突然の両親の死 弟の養育めぐり親戚一同の大ゲンカ勃発 「シスター 夏のわかれ道」本編映像

11月25日より劇場公開される、中国のアカデミー賞と言われる金鶏奨で助演女優賞を受賞した映画「シスター 夏のわかれ道」から、突然の両親の死を迎えた葬式のあと、悲しみにくれるひまもなく親戚一同の大ゲンカが始まるシーンの、本編映像が公開された。

弟ズーハン(ダレン・キム)の養育を親戚から一手に押しつけられた姉のアン・ラン(チャン・ツィフォン)は、「嫌よ。育てたい人が育てれば?」と突き放す。親戚の一人は拳をあげて怒りをあらわにし、叔父(シャオ・ヤン)が「暴力はよせ」と仲裁に入るものの、あっという間に怒号が飛び交い、手のつけられない家族ぐるみの取っ組み合いが始まる。見かねたズーハンは、サッカーボールを投げて止めようとするが、親戚一同の怒りはヒートアップしていく。

感情表現が豊かな中国人によるリアリティあふれる親族ゲンカが描かれたこのシーン。イン・ルオシン監督は、「“これは私の物語”だと感じてもらえるように、自分の周りで起こる日常的な事や、身近な人を参考にしてストーリーとキャラクターを作っていった」と語っている。

「シスター 夏のわかれ道」は、見知らぬ弟が現れて突然姉になった女性を描いた作品。疎遠だった両親を交通事故で失い、見知らぬ6歳の弟・ズーハンの養子先が見つかるまで面倒をみることになったアン・ラン。しかし、アン・ランには幼い弟を思いやる気持ちが少しずつ芽生えていく。アン・ランを演じるのは岩井俊二監督作「チィファの手紙」に出演したチャン・ツィフォン。本作が長編2作目となるイン・ルオシンが監督を務め、脚本はヨウ・シャオインが担当。新鋭の女性作家がタッグ組み、中国社会の背景にある一人っ子政策と家父長制の影に真正面から切り込んでいる。

一足先に本作を鑑賞した著名人のコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■岩井俊二
小さな弟に慕われ、姉は次第に母の顔になって行く。
拙作でご一緒して以来、久方ぶりに見た張子楓は少し大人の顔になっていた。

■清田隆之(文筆業・「桃山商事」代表)
大人になれない人たちが放棄した責任のツケが、
大人にならざるを得なかった人たちの背中に重くのしかかっていく──。
家父長制を生きるすべての男性が向き合うべき問題だと痛感しました。

■藤井道人(映画監督)
チャン・ツィフォンの瞳に全てが語られている。悲しさ、悔しさ、愛しさ。彼女が泣くと悲しくなる、彼女が笑うと嬉しくなる。瞬きするのが惜しいくらい心が震えた映画体験でした。

■ブレイディみかこ(ライター)
一人っ子政策の記憶、根深い家父長制の影。その傷を負って生きるのは一族の中の「シスター」たちなのだ

【作品情報】
シスター 夏のわかれ道
2022年11月25日(金) 新宿ピカデリー、 ヒューマントラストシネマ有楽町、シネ・リーブル池袋ほか全国公開
配給:松竹
© 2021 Shanghai Lian Ray Pictures Co.,Ltd. All Rights Reserved

© 合同会社シングルライン