先端技術によるステアラ3公演 11月に_ 映画監督・映像作家 奥秀太郎 インタビュー

VR能『攻殻機動隊』で大きな話題を呼び、また3D能など革新的な作品をクリエイトしてきた奥秀太郎、今回はアジア初の360度回る劇場IHIステージアラウンド東京にて11月3日から5日まで最新技術を駆使した公演を行う。11月3日は何度か上演されているVR能『攻殻機動隊』、11月4日は『自在化コレクション』こちらは初、様々な試みにチャレンジ、そして11月5日は再々演であるが、武楽『神曲 修羅六道』、ダンテの「神曲」がベースになっている大胆な作品。この3日間のチャレンジ公演について、日本のトップクリエイター・奥秀太郎さんの特別インタビューが実現した。

――VR能『攻殻機動隊』についてですが、今回で何回目になるでしょうか。

奥:結構回数を重ねていますよね。地方まで入れると結構な数です。7回目くらいになると思いますが。

――大筋は変わらなくても技術的には少しずつ進化していますね。

奥:そうですね。それは間違いなく。

――今回IHIステージアラウンド東京、通称ステアラ、まったく今までと違う劇場ですね。予測としては全然違うのかなと思いますが。

奥:そうですね。客席が回りますから。ただ、映像演出を用いたようなのは散々やってきているんですよね。『自在化コレクション』での映像は、舞台や映像に携わる人が観たら驚くような仕掛けになっていると思います。そこは一番自信があるところですね。いろんな意味で次の次元だなと。ただし、完成度ということを考えるとどこまでいくかわからない、未知のイベントですね。本当に冒険と戦いに満ち溢れたような。久しぶりに「まだこんなに戦う場所があったのか」と思うくらい。やる方としては入口というか突破口というか。あの演目があるからこそステアラにたどり着けた訳だし。先日、ステアラの下見をしたんですが「私のためにあるんじゃないか」と言い切ってもいいほど、すごく面白いことがいっぱいできそうな場所なので。観てほしい気持ちはありますね。

――ステアラの特徴をクリエイティブ側が抑えれば、何でもできるんじゃないかという印象です。それに『自在化コレクション』って一体何をやるんだろう、という楽しみな部分もありますね。

奥:これも、続けていけるようになればいいなと。1回目って大事なもので、どういうものになるかを「観ていただかないといけない」んですね。それだけ新しいことをやっている実感も。

――そうですね。観ないことにはわからない。いろいろなパフォーマンスをやるのはわかっているものの……。

奥:サイエンス・エンターテインメントって今までなかったんですよ。ダンスとかサーカスとかあるなかで。それらと科学技術って関連性がほぼないですしね。

――科学の世界では、10年前の最新技術ってもう当たり前にできていることなんですよね。けれども、今現在の最新技術ってどんなものなんだろうと。見どころとかは?

奥:どれが見どころなのか迷うくらいですが……。『自在化コレクション』の後半の方に作っているダンス作品があるんですけど、それは結構見ごたえあるんじゃないのかなと思っています。あと、フランスのチームと一緒にやっている、ロボットグラフィティプロジェクト、これ結構面白くなりそうですね。

――最近、ロボットを使ったものを見ますね。オペラでもロボットが出てきたりします。

奥:コロナも経た時代で、嗅覚のある人たちにとっては「取り入れるべき」とやってみているところだと思います。そんな中で今回、特に「新しいものはこれだぞ」と言えるものを見せられればいいんじゃないかと思っています。

――コロナでなにかが変わったというよりも、コロナが起こったからこそ、10年先に起こるべきものが早まったというお話を聞いたことがあります。例えば、最新技術を駆使した技術であったりとか、劇場に行かなくても演劇を楽しめたりとか。

奥:そうですね。そういう話であると、流行りものとしては「メタバース」関連の演目が増えるかもしれません。ただ、今回の『自在化コレクション』は攻めに攻めている部分があるので。スタートライン、すなわち初期であるがゆえの「伝説のイベント」として語られたらいいなと。完成されて、こなれていくと面白くなくなるところってありますよね。いちばん衝撃的なのはやはり初演ですから。変な話ですけど「プロジェクションマッピング」って言葉ができる以前に同じことはさんざんやっていたりします。先を行っていた、みたいな(笑)。また今回も同様でありたいですね。

――たしかに、そういったものは「進行形」みたいなものが面白いのかもしれませんね。完成されたものではなく、完成に向かって物事を進めていく過程が面白いような。

奥:『自在化コレクション』に限らず、映像とかってそういうものがあると思うんです。それが能やバレエと組み合わさったりだとか。逆に能というものはどれだけ「守り抜くか」が大事であったものですからね。映像はそれとは対象的に、先へ先へと技術を進化させてきています。どんどん解像度は上がっていくし。どんどんハイビジョンどころか、8Kまで出てきた。携帯電話がガラケーからスマホに変わったように。VR『攻殻機動隊』は能との組み合わせですが、今回『自在化コレクション』の面白いところとしてはバレエであったりだとか、いろんなものとの組み合わせを楽しんでもらえるのではないかと。

