました。

なぜなら、これからの時代は美味しいケーキを作るだけではなくて、やっぱり売り方が重要になってくると考えたからです

究極の一品を作るというよりは、より多くのかたに土地柄を楽しんでもらいつつ、うちのお店に来ることの喜びや楽しさを伝えていきたいです。

──もともとケーキを作る予定で進学されたのですか?

有信──

そうですね。4年制大学に行ったというのは一つの分岐点でした。

やっぱり、大学に行って良かったと思います。

それはお金のことを学べたというよりは、いろいろなかたと触れ合うことができたからです。

児島でしか育ってきていなかったので、いろいろなかたと触れ合い価値観が非常に広がったと思いますね。

他にもコンビニでアルバイトなどもしました。

そのなかでコミュニケーションの大事さを学べたと思います。

ケーキ作りもケーキのことだけ見ていても、見えてこないんですよね。

世界情勢であったり、他業種のかたがたとコミュニケーションを取ることにより独創的なアイデアが生まれます。

──今後やっていきたいことはありますか?

有信──

オンラインを強めていきたいです。

疫病や何か大きな出来事があって家から出られないとなったときに、より多くのお客様に購入する機会を増やすのは、やっぱりオンラインだと思います

ただそのためには、スマートフォン上で購買意識が強まるようなケーキの写真や文章を工夫することが必要です。

もっと長期的な目線でみると、お店で働いていただいている従業員の人生にもフォーカスを当てて活動していきたいですね。

正直、今の時代は情報や機材が充実して、自分の家でお菓子作りが簡単にできるようになりました。

100円ショップでも型があるし、インターネット通販でもプロが使っているような型を購入することができます。

そのなかで、わざわざパティシエになる必要があるのかと思われるかもしれません。

確かに家でもお菓子作りはできますが、パティシエだからこそお客様の感謝の声を対面で日々味わうことができます

接客をしているときに、お客様から「すごく美味しかった」と言われたり、お菓子を食べて喜んでいる姿を見られたりとか。

それこそがパティシエとしてのやりがいではないかと思います。

そのような機会や経験を増やしていってあげたいです。

でもそのためにはやっぱりまずは店の利益ですね。

利益が成り立たないことには、ビジネスモデルを構築するのは難しいかなと。

まずは、自分が安心安全な美味しいケーキを作るのを前提として、お店の魅力を発信していきたいです。

おわりに

児島で地元のひとに愛され続けるパティスリー・ピアジェ。

店長の有信さんのお店に対する熱い思いを感じ、「美味しいお菓子を作るだけでなく今の時代は売り方を考えなければならない」という言葉が印象に残りました。

ケーキ一つをとっても、有信さんのさまざまな想いや考えが詰まっています。

児島を訪れたかた、そうでないかたもパティスリー・ピアジェのお菓子をぜひ食べてみてください。

お菓子を通して児島の魅力や歴史を知ることができると思います。

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