水族館でのエサの工夫は? 飼育担当はどう決める? 四国水族館で聞いてみた 香川【みんなのハテナ】

Park KSBアプリに皆さんから寄せられた疑問をもとにお伝えする「みんなのハテナ」。今回は「水族館」に関するハテナです。

「食事で気を付けていることはありますか?」(岡山市 サラ 56歳)

今回答えてくれるのは四国水族館の下村実飼育展示部長です。

まず向かったのは、イルカの餌の準備部屋です。四国水族館では現在7頭のイルカを飼育しています。餌はシシャモやイカなど。生のまま与えると寄生虫などで調子を崩す可能性もあるので、こちらでは1度冷凍したものを与えています。しかし、冷凍するとビタミンなどの栄養素が失われるため、「あるもの」を混ぜています。

(四国水族館/下村実 飼育展示部長)
「冷凍ですから、どうしてもビタミンが損なわれているので、ビタミン剤とかをエラから入れます。こうやって冷凍によって失われたミネラルやビタミン類を補充する」

さらに、餌には「水でできたゼリー」も混ぜています。自然界でイルカは、食べた魚から活動に必要な水分を吸収していますが、冷凍した餌の場合は水分が抜けきった状態です。そのため、水分を取らせるための「水ゼリー」は欠かせません。

こうして作った餌を四国水族館のイルカたちは1日に1頭当たり5kgほど食べます。さらに、飼育員たちはこの「餌やり」の時間にいろいろなことをチェックしています。

(四国水族館/下村実 飼育展示部長)
「飼育係は(餌の)タネを与えるだけでなくて、口開けてとかをやって、口の中を見て口内炎できてないかなとか、においをかいで胃があれてないかとか、そういうのを瞬時に判断してるんだよね」

(イルカの飼育担当)
「はい! そうです! もうばっちりです!」

餌の前にイルカの体を動かすのも、いつもと動きが違わないか、痛めているところはないかの確認のため。餌自体だけではなく、餌をあげる「時間」が、元気に過ごしてもらうためにとても重要なんです。

「飼育の担当ってどうやって決まるの? 好きな動物の担当したいですよね」(倉敷市 しおちゃん 54歳)

四国水族館では現在、約400種類1万4000匹ほどを飼育しています。これを約30人の飼育員で世話しています。

(四国水族館/下村実 飼育展示部長)
「だいたい水族館に入ってくる子たちって、8割くらいイルカのトレーナーになりたいって言う子がすごい多いんですよ、イルカすごいですよね」

そんな中、四国水族館は、それぞれの飼育員が担当する生き物を一定期間で変えるようにしています。つまり、飼育員の「ジョブローテーション」を取り入れています。

(四国水族館/下村実 飼育展示部長)
「例えばコロナ禍含めて、イルカのトレーナーが全員、病気になっちゃって、じゃああしたからイルカ誰やるのってならないように、やりたいことやらしてあげたいのはやまやまなんですけど、やっぱりせっかく水族館に入ったんだから、いろいろな生き物を見てもらいたいし、覚えてもらいたいし」

実際に飼育員さんたちに話を聞いてみると――。

(イルカの飼育担当)
「(Q.イルカの調教師になりたくて水族館へ?)私は違いますね。水族館っていう枠で働きたくて、就職したらイルカの担当になりました、20数年前ですけど」

(アザラシなどの飼育担当)
「(Q.アザラシの飼育員になりたくて水族館へ?)んー、それも理由の1つではありますけど、それ以外のところの要因が大きかったですね」

(アザラシなどの飼育担当)
「(Q.アザラシの飼育員になりたくて水族館へ?)実は全然違いまして。もともとはこういう生き物が好きで(カニのポーズ)。カニを見つけて捕まえるのが好きで、そういった研究を大学・大学院までしてきて、海の楽しさを伝える場所で働きたいなと」

(四国水族館/下村実 飼育展示部長)
「お客さんから見たら、飼育係は飼育係であって、あなたはイルカです、あなたはアザラシです、あなたは魚ですってわからないじゃないですか。お客様に何を聞かれてもちゃんと最低限はお答えできるように。ジョブローテーションでいろいろ体験、経験して、一人前の飼育員になってもらいたいなと」

「飼育員さんにはどうしたらなれるの?」(高松市 てつパミ 63歳)

(四国水族館/下村実 飼育展示部長)
「水族館の飼育係になりたいっていう人、子どもさんとか多いんですけど、特別な免許ってないんですよね。まず第1条件としては生き物が好きだったら誰でもなれます」

四国水族館によると、飼育員になるには海や川で暮らす生き物を好きなことが条件。特別な資格や学歴は必要ありません。ただし……。

(アザラシなどの飼育担当)
「(Q.飼育員になるには?)学校の勉強を一生懸命頑張ってください」

(四国水族館/下村実 飼育展示部長)
「意外と、物理とか、化学とか、体育とか、いろいろな教科をひっくるめているのが、実は飼育員」

飼育員の仕事は生き物の世話だけではありません。お客さんの質問に答えるには、豊富な知識やコミュニケーション能力が必要です。魚を連れてくるときには、業者などと費用や納期などのやり取りをする必要もあります。また、生き物が病気になれば、24時間看病するなど体力も必要になります。

(四国水族館/下村実 飼育展示部長)
「全部役立ちます、英語も役立ちます、算数も役立ちます、国語も役立ちます、社会も役立ちます。基礎的なところをしっかりやっていただいたら、生き物を好きだったら、立派な飼育係になれると思いますので頑張ってください」

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