――VR『攻殻機動隊』はまぎれもなく「能」でした。見せ方は違うけれども。例えば古典バレエなんかも、それこそハイテクを使ってやったらどうなるんだろうと気になりますね。また、最終日が武楽座の『神曲 修羅六道』。ダンテの『神曲』ですね。

奥:まあ、そうですよね。日本人からするとキリスト教そのものであるダンテの『神曲』は馴染みが薄いものですから。でも、実際にはそこまで難しい内容ではなかったり。これも「観たらわかる」部類だと思います。

――劇場が変わると演出も変わりますが、今回やはりステアラということで……。映像も結構はりきってらっしゃるのでは。

奥:(笑)。ただ、もう映像で語り尽くすのはさんざんやっていますから。とはいえ、一回やってみるとステアラならではの演出が作れそうだなとも思うし、非常にやりやすいし、使いやすい劇場だなあと。これまでの劇場とは違い、制約もそれほどないので。そう考えると、今回の武楽座はスペシャルな公演になると思いますよ。あと今回、美波さんが出るのが大きいなと。だから、実はいちばん豪華、派手になるんじゃないかと思っています。

武楽座って2.5次元とは違ったいい派手さがありますよね、もともとが能だったり、伝統芸能に通じているものもあるし。今回ベアトリーチェで、美波さんが出てくれることによってより「本物」に近づいたとも感じています。

――武楽座については、ビジュアルの面でも「観ればわかる」ようになっているので、それこそ国籍問わず楽しめそうだなと。

奥:まあ、でもVRの『攻殻機動隊』もそうだったんですが、回を重ねるってすごい大事なこと。だんだん客層もついてきてくれている感じがあるし、一つひとつ、いろんな演目が育っていってくれるといいなと。決してどれも楽だったりわかりやすかったりはしないと思いますが。今回の3つの演目はどれも、すごく魅力にあふれたものだし、私にとって大切な作品でもありますから。

――ということは、11月の3、4、5日と連チャンで観ると最新技術がわかるという。

奥:ええ、最新技術であるという自信はあります。とはいえ、かなりぐるぐる回ることになると思いますけどね(笑)。観た方には最先端を体験すると同時に、刺激を受けに来てほしいですね。とくに『自在化コレクション』は無料公演ですから。かなりの太っ腹だと思います(笑)。でも、そうでないと気軽に楽しめるものでもないから、そういう文化がどんどん育ってほしいなと思います。と同時に『自在化コレクション』もそうですけど、いろいろな研究を見ていて、あんなこともこんなこともできるなって。エンターテインメントの面で。今は、たいへんな段階ではあるけど意外と自分の顔色が悪くないですよ(笑)。どこかすごい希望があるというか、未来があるように思えているからかもしれませんね。

――ありがとうございました。公演を楽しみにしています。

===================================

概要

公演名:VR 能 攻殻機動隊
日程:2022年11月3日(木・祝)
原作:士郎正宗「攻殻機動隊」(講談社 KC デラックス刊)
出演:坂口貴信 谷本健吾 川口晃平 観世三郎太(観世流能楽師)
スペシャルナビゲーター:下野紘
演出:奥秀太郎
脚本:藤咲淳一
映像技術:福地健太郎(明治大学教授)
VR技術:稲見昌彦(東京大学教授)
製作:VR 能攻殻機動隊製作委員会 VR『攻殻機動隊』
公式サイト:https://ghostintheshellvrnoh.com/

————————————————————–
>公演名:自在化コレクション
日程: 2022年11月4日(金)
「自在化コレクション」SPECIAL EDITION!
内容:
“自在化身体”をテーマとしたプロジェクト
原作・脚本:冲方丁、演出:奥秀太郎、振付・舞踊監修:渡辺レイ(K-BALLET COMPANY 舞踊監督)により、「自在化身体」の最新技術と架空未来を融合した新作ダンス作品を上演! ダンサーには、日本を代表するバレエ団、熊川哲也 K-BALLET COMPANY 所属の期待の若手ダンサー、義肢のダンサーが起用。 VR~メタバース、実写~アニメーション、過去~未来までの映像技術を貫通する、劇場映画の未来形、「自在化コレクション」プロトタイプ版の上映。 日仏で研究が進む「自在化身体」の現在をメドレーで一挙紹介する「自在化コレクション」スペシャルランウェイ!!を予定
WEB:https://jizaicollection.com


公演名:武楽『神曲 修羅六道』
日程: 2022年11月5日(土)
製作総指揮・作・脚本:源光士郎
演出:奥秀太郎
映像技術:福地健太郎 (明治大学教授)
出演: 源光士郎 美波 南圭介 サカクラカツミ 田島芽瑠 石山裕雅 須田隆久 今井尋也 ほか
後援:TBS、イタリア大使館
主催: 武楽座

武楽座公式サイト: https://bugaku.net

————————————————————–

OKU SHUTARO – 奥秀太郎 websitehttps://okushutaro.com

IHIステージアラウンド東京 https://www.tbs.co.jp/stagearound/theater/

The post 先端技術によるステアラ3公演 11月に_ 映画監督・映像作家 奥秀太郎 インタビュー first appeared on シアターテイメントNEWS.

© 株式会社テイメント