株主優待が目的の銘柄はNG?一般NISAで買うべきなのはどんな銘柄なのか

秋といえば、紅葉・読書・美味しい食べ物……色々ありますが、私にとっては株主優待の季節です。ピンとこない? お得な上に楽しいのに知らないなんて、なんて……嘆かわしい!

今回もお笑い芸人で本当の税理士である税理士りーなが、少し知るだけで簡単にできる、NISAや投資を楽しむコツを分かりやすく解説します。


NISAとは

最近「NISA」を利用し投資を始める方が増えているようですね。でも、「何かよくわからないけど周りに勧められて始めただけ」という声も多く、どんな制度かも理解せずに始められた方の話をよく聞きます。

NISAとは「少額非課税投資制度」、つまり「少額の投資だったら儲かったとしても税金かけないようにしてあげるよ」という制度です。投資で得た利益は、20%ちょっとの税金が引かれるルールになっています。その2割ちょっとの税金をナシにしてくれるのです。

これは、日本人が銀行預金ばかりしてあまりに投資を知らなすぎるので、政府が「皆さ〜ん、税金をナシにしてあげるから投資を始めてみてね!」と、2014年にスタートした制度です。この一般NISAでは1年で120万円まで投資して、それで得られた利益にかかる2割の税金がナシになります。しかし、「投資ってなんだか怖い」というイメージを持っている人が多すぎて、あまり浸透しませんでした。

そこで、「安心安全で簡単な商品を紹介するから、チョットだけやってみて」と、後からスタートしたのが「つみたてNISA」です。1年で40万円までの積み立て投資をして、低リスク低リターンで確実に利益をゲットしていこうというタイプのNISAです。

いまようやく、この「つみたてNISA」が浸透し始めているという状況です。が、20歳以上の日本の人口に対して、まだ1割程度のNISA口座しか開かれていません。まだまだというのが現状ですね。

NISAで買うべき銘柄

「つみたてNISA」では、金融庁が「これなら大丈夫!」と認めた積み立てタイプの商品にしか投資することができません。積み立てて少しずつ増えていって欲しいので、過去の運用実績を参考に、少しずつでも金額が上昇傾向にあるものが良いといえます。そして、得た利益の税金が0円ということで、「お得に運用できたね!」ということになります。

一方、「一般NISA」では、投資信託などつみたてNISAで選べる商品はもちろん、個別株などにも投資が可能になりますので、株価の上がり下がりを利用して、低いところで買って上がったところで売り、値上がり益をゲットするということもできます。

また個別株なら、会社が儲かった利益に対応して配当を分配してくれます。値上がり益だけでなく、この配当に対する税金も0円になる点がお得ということです。つまり、一般NISAの場合は「これから値上がりしそう」とか「配当をたくさんくれる」という株を持っていると、それだけ節税のメリットも大きいということになります。

配当がないと意味ない−−優待だけならNISA不要

さらに、個別株なら「株主優待」という制度があり、株主に自社製品や商品券などを送ってくれる会社があります。

この株主優待は、「◯月末で株主の人に優待を送りますよ」と決まっていて、ちょうどいま、10〜11月ごろのタイミングで、優待品を発送する企業が多くあります。なかには3月末に保有で10月に届くという、半年もタイムラグがある会社もあります。

ギフトカードやお米券、図書券などの金券を送ってくれる会社もたくさんあり、100株持っているだけでこのような優待をゲットできるので、株価が低い会社なら5万円以内でも年に1度商品券が送られてきて、ちょっぴり嬉しいです。

このような、低価格で買える会社は、株主優待はくれるけれど、配当金はくれないというパターンもあります。こんな株をNISAで持っているとどうなるでしょう?

もし、ずっと持ち続けて優待を貰い続けるというのを目的に持っているのであれば、NISAの枠で買う必要は全くありません。値上がり益も狙わない、配当もくれないのなら、運用益は入ってきません。運用益が非課税になるのがNISAのメリットですから、もともと株主優待で受け取る商品は税金なんて関係ないので、優待目的で持つ株をNISAで持つことは、無駄にNISA枠を使ってしまい、運用益が得られる株が買える枠を圧迫してしまうので、NISAで買うべきではないのです。

NISAしか知らないという皆さんも、証券会社でNISA口座を開いているということは、一般の証券口座も必ず持っています。銀行で口座開設すると、はじめに必ず普通預金を開いて、それとは別で積み立て預金口座などを開けるのと同じことで、証券会社ではNISAを開く前に必ず一般の口座はすでに持っています。

配当金もなく値上がり益を狙わない「株主優待目的」の個別株を買うときは、NISA枠を使うと限られた枠を減らしてしまい「なんて……嘆かわしい!」となるので、一般枠で買付を行ってください。

ロールオーバー、どう判断する?

一般NISAで投資を始めて5年経つ方のところには、ちょうど秋頃に「ロールオーバーしますか?」という書類が届いています。

これは、一般NISAで運用している株や投資信託について、「そのまま非課税で運用し続けますか?」という書類で、この手続きをしなければ、非課税期間が5年で終わり、5年目の年末時点での利益や損失がなかったことになり、価格がその時点での価値に付け替えられることになります。

そして、NISAではなく一般という口座で運用することになるので、そこから先に得られた利益については税金がかかるということです。「ロールオーバーします」という書類を提出して手続きを行うと、6年目のNISA枠で再び買付をしてくれるので、さらに5年間の運用益が非課税になります。

ロールオーバーすべき人

例えば、一般NISAでも積み立て商品のような安定的に少しずつ利益が増えていくような商品を運用している場合は、利息に利息がつく「複利」の効果を狙うと、長期間非課税で運用した方が大きな利益になる効果が高いので、ロールオーバーしておいた方が有効になります。

また、値下がりして利益が出ていない個別株なども、いま一時的に下がっていてしばらくするとまた価格が上昇して利益が得られそうであれば、ロールオーバーして将来得られる値上がり益に備えるというのも良いでしょう。

逆に、以前は配当金をくれていたのに、配当金をもらえなくなり値下がりしているが、今後も値上がりが見込めないという株については、NISA枠で持っていても利益が見込めない分、節税のメリットも見込めません。そのような株については、ロールオーバーの手続きをせずに、自動的に一般枠に移管されるのを見届けるか、少しでも値上がりしている自分の思うタイミングで売却してしまうのがよいと考えます。

私も株価が下がってしまい、利益が出ていないので売りそびれている5年目の株を、ソワソワしながら株価の動きを見ています。少しでも上がった時に売れたら「なんて……喜ばしい!」なんだけどなぁ、というのは独り言です。


NISAといっても、色々な活用方法があることをお分かりいただけたでしょうか?

制度を正しく理解しておくことで、その活用の幅も広がりますよ。貴重な限られた枠を無駄に使って「なんて……嘆かわしい!」なんてことにならないよう、ご自身のNISA口座はもちろん、ご家族のNISA口座もフル活用できているかどうか、ぜひ確認してみてください。

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